エピソード3(脚本)
〇幻想2
ロク「死んだ?」
僕の言葉に女性は頷く。そういえば、僕は背中を押されて、トラックの前に飛び出してしまった。あれで僕は死んだのか。
ロク「そう・・・・・・なんだ」
意外と、そんな言葉しか出なかった。こんな訳の分からない場所にいるから、夢なんじゃないかとさえ思う。
ロク「ところで、あなたは・・・・・・女神様か何か?」
周りの状況と、死んだという話から、そんな気がする。
モリアテ「御名答、私は女神モリアテ」
モリアテは嬉しそうに手を叩いて答えた。あまり嬉しくない答え。自分が死んだという事実を、突き付けられているのだから。
モリアテ「暗いですね、やっぱり死んだのは辛いですか?」
ロク「まぁ、辛いといえば辛いかな」
笑顔でモリアテが問いかけてくるのを、僕は目を伏せながら答える。
こういう時に微笑んだり、嬉しそうに手を叩く、とてもズレた感性が人間離れしているという事を、裏付けている。
モリアテ「生き返りたいですか?」
いきなり投げかけられたモリアテの言葉に、僕は弾ける様に顔をあげる。
ロク「生き返れるの?!」
モリアテ「さすがに元の世界には無理ですが」
ロク「あぁ・・・・・・それは無理なんだ」
それでも生き返る。その言葉は魅力的だった。元の世界は無理でも、このまま死ぬのはやっぱり納得できない。
ロク「生き返るというのは、どういう事?」
とにかく話を聞いてみようと、僕はモリアテに問いかける。その言葉にモリアテは、少し含みのある笑顔を浮かべて口を開く。
モリアテ「その気になってもらえて、うれしいです」
その笑顔に少し引っ掛かりを覚えながら、僕はモリアテの言葉の続きを待った。
モリアテ「厳密には生き返るというより、転生です」
ロク「・・・・・・転生」
輪廻転生。アニメとかに出てくる言い方をすれば、異世界転生というやつだ。
ロク(でも、それをさせる事が、モリアテにどんなメリットがあるんだろう)
ロク(僕は、理不尽に終わってしまった人生を、別の形でも続けられるなら、嬉しい。でもモリアテにはメリットが思い当たらない)
モリアテ「メリットですか・・・・・・やっぱり面白いですね」
当然の様に、僕の思考を読んだモリアテが、そう言う。僕は居心地の悪さに身をよじった。
ロク「それで、メリットは?」
遠回しにしても意味がない。僕は単刀直入に問いかける。
するとモリアテは、凶悪とも言える笑顔を浮かべて、答えた。