魔女の知る罪知らぬ罪

小潟 健 (こがた けん)

2 小さな力は大きな悲劇(脚本)

魔女の知る罪知らぬ罪

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〇屋敷の書斎
  明かりの消えた部屋で娘は刀を大きく振り血を飛ばす──
  魔法の刀はただそれだけの所作で、先程の凄惨なる行いを知らぬ様な、美しい姿を取り戻す
魔女「──やり過ぎちまったね」
魔女「アタシは復讐者なのか、殺人鬼なのか──」
魔女(早く去ろう、考えるのは後でも良い)
  娘は学長室に背を向け歩き出す
  ここへは二度と戻らないだろう

〇おしゃれな廊下
  娘は素早く学長室を出て、近くの窓を開けそこから身を投げ出す──
副学長「うん? 今、何か?」
副学長「学長室? 向かいの窓が開いている?」
副学長「──が、学長!!?」

〇けもの道
  館を出て、その周囲を覆う深き森を行く
  出奔の為の下見は済ませており、その足取りに迷いは無かった
魔女(誰かが飛術で来る──これ程の腕の者は)
魔女「おや、副学長こんばんは」
副学長「ええ、こんばんは アレをやったのは貴女ね?」
魔女「──アレってなんだい? 副学長は話が早過ぎていけないねぇ」
副学長「学長の胸の刺し傷と切断された首── その刀で殺したのね」
魔女「分かった、認めよう── その代わり腹を斬った事には目をつむっておくれ」
副学長「おフザケでないよッ!!」
  娘は──唐突に刀を抜き放った
副学長「クウッ!?」
魔女「おお、よく防いだね さすが、館にて最速最強の魔女様」
  娘と副学長の間は五歩よりも離れていたが娘の刀は届いた──
  魔法の刀は魔力で極薄の刃を伸ばしていた
  学長の傀儡を両断したのと同じ技だ
副学長「貴様ッ!!」
魔女「フフッ、今のはただの警告だよ」
魔女「アタシは学長に明確な恨みが有って殺した でもこの館にはもう用が無いから出て行く」
魔女「放っておけば、館にはもう関わらない」
魔女「だけれども、館抜けを邪魔するのなら──次は斬るよ」
副学長「──私達の知る貴女では学長を殺せるハズが無い だから貴女、この館の秘術を盗んだわね?」
副学長「さっきの一撃で疑惑は確信に変わったわ」
副学長「秘術の漏洩は館抜けよりも重い罪 貴女には館の『備品』となって貰うわ」
魔女「おお、怖い! 貴重な血袋を逃す手は無いって?」
副学長「閨中、蠱毒、薬検、貴女は何にだって使えるのよ、誇りなさいな」
魔女「それじゃあ、アンタも殺して行くしかなさそうだねぇ」
魔女(ついでに一つ、確かめさせて貰おう)
副学長「私の半分の魔力も無い小娘に、私を殺せるとでも?」
  副学長の目が、暗い森の中で光を放つ
  世界を支える偉大なる存在よりもたらされる恩恵──聖なる兆しとされる二つの一つであるソレは輝く眼
  彼女の持つ輝きは、その中でも特に弱い物であるが──
  曲がりなりにもそれは、かつて世界を支配した聖職者達の力であり、持つ者に膨大な魔力をもたらす
  その力を使い、本来の魔女の力程度では有り得ない、強力な風の魔法が二人を囲む
副学長「貴女の首級を私の学長室に飾ってあげる!」
魔女「あぁ、やっぱり知らないんだね?」
副学長「負け惜しみかぁ? 好きに吠えなさい!!」
魔女「クソババアの次の学長候補は、アタシだったってよ?」
副学長「・・・」
魔女「ハッ! 心当たりがお在りのようで!」
魔女「何でこんな非力な小娘が? ワタシの方が魔力が強いもん! ──ってかぁ?」
魔女「それは確かにそう、副学長程の魔力がアタシに在るのならこの森も飛術で飛んで逃げている──でもねぇ」
魔女「殺す前にババアが言っていたよ 「副学長は魔女としては失格だ!」ってね」
副学長「戯れ言を!!」
魔女「やっぱり何でか分からないんだね?」
副学長「あ、貴女の首級に聞いてあげるわよ!!」
魔女「では二つ、アンタがダメな理由を教えてあげようか」
副学長「ふ、二つ?」
魔女「一つ──物理的にも精神的にもの、視野の狭さ」
副学長「──えっ?」
  副学長の股下から胸にまで、刃がはしった
副学長「アレ、月? 空が、見えて・・・なん、で?」
  仰向けに倒れた副学長はうわ言の様に呟く
魔女「分からないのかい? ほら、これさ、アタシのマフラーだよ」
魔女「気付きなよ、わざと落としていたのにさ」
  魔法のマフラーは虫の様に地を這い、副学長の足元まで静かに進んでいたのだ
魔女「毛髪を織り込んだ布を刃にする──日ごろアンタが軽んじていた古典的な魔法さ 遠隔制御はアタシのオリジナルだけれどね」
副学長「あっ、ああ──」
魔女「二つ目は想像力の欠如──魔力の足らないアタシが副学長と戦うに、正々堂々と正面から挑むワケ無いだろう?」
副学長「う、うぁ」
魔女「三つ目──魔女が正々堂々に拘るな 正面から殴るなんて馬鹿でも出来るんだよ 背中からでも、股の下からでも斬りな」
副学長「み、みつ?」
魔女「四つ目、懐の浅さ──クソババアが同じ状況ならアタシを抱き込んで駒にしたんじゃないかね?」
魔女「もう二つ程ダメ出しが有るけれども、体力の無い死にかけだから勘弁してやって──」
副学長「ひゅっ、よっ、ひゅ?」
魔女「──アタシの、私的な確認をさせて貰うよ」
副学長「ふた、っ?」
  娘は腰の刀を逆手に抜き放ち、地に身を投げ出した副学長へと、ソレを突き立てる
副学長「ぅあっ──」
  肋骨の隙間に差し込まれた刀は──スッと
  然したる抵抗を感じさせる事なく心臓へと侵入し──
  館最強の魔女を絶命せしめた
魔女「・・・・・・」
魔女「──成る程」
魔女「──そうか、アタシは」
魔女「やはり、殺人鬼だった──」
魔女「うふふ、気持ち、良いねぇ」
魔女「たまら、なぃ、ねぇ」

〇けもの道
魔女「うぅー、ああぁーっ──」
魔女「ふーっ」
魔女「・・・・・・」
魔女「ソコの草むら、出てきな?」
幼い魔女「こんばんは、お姉さま」
魔女「ハイこんばんは お前さん、夜更かしは美容の大敵だよ?」
  娘をお姉さま、と呼んだ少女──彼女は娘の実妹ではない
  館では拐われた娘達が共同で生活する中で年長者は姉として、年少者は妹として互いに振る舞い助け合う風習が出来上がっているのだ
  そして、特にこの少女は娘を慕っていた
幼い魔女「お姉さま、やはりここから出て行くのですね?」
魔女「・・・お前さんはまだ小さ過ぎる、一緒に連れては行けないよ」
魔女「黙って行こうとしたのは──」
幼い魔女「良いんです、お姉さまのお気遣い、ワタシには分かっています」

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コメント

  • 世界観のつくりこみがすごくて、面白いです!
    ロリを見に行かなきゃ!!

  • ロリちゃん、お初お目に掛かりましたので、もう一回1話を読まなければですね!

    19人分の冤罪が今後にどう影響するのか、気になります!

  • 続きが気になります!
    マフラーの使い方に驚かされました~😆

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