終活魔王のエンディングノート

大河内 りさ

P3・婚活魔王(脚本)

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大河内 りさ

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〇養護施設の庭
ゲンティム「くらえッ!!」
フェゴール「甘いですね!」
フェゴール「ローレットさん!」
ローレット「任せて!」
ローレット「覚悟っ!」
ダーリナ「ヴィエリゼ様、危ない!!」
ヴィエリゼ「・・・えっ?」
ヴィエリゼ「きゃあああっ!」
  べちゃっ。
ヴィエリゼ「ううっ・・・」
ダーリナ「大丈夫ですか!?」
ゲンティム「おい、何ボーッとしてんだ」
ゲンティム「スライムドッジボールがやりたいって 言い出したのはお前だろう」
ヴィエリゼ「ごめん、ちょっと考え事してた・・・」
スライム「まおー様、怪我してナイ?」
ヴィエリゼ「うん、大丈夫」
ヴィエリゼ「せっかく協力してもらってるのに、 心配させちゃってごめんね?」
スライム「お役に立てて嬉しイの!」
ヴィエリゼ「そっか、ありがとう」
ゲンティム「健気だねぇ」
スライム「臨時ボーナスと危険手当もらエル」
ゲンティム「金かよッ!!」
ゲンティム「くそっ ボランティアでベトベトになってたまるか」
ゲンティム「俺は帰る」
ヴィエリゼ「えっ、このあとボウリングとラグビーだよ!」
ゲンティム「他のヤツ誘え」
ゲンティム「じゃあな」
フェゴール「そっ、そういえば 私も仕事が残っておりました!」
フェゴール「失礼いたします!」
ヴィエリゼ「ええ〜っ!!」
スライム「してんのー、逃げタ?」
ヴィエリゼ「逃げられちゃった・・・」
ダーリナ「でしたら、別のことをいたしましょう!」
ローレット「そだね!」
ローレット「スライム球技大会は一旦やめて、 別のことしよ!」
ヴィエリゼ「別のことかぁ~」
ローレット「ノートに色々書いてたじゃん?」
ローレット「あたしたちに手伝えること、 他にもまだあるんじゃない?」
ヴィエリゼ「うーん・・・」
ダーリナ「陶芸や乗馬でしたら、すぐにできそうですね」
ローレット「タコパとわんこそばもいけんじゃね?」
ダーリナ「それは食べ合わせがよくないでしょう・・・」
ローレット「そお?」
ダーリナ「ヴィエリゼ様は何がよろしいですか?」
ヴィエリゼ「・・・勇者に会いたい」
「ん?」
ダーリナ「今、何と・・・?」
ヴィエリゼ「ルカードに会いたいなぁ~って」
「えええええええっ!?」
ローレット「ちょっ、どういうこと!?」
ダーリナ「あのモブですか!? モブ顔勇者ですか!?」
「何で!?」
ヴィエリゼ「何でって・・・」
ヴィエリゼ「聞きたいこともあるし、それに──」
ヴィエリゼ「10年振りに会ったら、 カッコよくなってたんだもん!」
「────ッ!?」

〇魔王城の部屋
ローレット「ゲンティム! フェゴール!」
ゲンティム「おっ、思ったより早かったな」
フェゴール「球技大会は終わったのですか?」
ローレット「あんたたち逃げたわね!!」
ローレット「──じゃなくて、それより大変なのよ!!」
フェゴール「どうしました?」
ローレット「エリゼが・・・」
ゲンティム「嬢ちゃんが?」
ローレット「勇者に会いたいって!!」
「・・・・・・は?」
ゲンティム「何それどゆこと?」
フェゴール「仰っている意味がよく分かりません」
ローレット「だから、勇者ルカードに会いたいって 言い出したんだってば!!」
ゲンティム「スライムぶつけられて 頭おかしくなったのか?」
フェゴール「ですからドッジボールなど 止めましょうと言ったのに」
ダーリナ「ヴィエリゼ様はどうやらその──」
ダーリナ「勇者に一目惚れしてしまったようなんです」
「はああああっ!?」
ゲンティム「あんな地味なヤツのどこがいいんだ?」
フェゴール「よりによって勇者とは悪趣味な」
ゲンティム「小さい時は「ゲンティムと結婚してあげてもいーよ」なんて言ってたのに・・・」
フェゴール「・・・趣味の悪さは昔からでしたか」
ゲンティム「おい!」
ローレット「とにかく、何か対策を考えなきゃ!」
ゲンティム「そんなの、勇者殺して終わりだろ」
ダーリナ「それだとヴィエリゼ様が悲しまれるのでは?」
ゲンティム「んなこと言ってもよお」
フェゴール「・・・こうなっては仕方ありませんね」
ローレット「何これ?」
フェゴール「今週末に行われる 婚活パーティーの案内状です」
ローレット「婚活パーティー?」
ゲンティム「お前、参加するつもりだったの?」
フェゴール「この催しに魔王様をお連れして、 興味を他へ移すしかありません!!」
ゲンティム「無視かよ」
ローレット「そうと決まればエリゼを誘いださなくちゃ!」
ローレット「行こっ、ダーちゃん!」
ダーリナ「だからダーちゃんって呼ばないで!」
フェゴール「では私は参加の申し込みをしておきましょう」
フェゴール「魔王様と私に、 ローレットさんとダーリナさん・・・」
フェゴール「全部で四人ですね」
ゲンティム「・・・俺は?」

〇貴族の応接間
ヴィエリゼ「婚活パーティー?」
ローレット「そっ! 一緒に行こ!」
ヴィエリゼ「ローレット、 彼氏いるって言ってなかったけ?」
ローレット「それならちょっと前に別れた」
「え・・・」
ローレット「だから、次こそいい男を捕まえるための婚活パーティーってわけ!」
ヴィエリゼ「ダーリナも行くの?」
ダーリナ「え、ええ。ちょうど婚活したいなーと 思っていたところでして・・・」
ヴィエリゼ「何か怪しい・・・」
ダーリナ「うっ」
ローレット「どこがよ~!」
ローレット「ダーリナも彼氏欲しいんだって!」
ダーリナ「そそそ、そうなんです!」
ローレット「ってなわけで、はいコレ!」
ヴィエリゼ「『プロフィールシート』・・・?」
ローレット「二人とも、婚活パーティー当日までに 書いておいてね!」
ヴィエリゼ「職業、勤務地、最終学歴・・・」
ダーリナ「性格、趣味、休日の過ごし方・・・」
「めんどくさっ!!」

〇結婚式場のレストラン
  婚活パーティー当日
研究者「錬金術の研究の傍ら、大学で講師を──」
ローレット「却下」
ダーリナ「次の方どうぞ」
貴族「魔王様の栄光を寿ぎ、ご挨拶申し上げます」
貴族「ルゼバエナ家嫡男──」
ダーリナ「却下」
ローレット「え、今のナシ?」
ダーリナ「先日、城の廊下で メイドを口説いているのを見掛けました」
ローレット「ナシだわ」
ダーリナ「次の方どうぞ」
門番「魔王城の門番やってま──」
「却下!!」
ヴィエリゼ「二人とも・・・」
ヴィエリゼ「私のことは放っておいていいからね?」
ダーリナ「そういう訳にはまいりません!」
ローレット「エリゼに変なのが寄ってこないよう 見張ってなきゃ!」
ヴィエリゼ「婚活しに来たんだよね?」
???「お嬢様方──」
ガスタイン「お飲み物はいかがです?」
ガスタイン「・・・って」
ガスタイン「お嬢っ──魔王様!?」
ガスタイン「こんなところで何を!?」
ヴィエリゼ「いやそれはこっちの台詞」
ヴィエリゼ「何してるの、ガスタイン」
ガスタイン「婚活パーティーなのですから、 目的は一つでございましょう?」
「壊滅的に私服がダサい・・・!!」
ローレット「てかガッスー独身だったんだ」
ダーリナ「てっきりご家庭をお持ちなのかと」
ガスタイン「こう見えてバツイチでございます」
「えっ!?」
ガスタイン「お伝えしておりませんでしたかな」
ガスタイン「魔王様の乳母でありますグエルと、 一時家庭を築いていたのですよ」

〇結婚式場のレストラン
「えええええええっ!?」
ガスタイン「魔王様がお生まれになる何年も前のことです」
ヴィエリゼ「そ、そうだったんだ・・・」
司会「さあ、ここで中間投票のお時間です!」
司会「いいなと思った人の番号を書いて スタッフまで渡してください!」
ガスタイン「おや、もうそんな時間ですか」
ガスタイン「それでは魔王様、御前を失礼いたします」
ヴィエリゼ「あ、うん。 頑張ってね・・・?」
ローレット「よし、気を取り直して・・・」
ローレット「エリゼ、誰に投票する?」
ダーリナ「気になる殿方はいらっしゃいましたか?」
ヴィエリゼ「いや、特に・・・」
ヴィエリゼ「ていうか、彼氏欲しいのは ローレットとダーリナだよね?」
ヴィエリゼ「ずっと私の側にいて大丈夫だったの?」
ローレット「とりあえず③~⑲番はナシだよね」
ダーリナ「⑳番もダメです」
ダーリナ「品がなくヴィエリゼ様に相応しくありません」
ヴィエリゼ「いや、私の相手は 探さなくていいから・・・」
ローレット「もちガッスーもナシじゃん?」
ダーリナ「そうなると残りは①番だけですか・・・」
ヴィエリゼ「聞いちゃいねえ」
ローレット「そういえば①番と話してなくない?」
ダーリナ「そうですね。どこにいるのかしら──」
ローレット「①番イケメンじゃん・・・!!」
ダーリナ「あら、あの方は──」

次のエピソード:P4・歪み

コメント

  • みんな和気藹々!魔族の会話がほぼガールズトーク…笑
    その中で「勇者殺して終わりだろ」の一言にハッとします…タイトルは終活…

  • 魔王軍四天王、好き。魔族の中だけでも色々な関係性があって良いなあ。みんなキャラが良い!

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