〇渋谷のスクランブル交差点
嫉妬ちゃん「ふふふ・・・黄泉ぃ・・・」
嫉妬ちゃん「今、行くからね・・・」
嫉妬ちゃん「あはっ、あはははっ」
色欲くん「痛えな。前見て歩けよ」
嫉妬ちゃん「あはっあはっ・・・あははっ」
色欲くん「・・・」
嫉妬ちゃん「あはっ・・・は・・・」
「おい待てよ」
色欲くん「お前ラリってんのか？」
嫉妬ちゃん「ちょっ・・・離してよ！ 私はこれから黄泉と一つになるんだから！」
嫉妬ちゃん「こんなところで油売ってる暇ないの！ 早くしないと置いてかれちゃう！ 私を置いて遠くに行っちゃうの！」
色欲くん「お前の精神がどっか遠くに行ってんだろ」
嫉妬ちゃん「はぁ〜〜？」
色欲くん「・・・まあいいや。ちょっと来い」
嫉妬ちゃん「離してってば！」

〇高架下
嫉妬ちゃん「離せよ！」
色欲くん「離さねーよ」
嫉妬ちゃん「警察呼ぶよ!? いいの!?」
色欲くん「好きにしろ」
嫉妬ちゃん「本当に呼ぶから！」
色欲くん「・・・」
色欲くん「来てもらいたいのは本当に警察か？」
嫉妬ちゃん「はぁ？」
色欲くん「本当は別のやつに来てほしいんじゃねえのか？」
嫉妬ちゃん「あんたに何がわかんの？」
色欲くん「何もわかんねえよ。でもいるんだろ？ お前にとっての王子様がよ」
色欲くん「こういう時は王子様に助けを求めろよ」
色欲くん「お前が一人でほっつき歩いてる中、そいつは今何してんの？」
嫉妬ちゃん「・・・」
嫉妬ちゃん「・・・黄泉ぃ」
嫉妬ちゃん「なんで私じゃだめなの・・・なんであんな・・・成金ババアなんかと・・・」
嫉妬ちゃん「私が一番だって言ってくれたのに・・・」
色欲くん「別の女といんのか」
嫉妬ちゃん「私なんてどうでもいいんだ。元からその程度の付き合いだったんだ・・・」
嫉妬ちゃん「・・・もう、どうしようもない」
色欲くん「つらいな〜」
嫉妬ちゃん「ねえ、どうしたらいいと思う？」
嫉妬ちゃん「やっぱり彼を殺して自分も死ぬしかないかな？」
嫉妬ちゃん「それともあの女を殺せばいいかな？」
色欲くん「わかんね」
色欲くん「とりあえず飯食おうぜ。俺腹減ってんだわ」
嫉妬ちゃん「はぁ？ 誰があんたなんかと」
色欲くん「別にいいだろ〜。奢るから」
色欲くん「愚痴くらいなら聞いてやるよ」
嫉妬ちゃん「ちょっと！」

〇ファミリーレストランの店内
嫉妬ちゃん「ちょっと・・・奢るなんて啖呵切ってサイゼってどういうこと？」
色欲くん「いいじゃんサイゼ！ 上手いし安いし」
嫉妬ちゃん「帰る。安い女だと思われたくないから」
色欲くん「まあ待てって！ ステーキ頼んでいいぞステーキ！」
嫉妬ちゃん「バカにしてんの？」
色欲くん「別にしてねーよ。俺はサイゼが好き。お前は好きじゃない。ただそれだけの話だろ」
色欲くん「でもここは俺の好みを押し付けさせろ」
嫉妬ちゃん「はぁ・・・」
嫉妬ちゃん「黄泉だったら私に合わせてくれるのに」
色欲くん「じゃあお前はそいつに自分の好みを押し付けてるってことだな」
嫉妬ちゃん「なにそれ？ 屁理屈やめてくんない？」
色欲くん「でも人に合わせるより、相手を自分に合わせた方が気持ちいいよな」
色欲くん「お前も気持ち良いのは好きだろ」
嫉妬ちゃん「は？」
嫉妬ちゃん「セクハラ？ マジキモいんだけど」
　　・・・違う。こいつの目はそこらのスケベジジイと違ってゲロの匂いがしない
　　ゲロよりももっと醜いもの。人間の姿をした悪魔。例えるなら──
嫉妬ちゃん「詐欺師」
嫉妬ちゃん「あんた、詐欺師の目をしてる」
色欲くん「酷いないきなり。そんなこと言われたの初めてだわ」
嫉妬ちゃん「私はこれまで色んな男を見てきたから。顔を見るだけである程度の人間性は分かるんだわ」
嫉妬ちゃん「何？ 私を利用する気？ さっきも言ったけど、私そんな安い女じゃないから」
色欲くん「別に安い女でいいだろ」
色欲くん「高くていいことなんてなくね？」
嫉妬ちゃん「また屁理屈・・・」
嫉妬ちゃん「人間としての価値の話をしてるの。私はそんな程度の低い女じゃない」
色欲くん「でも矛盾してね？」
色欲くん「お前さっきは「私なんか」とか「その程度の関係だった」とか言ってたじゃん」
嫉妬ちゃん「っ」
色欲くん「自己評価がぐるぐるしてっけど？」
嫉妬ちゃん「・・・うるさい！」
嫉妬ちゃん「もうあんたに構ってる暇ないわ。私、彼のとこに行かないと」
色欲くん「そいつを殺してお前も死ぬの？ さっきそう言ってたけど」
嫉妬ちゃん「・・・」