エピソード5(脚本)
〇草原
風が吹いていた。全身にその感触が流れていく。背中には草の感触。
僕は目を開いた。まずは見えたのは青い空。太陽も、視界の端に見えている。
ロク「異世界・・・・・・なのかな?」
僕は上半身を起こしながら、呟く。日本とそれほど、変わりなさそうな気がした。
気候も少し湿気が少ないくらいで、同じような感じ。
ロク「草原・・・・・・少なくともコンクリートジャングルじゃないよね」
確かめる様に、僕は口を開く。
トラックの前に飛び出してしまい、病院に運ばれたとして、
治った、もしくは何ともなかったから、こんな所に放り出す、というのはありえない。
あとの可能性は、夢という事だけど、それも否定できるくらい、色々な感触がリアルだった。
僕は視線を下げて、自分の格好を見てみる。簡素な素材だけど、服を着ている。
明らかに、日本で着ていた物とは違う。古い感じのする服装だった。
ロク「異世界転生・・・・・・本当にしたのかな」
少なくとも否定できる材料が、今のところない。
モリアテと出会った時の事もはっきりと覚えていて、何となく、夢を見たという感じではなかった。
ロク「とりあえず、歩き回ってみるか」
ここで、ずっと座っていても仕方がない。僕は立ち上がる。
ロク「魔法の才能をくれるとか言ってたよね」
魔法という言葉に、少し気恥ずかしさを覚えつつ、どう試せばいいか思案する。
そうしていると魔法の使い方を、なぜか僕は知っていた。
昔から知っていた様に、度忘れしていた事を不意に思い出す様に、魔法の使い方を思い出した。
ロク「使ってみるか」
僕がそう思っていると、何かが動くのが見える。半透明な何か。僕はそれに近づいてみる。
ロク「スライムだ」
モンスターの知識も、ちゃんと頭の中にあった。生きていくうえで必要な基礎知識は、ちゃんとあるらしい。
モリアテとしては、つまらない死に方は、してほしくないのだろう。
ロク「とりあえず、あれに向かって魔法を使ってみよう」
僕は、右手をスライムの方にかざして、念じる。
手のひらから、細長い弓矢にも見える形をした光が飛び出して、スライムに向かって飛んでいった。
スライムは移動をしていたせいで、そのまま真っすぐ飛んでいくと、外れる。
そう思うと、光の矢をコントロールする事ができた。スライムに光の矢が当たる。
スライムは形を保てなくなったのか、崩壊してしまった。
ロク「やった」
僕はつい声をあげてしまった。なんだかワクワクしてきてしまう。顔がついニヤけてしまった。