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きせき

エピソード4-多色の刻-(脚本)

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〇屋敷の門
黒野すみれ「(よし、まずはインターホンを押そう!)」
  私は明石家のインターホンを押す。
  友達の家に行ったことはあるが、
  友達も外にいて、どうぞと一緒に入ることが多かった為、
  こんな風にインターホンを押すなんて初めてだった。
  しかも、明石家に続く門は明らかに豪邸のもののようで
  気後れしてしまう。
黒野すみれ「(そう言えば、私、ここに来た理由、なんて言えば良いんだろう)」
  まさか、春刻を救いに未来からやってきました。
  とは言えない。
黒野すみれ「(春刻さんの友達で、とか? いや、それだと追い返されるか)」
  春刻は今、明石家のどこかに隠れているらしい。
  ということは、
  表向きは行方不明になっている、ということだ。
黒野すみれ「(ああ、私・・・・・・こういうの、思いつくのダメなんだ)」
  私はインターホンを押したにも関わらず、
  逃げ出したくなる。
  だが、逃げ出す間はなかったらしい。

〇黒
「はい、明石でございます」

〇屋敷の門
黒野すみれ「あの、私、黒野と言いまして・・・・・・私・・・・・・」
  しどろもどろにながら、私は名乗ると、
  次に春刻の名前を出そうとする。
  私は彼の知り合いで、彼に呼ばれている。
  追い返されるかも知れないが、そう言ってみよう、と
  だが、そこまで言う必要はなかった。
エマ「春刻様のご友人の方でございますね。お待ちしておりました」
黒野すみれ「えっ・・・・・・」
  目の前には仮面をつけたメイド服の女性が立っている。
黒野すみれ「(仮面に突っ込むべき? それとも、メイド服?)」
  私は混乱しながらも、そんな呑気なことを考えていると
エマ「わたくしは明石家使用人の仙代永魔(せんだいえま)と申します」
黒野すみれ「仙代永魔さん?」
エマ「ええ、エマと気軽に呼びつけてくだされば重畳でございます」
黒野すみれ「はぁ・・・・・・」
  何だか、独特な人だな・・・・・・と私が思っていると、
  お客様に立ち話をさせてはと、
  本邸にあるゲストハウスに案内してくれるらしい。

〇黒
エマ「明石家の本邸までは距離がありますので、どうぞこちらへ・・・・・・」
  ブゥーン

〇車内
黒野すみれ「(車で移動って・・・・・・)」
  広いにも程がある・・・・・・と、思うと、
  どう話を切り出そうかと悩む。
黒野すみれ「(折角なら色々、聞いておいた方が良いと思うんだけど・・・・・・)」
  そう、聞きたいことが多すぎるのだ。

〇風流な庭園

〇黒
  春刻の専属使用人の死。

〇地下室

〇黒
  現在の春刻の居所の心当たり。

〇レンガ造りの家

〇大きい研究施設

〇華やかな広場

〇黒
  他の兄弟達の動向。

〇車内
黒野すみれ「(それに、この人だって・・・・・・)」

〇黒
  春刻を亡き者にしようとしているのかも知れない。
「黒野様」

〇車内
黒野すみれ「はい」
  もしかしたら、疑っているのがバレたのか。
  と思うほど、絶妙なタイミング。
  掌に嫌な汗が浮かび、手の甲を擦りつけて誤魔化す。
エマ「ご安心ください。わたくしは先代の専属使用人」

〇黒
エマ「わたくしには刻世様の後継者を見守る責務がございます」

〇車内
黒野すみれ「責務・・・・・・」
エマ「ええ、なので、春刻様だけの味方にはなれないのでございます」
黒野すみれ「彼だけの味方?」
エマ「ええ、春刻様や黒野様には危害を加えるつもりは毛頭ございません」
エマ「必要であれば、可能な限りは助力することも吝かではございません」
エマ「但し、行き過ぎた助力。例えば、春刻様をお救いする為に明石家からお連れする」
エマ「春刻様を狙うご兄弟を物理的、あるいは社会的に抹殺する」
エマ「等々をしてしまうと、今度は他のご兄弟様に公平ではなくなる」
黒野すみれ「それは春刻・・・・・・彼が殺されかけていたとしてもなんですか?」
エマ「・・・・・・ええ、だから、過去に戻って、」
エマ「春刻様を救えるのは貴方様しかいなかったのでございましょう」

〇黒
エマ「哀しいことですが、これが明石家の常なのでございます」

〇車内
黒野すみれ「・・・・・・」
エマ「・・・・・・」
  沈黙が訪れた車内には車の音だけが響く。
  敵ではないが、味方ではない。
  いや、より正確に言えば、味方にはなれない人。
  それが目の前にいる人だった。
黒野すみれ「さっき、行き過ぎた助力でなければ助けてくれると言いましたね?」
エマ「ええ、申しました」
黒野すみれ「なら、例えばですけど、私が彼を救う為に秋川さんの事件を調べるとしたらどうですか?」
エマ「そうですね。答えは一応、助力いたします。でございましょうか?」
黒野すみれ「一応、助けるって・・・・・・」

〇殺人現場
エマ「ええ、例えば、警察の捜査記録の提示や明石家の人間の情報開示等でございましょうか」

〇車内
エマ「それは私と同様、誰の味方でもない者が勤めることになるかと思いますが、」
エマ「彼女の情報はこの上なく正確。まさしく「真理」と申してよろしいでしょう」
  真理。真実のことだ。
黒野すみれ「凄腕の情報屋みたいなものか・・・・・・じゃあ、事故現場を調べるというのは?」
エマ「ええ、こちらも黒野様がなさるには問題はございません」
エマ「ただ、今は事故現場である庭は建物ごと封鎖されておりますし、」
エマ「命の保証はできかねますが・・・・・・」

〇風流な庭園
明石春刻「発見されたのは庭で、右手に針で刺したような傷があった」

〇車内
黒野すみれ「(と言っていたし、何かしら危険なものがあるかもってことか・・・・・・)」
エマ「なので、黒野様が調べるのはご自由なのですが、我々は同行できかねます」
エマ「また、黒野様に代わって、現場を調べることも請け負うのもできかねます」
黒野すみれ「うん。誰かを死なせるのは私も嫌ですし・・・・・・じゃあ、相談相手とかは?」
エマ「相談相手・・・・・・でございますか?」
黒野すみれ「あ、私、どうも推理とか苦手で・・・・・・」

〇書斎
黒野草輔「えっ、よくそんなの、読んでられるって?」
黒野すみれ「うん。読んでたら、人がめちゃくちゃ出てくるし、そんなこと、言ったっけってなるし」
黒野草輔「ああ、まぁな。ただ、なかなか良いもんだぞ?」
黒野草輔「そうだったのか! とか、俺が思ってた通りだった! とか・・・・・・」
黒野草輔「まぁ、なんじゃこりゃっていうのもあるのは否定しないけど・・・・・・」

〇車内
黒野すみれ「父は割と好きで、推理小説とかを読んでいたんですけど、私はあまり・・・・・・」
  そう・・・・・・それこそ、探偵役が
  探偵や刑事といった本職ではない話は結構ある。
  好奇心の強いおばさまや事件に出会したコンビニ店員。
  中には天才的頭脳を持つ高校生やら可愛いロリッ子まで。
  名探偵、という存在で、事件を解決に導いている。
黒野すみれ「(威張ることじゃないけど、普通の大学生なんだよ・・・・・・私は)」
  私は心の中で溜息をつくと、目の前の人の言葉を待った。
エマ「成程。しかしながら、得た情報を組み立てて、過程の果てに真相へ辿り着くのは」
エマ「我々にはできかねます。お話相手はご用意いたしますが・・・・・・」

〇魔法陣2
エマ「貴方様はご決断を迫られるでしょう」
エマ「これまで何が起こったのか。そして、」
エマ「これから何が起こるのか」
エマ「正しくとも、そうでなくとも、それによって時間(とき)は作られていくのでございます」

〇車内
  エマさんが話を終えたのと同時くらいに、
  車が停まる。

〇黒
  車から見えるのは明石家の門とはまた違った
  とてつもない門に、建物だった。

〇宮殿の門
エマ「黒野様、こちらが明石家の本邸にございます」
  官邸か、宮殿のような建物。
  明石家は過去を変えられる力を持つ一族
  春刻のおかしいけど、少し良いところの子みたいな
  雰囲気もあって、それなりの豪邸に住んでいるのでは?
  と思っていたけれど、予想以上だった。
黒野すみれ「(でも、何故に、洋風なんだろう・・・・・・)」
黒野すみれ「(明石家は過去を変える和蝋燭で栄えた家・・・・・・だった筈)」

〇黒
明石春刻「元を辿れば、明石家は和蝋燭を作る職人の家系だったんだけど、」

〇黒
黒野すみれ「(なんて言ってたから)」

〇屋敷の門
エマらしき人「仙代永魔でございます」

〇黒
  とか

〇日本庭園
夕梨花らしき人「黒野様、お待ちしておりました」
南田らしき人「さぁ、どうぞこちらへ」
玄人らしき人「皆様も本邸でお待ちしていますよ」

〇黒
  とか

〇大きな日本家屋
朝刻らしき人「お待ちしておりました」
東刻らしき人「春刻からお話、伺っておりますよ」
青刻らしき人「ようこそ、明石家へ」

〇宮殿の門
黒野すみれ「(って感じじゃないの?)」
  私は思った感想を少し遠回しに言葉にしてみると、
  エマさんは答えてくれた。
エマ「ああ、何代か前はそうでございましたけどね・・・・・・」
エマ「まぁ、生活様式も変わりましたし、着物は苦手な方がおおございますね」

〇黒
明石朝刻「着物か・・・・・・ちょっと苦手かな?」
明石東刻「着物? 現代的ではないだろう」
明石青刻「着物ね、甚平ならありかな?」

〇宮殿の門
エマ「それに、先代もメイド服の子がお好きで・・・・・・」

次のエピソード:エピソード5-多色の刻-

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