特異地蔵譚

わらやま

宝くじ地蔵 オムニバス(脚本)

特異地蔵譚

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〇古いアパートの一室
おじいさん「来い!来い!」
おじいさん「・・・ダメじゃったか」
おじいさん「宝くじ・・・なかなか当たらんのぅ 三万円分買ったんじゃが・・・」
おじいさん「・・・さて、現場に行くかの」

〇工事現場
おじいさん(暑い・・・暑すぎる・・・ この歳で肉体労働はキツいわい・・・)
おじいさん(宝くじ当てて・・・ 隠居したいのう・・・)
  おし!!昼休憩だ!!
おじいさん「ふぅーー、やっと休憩じゃわい」

〇警察署の食堂
おじいさん「B定食!!」
  はいよ
おじいさん「さて、食べるかの」
水島 浩明「おう、じいさん!! 隣いいか!?」
おじいさん「水島!? ・・・ま、まぁよいぞ」
おじいさん(うるさいヤツが来たわい・・・)
水島 浩明「どうしたよじいさん!! 元気ねぇなぁオイ!!」
おじいさん「・・・お主が元気すぎるんじゃわい!!」
水島 浩明「それもそうか!! ガッハッハ!!」
おじいさん「いつにも増してテンション高いのう・・・ なんかいい事でもあったんか!?」
水島 浩明「ああ!!あったぜ!!」
水島 浩明「じ・つ・は・よ・・・」
水島 浩明「宝くじ・・・当たったんだなぁ!!」
おじいさん「ぐっ・・・ワシは当たらなかったのに・・・ いくら当たったんじゃ!?」
水島 浩明「へへーん、なんと50万円よ!!」
おじいさん「ご、50万円!?」
水島 浩明「はっはっは、すげーだろ!!」
おじいさん「それはすごい・・・ 当たるもんなんじゃな・・・」
水島 浩明「これも宝くじ地蔵のおかげよ!!」
おじいさん「宝くじ地蔵!?」
水島 浩明「ああ!!知らねぇか!?」
水島 浩明「俺も工程管理の兄ちゃんに聞いたんだけどよ・・・」

〇山道
水島 浩明「この町の山にある山道を進むとな」
水島 浩明「目立たねーとこにぽつんと立ってる地蔵がいんだよ」
水島 浩明「んでよ、それがどうやら宝くじ地蔵とかいうやつらしくてな」
水島 浩明「こいつを拝むと買った宝くじが当たるって話なんだよ!!」
おじいさん「なんじゃそれは・・・ オカルトな話じゃな・・・」
水島 浩明「俺だって半信半疑だったんだぜ」
水島 浩明「でもよ、試しに一回行ってみたら・・・」

〇警察署の食堂
水島 浩明「50万円大当たりーってワケよ」
水島 浩明「宝くじ仲間のじいさんには特別に教えてやるよ!! 良かったら行ってみな!!」
おじいさん(本当にご利益があるのか・・・!?)
おじいさん(最近全然ダメじゃからな・・・)
おじいさん(物は試し、行ってみるかの・・・)

〇山道
おじいさん「さて・・・水島が言ってたのは、この辺じゃが・・・」
おじいさん「おっ!?」
おじいさん「こ、これじゃあ!! ホントにひっそりしとるのぅ・・・」
おじいさん「存在を知らねば見つからんわい」
おじいさん(宝くじ地蔵様・・・)
おじいさん(ワシの宝くじ当ててくださいませ)
おじいさん「ふぅ・・・本当にこんな事で当たるんかのぅ・・・」

〇古いアパートの一室
おじいさん「さて、宝くじ・・・ 当たっておるかのぅ・・・」
おじいさん「な・・・な・・・」
おじいさん「50万円当たっとるぞぉぉ」
おじいさん「本当に当たった・・・」
おじいさん「宝くじ地蔵の力は本物じゃ・・・」

〇警察署の食堂
おじいさん「水島!!」
水島 浩明「あん!?」
おじいさん「当たった当たった当たっんじゃ!!」
水島 浩明「おいおい、落ち着けよじいさん!! どうしたんだ・・・!?」
おじいさん「ワシも!! 宝くじ!! 当たったんじゃよ!!」
水島 浩明「マジかよ!?すげーじゃん!!じいさん」
おじいさん「ワシはもう興奮して興奮して!!」
おじいさん「宝くじが当たるってのはこんなに嬉しいもんなんじゃな!!」
水島 浩明「あの地蔵・・・ マジもんじゃねぇか!!すげーわ!!」
おじいさん「また来週も買ってみるわい!! 水島!!ありがとな!!」
水島 浩明「・・・・・・」

〇山道
おじいさん「宝くじ地蔵様!!」
おじいさん「今回も何卒・・・何卒・・・」
おじいさん「私に幸運をお授け下さい!!」
おじいさん「よし!!これだけ拝めば大丈夫じゃろう」
おじいさん「発表日が楽しみじゃわい!!」

〇古いアパートの一室
おじいさん「さてさて!!今回はいくら当たっておるじゃろうか・・・」
おじいさん「うぐぉっっ!!!!」
おじいさん「は・・・」
おじいさん「外れておる・・・」
おじいさん「そんな・・・ では、前回のはたまたまじゃったのか・・・」
おじいさん「ハァ・・・ 現場に行くかの・・・」

〇警察署の食堂
水島 浩明「じ・い・さ・ん!!」
水島 浩明「どうだったよ!!宝くじ!!」
おじいさん「水島・・・ 見ればわかるじゃろ・・・ ダメじゃったわい・・・」
水島 浩明「マジか!!宝くじ地蔵のとこ行ったんじゃねーの!?」
おじいさん「たしかに行ってしっかり拝んだんじゃが・・・今回はダメじゃった・・・」
おじいさん「お主はどうだったんじゃ!?」
水島 浩明「それ聞くかい!?」
おじいさん「まさか・・・!?」
水島 浩明「大当たり!!200万円よ!!」
おじいさん「なんじゃと・・・!?」
水島 浩明「へへーん、すげーだろ!!」
水島 浩明「俺はよぉ、買ってから発表まで毎日地蔵の元に通ったのさ!! やっぱり信じる者は救われるってやつだなぁ!!」
おじいさん「な、そんなに通ったのか!?」
おじいさん(ワシは一度だけじゃ・・・)
おじいさん(まさか・・・)
おじいさん(最も拝んだ者にのみ宝くじが当たるのか!?)
水島 浩明「これを元手に来週のウルトラジャンボくじでは夢の6億円狙うぜぇ!!」
水島 浩明「じいさんもせいぜい頑張るんだな!!」
おじいさん「・・・・・・」
おじいさん(絶対に・・・)
おじいさん(絶対に・・・6億円を当てたい・・・)
おじいさん(奴より長い時間拝むには・・・)
おじいさん(コレしかない!!)

〇山奥のトンネル
水島 浩明「さて、今日から毎日朝晩通うぜ!!」
水島 浩明「ん!?」
  この先、工事のため通行止め
水島 浩明「なんだよ!!最悪じゃねーか!! タイミング悪すぎるぜぇ・・・」
水島 浩明「チッ、仕方ねぇ・・・ 今日は諦めるか・・・」

〇警察署の食堂
水島 浩明「ん・・・!?」
水島 浩明「じいさんいねーじゃん・・・ なんだよ・・・地蔵のところ行けねーこと教えてやろうと思ったのによぉ」
水島 浩明「あ、監督!!」
現場監督「なんだ!?水島!?」
水島 浩明「今日ってじいさん休みなんすか!?」
現場監督「ああ・・・なんでも身内の不幸とかでしばらく休ませてほしいって」
水島 浩明「そっすか・・・ それはまた・・・ご愁傷様っすね・・・」
現場監督「多分4日くらいは来れないみたいだ」
水島 浩明「そうなんすか・・・ ん!?」
水島 浩明(4日後・・・ちょうどウルトラジャンボの当選番号発表日だな・・・)
現場監督「まぁ・・・仕方ないけど・・・ 正直困るなぁ・・・」
現場監督「そういえば、水島。 ここの現場のカラーコーンと看板が昨日から無くなってるんだが、お前何か知らないか!?」
水島 浩明「え、そうなんすか!! すんません、知らないっす・・・」
現場監督「だよなぁ・・・ どこ行ったんだろ・・・」
現場監督「工程も遅れてるから、また本社の人間に嫌味言われちゃうよ」
水島 浩明(・・・・・・)
水島 浩明(まさか・・・じいさんのやつ・・・)

〇山道
水島 浩明「やっぱり全然工事なんかやってねぇじゃねーか」
水島 浩明「じいさんの野郎、宝くじ地蔵を独り占めする気だ!!」
水島 浩明「いた!! おい!!じいさ・・・」
おじいさん「地蔵様・・・宝くじが当たりますように 地蔵様・・・宝くじが当たりますように 地蔵様・・・宝くじが当たりますように」
おじいさん「地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様地蔵様」
水島 浩明(ひ、ひいっ・・・)
水島 浩明(この雨の中、一心不乱に拝んでやがる・・・)
水島 浩明(しかもあの顔・・・)
水島 浩明(げっそりやつれてやがる・・・ まさか昨日からずっと・・・!?)
おじいさん「地蔵様地蔵・・・・・・」
おじいさん「誰じゃ・・・!?」
水島 浩明「ひいっ!!」
おじいさん「水島か・・・」
おじいさん「貴様・・・ワシの宝くじ地蔵に何のようだ・・・!?」
水島 浩明「な、じいさん、アンタ何言ってんだ!? 別にアンタのじゃねーだろ!!」
水島 浩明「アンタ普通じゃねーよ!!」
おじいさん「・・・」
おじいさん「普通じゃないことをせねば・・・」
おじいさん「宝くじなんぞ当たらんのだ・・・」
水島 浩明(・・・何言ってんだコイツ!?)
おじいさん「お前が地蔵を拝みに来たというなら・・・」
おじいさん「排除せねばならん・・・」
水島 浩明「はっ!?」
水島 浩明「ガハッ・・・ コイツ・・・マジかよ・・・」
おじいさん「ふふふ・・・」
おじいさん「邪魔者はいなくなったわい」

〇山道
おじいさん「さぁ、地蔵よ!!」
おじいさん「ワシに・・・ ワシだけに幸運を授けてくれぇぇぇ!!!!」
おじいさん「うぎゃーーーーーーーーーー」

〇工事現場
工程管理担当者「これはどういう事だ!! 全然進捗が予定通り行ってないじゃないか!!」
現場監督「すんません、急に水島やじいさんが休むもんで・・・」
工程管理担当者「あのギャンブル狂いどもか・・・!!」
現場監督「そ、そういやぁ、最近は食堂であの2人宝くじが当たっただとか、地蔵がどうだかで盛り上がとったんですわ」
工程管理担当者「地蔵・・・!? ああ、この前水島に教えたやつか・・・」
現場監督「本当にそんなご利益がある地蔵があるんですか!?」
工程管理担当者「あのなぁ・・・」
工程管理担当者「そんなもんあるわけないだろ・・・」
現場監督「へ、そうなんですか!? でも水島やじいさんはたしかに宝くじ当たったって・・・」
工程管理担当者「そりゃあいつらは万単位で毎回つっこむんだから、いつかは当たるだろ」
工程管理担当者「トータルは相当マイナスだろうけどな・・・」
現場監督「じゃあ宝くじ地蔵とかいうのは全くの嘘なんで!?」
工程管理担当者「あいつ負けが込んでてだいぶまいってたからな・・・まあ、優しい嘘ってやつだ」
現場監督「そうだったんですねぇ」
工程管理担当者「まぁでも、ある意味あれは宝くじ地蔵なんだ」
現場監督「ん!?どういう事ですか!?」
工程管理担当者「あれは宝くじの収益で行う公共事業の一環で設置されてるんだよ」
現場監督「はー、そうなんですか!! 全然知りませんでしたわ」
工程管理担当者「目立たない所で宝くじの収益は活用されてるんだ。ま、あのギャンブル狂いどもの浪費も完全に無駄ってワケじゃないんだよ」
工程管理担当者「ある意味地蔵にとってはあいつらは親みたいなもんだな」
現場監督「はは、面白い事いいますねぇ」
  臨時ニュースです!!
  先程〇〇山の山中で、遺体が見つかったとのことです。
  1人は心臓に刃物が刺さっており、1人は落雷の直撃による感電が死因とのこと。
  警察は2名の身元の確認を進めています。
現場監督「ど、どんな状況なんだ!!」
工程管理担当者「しかし、あんな木の多い山の中で側撃雷ならともかく、直撃するなんて・・・」

〇山道
工程管理担当者「それこそ宝くじ当たるより奇跡的だぞ・・・」
現場監督「ははっ!!違いないですねぇ!!」
現場監督「最後の最後にそんな低い確率を引くなんて・・・」
工程管理担当者「宝くじでも買えば良かったのになぁ」

次のエピソード:スペースデブリ地蔵 対策課

コメント

  • 上手い!見事にまとまってて面白かったです😆
    宝くじじゃなくて、雷地蔵だったりして。

  • 何のご利益もない地蔵に祈って50万円当たったのなら、誰かに
    『あそこの地蔵にお願いすると宝くじが当たるよ』って言って欲しくなりました🥴💦
    でも読み返したらおじいさん宝くじに3万とか使ってるから、そんなに使えないしやっぱり諦めます🥺(変な感想ですいません🙏)

  • 地蔵の効果なのか、強い思いが引き当てた奇跡なのか🤤
    確か、宝くじで億当たる確率と雷直撃の確率って同じくらいなんでしたっけ?もっと祈れば隕石とか落ちてくるのかな…やり方次第では銀河まで巻き込みそうですね…😂

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