エピソード1~彼曰く3~(脚本)
〇川沿いの原っぱ
遥「・・・今、なんて?」
謎の男「俺の言葉を信じて」
遥「そこじゃない」
謎の男「バカになんかしてません」
遥「バカはあんたよ、なぜもっと前に戻るの」
謎の男「みゆは復活します」
遥「そのあと、最後のところ」
謎の男「勇者として旅立ってくれさえすれば」
遥「ゆうしゃ?」
謎の男「勇者」
  ・・・きっとこれは勇者だと思わせておいて違う単語に違いない。
  遥は頭の中で「ゆ」から始まる単語を頑張って探した。
遥「ゆ・・・ユーザー」
謎の男「勇者」
遥「ゆ・・・ゆうれい」
謎の男「勇者」
遥「ゆ・・・ゆうびん・・・」
遥「あ、『ん』がついちゃった」
謎の男「・・すみません、ふざけてます?」
  変態はため息をつきながら遥を軽くにらんだ。
遥「ふざけてるのはそっちでしょう?  だいたいなんなの『勇者』って」
謎の男「ゃんと聞き取れてるんじゃないですか!! 勇者って言ったらアレしかないでしょう、勇者は勇者でしょう!!」
遥「多分、同じものを想像してるとは思うんだけど・・・」
  と、遥は前置きをしてまくし立てた。
遥「あの、王様に謁見しに行った流れでなんか小金掴まされて勇者っておだてあげられて冒険に出ることを強要されて、」
遥「その気になって旅に出てみたはいいものの初期装備がとてもショボくて、」
遥「見た目がかわいらしいモンスターにも全力で向かっていってようやく勝利できるようなところからスタートして、」
遥「旅を通じてレベルアップを重ねながらモンスターたちから巻き上げた金で強化した装備で村人を苦しめる悪い魔王を倒しに行く・・・」
遥「・・・そういうことをやれってわたしに言ってるってことよね?」
謎の男「まぁ、そういうことになるのかなって思うんですけど、実際に遥さんに勇者としてやってもらうことの説明をしてもいいですか?」
遥「・・・まだやるとも言ってないでしょ!」
謎の男「じゃあ、言ってくださいよ、やるって。 ほら、今言ってください、今すぐ!!」
遥「・・簡単に『やります』なんて返事できるわけないでしょ?!かなり大事なことでしょ、」
遥「それに一回返事したら変更はきかなそうだし、」
遥「そもそも、わたしはまだアナタのことイチミリも信用してないんだから!」
謎の男「あー、もう、このままじゃ埒があかないんで、とりあえず説明だけはさせてもらいますね!!」
謎の男「まず、遥さんが持ってる三つの箱のこと」
遥「(三つの箱?)」
遥「・・・捨てたから持ってない・・・ ってか、見てたでしょ、さっきあれを川に投げたところ」
  あのとき、ちゃんと着水した音が三つ聞こえた。
  
  だから、わたしは今、箱なんか持ってない。
謎の男「うーん、説明するの難しいからザックリ言うと、捨てようと思っても簡単に捨てられるものじゃないんですよね、アレ」
遥「ザックリし過ぎてて全くわからないんだけど」
謎の男「遥さん、かばん開けてもらっていいですか?」
  かばん・・・?
  なぜ、かばん・・・
  疑問に思いながらも、変態に促されるままに遥はゆっくりと自分の持っている学校の校章の入った合皮のかばんをあけてみた。
遥「ぎゃぁぁぁぁぁあああああ!!!」
  遥は女子高生らしからぬ悲鳴をあげると、かばんを放り投げて尻餅をついた。
遥「な・・・ん、で・・・?」
  かばんの中には、さっき川に投げ捨てたはずの三つの小箱が、ぬれた形跡もなくキラキラと光りながら入っていた。
  変態は遥の投げたかばんを拾い上げると、中から小箱を取り出して、再度遥に向かって歩を進めた。
  そして、腰を抜かしている遥の前にかがんで、遥の手のひらにひとつずつ、ゆっくりともう一度三つの小箱を乗せていった。
謎の男「遥さんは、一度受け取ったでしょう、コレを」
謎の男「やらないって選択肢はなかったんです、その時点で。  ・・・ごめんなさい」
  拒否権がないことを知らされたところで、じゃあ、何をしたらいいんだろうか。
  遥は、口を開くこともできず、ただ手のひらの上の小箱を見つめていた。



冒険ファンタジーの様相を呈してきましたね。変態さんの不穏な語りが出発点というのがアレですけどw 謎の箱の正体も気になります!