異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

アーム・ザ・コニー・ロト男

第十一話『そして異世界がヤ・キュウを知った』(脚本)

異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

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〇王妃謁見の間
レヴィリック「それでは今回のヤ・キュウへの感謝と両チームの健闘を称え! 乾杯!」
「乾杯」
ユニファ王女「料理もお酒も沢山ございます。 どうぞ皆さん、ご堪能ください」
参加者たち「わいわい」
レヴィリック「さて、ここからはお前たちの出番だ。 ヤ・キュウに関する質問には全て答えろ。ここで一気に広げるぞ」
ヒルダ「言われるまでもありません。全てのメイドへの仕込み、ルールを記載した資料も準備済みです」
ドロシー「ちょっと、ラクス王子。私の変化球打ったくらいで勘違いしないでよ。私はまだまだ色んな魔球を隠しているんだからね!」
ラクス王子「ええい絡むな、この酔っ払い魔女!」
ヤマクモ「そのメイド。 我に酒を口移しで・・・・・・」
ヒルダ「一度だけしか言いません。この会場でいつものセクハラを働いたら即刻消します」
ヤマクモ「・・・・・・覚えておこう。 この世で最も恐ろしき者」
リベル「スピードはともかく、真っすぐ投げられるのが素晴らしい。俺は未だに上手くなげられん」
副官イート「コツがあるんです。 よければお教えしましょう」
両国の兵士たち「いや、面白かったな」
両国の兵士たち「悔しかったが、面白かった」
両国の兵士たち「次こそ負けん」
両国の兵士たち「いや次も我々が勝つぞ」
両国の兵士たち「そして酒を飲んで騒ぐぞ! おー!」
ラクス王子「まったく、あいつ等。 負けたにも関わらずはしゃぎおって」
マコ「そういうラクスはどう? 楽しんでいる?」
ラクス王子「・・・・・・まあな」
ラクス王子「不思議なモノだ。確かに負けて悔しいが、どこか満足感がある」
ラクス王子「勝っても負けても最後はこうして皆で楽しみ盛り上がる」
ラクス王子「やはり戦争とは違うな。 ・・・戦は勝っても心が荒むばかりで、酒を飲んでも酔えもせん」
ラクス王子「関わる者、誰もが笑顔になれる。 これがヤ・キュウか」
ラクス王子「・・・・・・」
ラクス王子「この戦乱の世にあって戦争が無意味であるとは私の口からは言えん。だがユニファの言葉を改めて考えさせられる」
ラクス王子「しかし残念だ。次にお前たちとヤ・キュウで相見えるのは、早くても3年後。随分と先の話になりそうだ」
マコ「別に3年も待つ必要ないじゃん」
ラクス王子「しかし国同士の盟約が・・・・・・」
マコ「あれは戦争しないって約束でしょ。 ヤ・キュウは関係ないし」
ラクス王子「そうなのか? しかし神聖な儀式で、何かを賭けなければならないのだろう?」
マコ「あー、そういえばそういう事になっていたな。・・・あっ、でもアレだ。賭けをしない練習試合ならいつでもできるよ」
マコ「ああ、でも負けた方が宴会代を持つのだけは必要かな?」
ラクス王子「なるほど。そういうモノなのか」
ユニファ王女「ラクス王子。是非またいらしてください。そして皆で笑いましょう」
マコ「そうだよ! 二試合目のラクスは凄かったし、次は絶対に勝てるからさ。また皆で一緒にヤ・キュウしよう」
ラクス王子「・・・・・・二人は似ているな」
マコ「私とユニファが?」
ラクス王子「確かに性格は違う。見た目もまったく違う。だが・・・・・・」
ラクス王子「二人が見ているモノは一緒で、二人の志もまた一緒なのだろうと強く感じた」
ラクス王子「それにしても不思議だな。マコは私の知る神の御使いとまるで違う存在に思える」
マコ「もうさ。みんな私のことを神の御使いとしか見なくてイヤになるのよね。私は私のつもりなのにさ」
ラクス王子「マコがそのままなら、いずれ皆が考えを改めるだろう。今の私がそうであるようにな」

〇王妃謁見の間
ラクス王子「それではそろそろ失礼する。近いうちに再びヤ・キュウで相見えよう」
マコ「約束だよ」
レヴィリック「それではラクス王子。 こちらがこの度の請求書になります」
ラクス王子「ああ、宴会代はこちら持ちだったな・・・ってちょっと待て、レヴィリック! なんだこの膨大な金額は!」
レヴィリック「これでも随分とお安くしたつもりなのですが?」
ラクス王子「なんだ、その悪い顔は! 絶対に嘘だろう!」
レヴィリック「おや、ダルトンハイト騎士国の王子ともあろう者が約束を反故にすると?」
ラクス王子「ぐぬぬっ、払ってやるわ! くそっ! やはり貴様だけは信用ならん! 覚えておれよ! 次は負けんからな!」

〇黒
  こうしてラクス王子たち、騎士国ラウンズの面々はダルトンハイト騎士国へと帰っていった。
  ユグド聖国とダルトンハイト騎士国によるヤ・キュウ対決の噂は瞬く間に異世界中に広がった。
  敗北したダルトンハイト騎士国ラクス王子は、取り決めに従い三年間、ユグド聖国に手を出さないと公言。世間を驚かせた。
  ・・・まあこの後、ラクス王子は幾度となくヤ・キュウ対決を申し込んでくることになるんだけど、それはまた別の話だ。
  そしてこの異世界ジングレスはヤ・キュウを知った。
  ──4ヵ月後。

〇草原の道
獣人の青年「そこの方、お伺いしたいことがあるのですが?」
マコ「ん? 私のこと?」
獣人の青年「ユグド聖国の王城にくれば、ヤ・キュウ対決をしていただけると話を聞いたのです」
マコ「うん、そうだよ・・・」
マコ「・・・って獣耳!」
パキマビ「我らは獣人ですから。申し遅れました。ボクはパキマビ。オオカミの獣人です」
マコ「獣人ということはえーっと・・・ここから南にある獣人たちの国ドムドバカス連合の人たちか」
パキマビ「はい。噂に聞こえたヤ・キュウをしたく、こうしてチームを作ってやってきた所存です」
パキマビ「門番の方にその旨を伝えたところ中へ入ってよいと言われたのですが、どうやら道に迷ってしまったようで」
マコ「そっか。なら案内するから、付いてきて」
マコ「おーい、レヴィリック、ドロシー。 またヤ・キュウ対決の申し込みみたいだよ」
レヴィリック「ほう、今度は獣人たちか」

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