春は舞台で青く色づく

YO-SUKE

第二幕「秋季大会の前に」(脚本)

春は舞台で青く色づく

YO-SUKE

今すぐ読む

春は舞台で青く色づく
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒背景
ハル(夏合宿の夜――ヒナタは演劇部を辞めて、学校も転校した)
ハル(それから二か月。私たちはヒナタ抜きで 作品作りに没頭することになった)

〇コンサートの控室
  第二幕・秋季大会の前に
サワコ「あ~! 緊張する!」
ハル「いちいち言葉にしないでよ。 こっちまで緊張が伝染するでしょ」
サワコ「イチカ。さっき客席見てきたんでしょ? どうだった?」
イチカ「9割以上埋まってた」
サワコ「マジかー」
イチカ「ちょっと私・・・舞台の設営・・・ 確認してくる」
ハル「え? 今から? もう時間ないよ?」
イチカ「すぐ、済む・・・から」
サワコ「いや、ちょっと待って──」
ハル「ねえサワコ・・・ イチカの様子おかしくない?」
ハル「いつものキレがないというか、 返事がたどたどしいというか」
サワコ「え? そうかなぁ。 ヒナタがいなくなってから、 いつもあんな感じだと思ってたけど」
ハル「ヒナタか・・・できるなら、 やっぱり四人一緒に舞台出たかったね」
ハル「まあ転校しちゃったし、 仕方ないとは思うけど」
サワコ「・・・うん」
ハル「ロミオとジュリエットをやろうって 最初に言ったのも、ヒナタだったしさ」
ハル「ヒナタのジュリエット・・・ 本物のお姫様みたいで似合ってたからなぁ」
サワコ「なによー。やっぱり代役が私じゃ、 不満なんでしょ?」
ハル「いや、そういうわけじゃないけど」
サワコ「・・・実はね、今日、 ヒナタを誘ったんだよね」
ハル「え!? ここに呼んだってこと?」
サワコ「うん。返信はなかったけど。 一応メールはしといたんだ」
ハル「そっか。来てくれるといいね」
ヒナタ「来たわよ、ちゃんと」
サワコ「ヒナタ!」
ハル「来てくれたの!?」
ヒナタ「うん・・・! やっぱりあの後、 みんながどうなったか気になってたから」
サワコ「新しい学校はどう?」
ヒナタ「まあまあかな。お母さんとの 二人暮らしにもだいぶ慣れてきた」
サワコ「そっかそっか」
ヒナタ「今は受験勉強、しっかり頑張ってるよ」
サワコ「じゅ、受験・・・ 急に現実に引き戻さないでよ~」
ヒナタ「ハハハ。サワコ、相変わらずだね」
ハル「ヒナタ、今日は舞台観てくれるんだよね?」
ヒナタ「もちろん。最前列で観る」
ハル「ありがとう」
ヒナタ「私がいなくなっても、みんなはちゃんと いい作品作れるって信じてるから」
ハル「・・・うん!」
ヒナタ「じゃあ、また後で。本番頑張って」
ハル「待って。イチカに会って行かないの?」
サワコ「あ、そうだよ。すぐ戻って来ると思うし」
ヒナタ「・・・実は、さっきイチカが 出て行くのが見えたから来たんだ」
ヒナタ「イチカは私になんか会いたくないと 思ってるだろうから」
ハル「そんなことないよ。イチカだって──」
ヒナタ「じゃあ、頑張って」
サワコ「ヒナタ・・・ やっぱりまだイチカのこと好きなのかな」
ハル「わからない・・・けど、あんな喧嘩 しちゃったしね。なんとかならないかな」
アナウンス「場内のお客様にご連絡します。 もう間もなく開演です。ロビーにいる お客様は速やかにご着席ください」
サワコ「あっ、やばい! もう時間じゃん! てか、イチカずいぶん遅くない? もう幕が上がるのに──」
  ガチャ
  ドアが開き、
  フラフラのイチカが入って来た。
イチカ「舞台の・・・設営・・・見てきた」
サワコ「イチカ! ついさっき、ヒナタがここに──」
サワコ「イチカ・・・!」
  倒れたイチカをサワコとハルが
  慌てて介抱する。
サワコ「! すごい熱・・・! いつからこんな・・・」
ハル「イチカ、大丈夫!?」
イチカ「ごめん・・・私、大丈夫だから。 本番は乗り切ってみせる」
ハル「・・・イチカ」
サワコ「何言ってんの。信じられないくらい 熱くなってるよ。汗だってこんな・・・! 舞台なんて立てるわけないじゃん」
イチカ「問題ない・・・って言ってるだろ」
サワコ「ハル! なんとか言ってよ」
ハル「イチカ・・・大丈夫なの?」
イチカ「ああ・・・信じて欲しい」
ハル「・・・・・・」
  イチカは立ち上がろうとするが、
  サワコが抱きしめて止める。

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第三幕「雪の降る日に」  

ページTOPへ