デッド オア チキン

がっさん

第1話 唐揚げとビール(脚本)

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〇取調室
税関職員「オマエ、ドコ、ココ、キタ?」
通訳「あなたはどこからここへ来ましたか?」
  どこって、無人島から・・・
税関職員「アリエナイ!」
税関職員「シマ、トオイ!トテモ、トオイ!」
税関職員「オマエ、ウソ!」
通訳「ありえません」
通訳「無人島からここまで、かなりの距離があります」
通訳「あなたは嘘をついています」
  いやいや!
  嘘なんて、ついてませんって!
税関職員「ウソ、ダメ!イエ!」
通訳「正直に話して下さい」
  あの・・・なんとなく彼の言ってる意味わかるんで
  通訳、大丈夫です
通訳「おk」
税関職員「イエ!」
  はぁ・・・
  えっと・・・
  どこから、話しましょうか・・・

〇講義室
三太郎「通常ニワトリには、最大で4000kcalの栄養価が含まれていますが」
三太郎「私が今回、品種改良に成功した新種は」
三太郎「骨格は変わらず、通常の約3倍の栄養価を蓄えることが可能です」
三太郎「その新種がこちら」
ニワトリ「コケーッ!!!」
三太郎「見た目も骨格も、名古屋コーチンとほぼ同じです」
研究者1「おぉ、どう見ても、普通の名古屋コーチンだな」
研究者2「手羽先1本が3本分のカロリー・・・」
ニワトリ「コケッ!コケッ!」
研究者2「おっと、失敬」
研究者1「まるでこちらの言葉を理解しているようだ」
三太郎「今や時間の問題とされている食料不足問題」
三太郎「この新種を、世界中で養鶏すること」
三太郎「それこそが、国際問題を解決する糸口となるでしょう」
教授「三太郎くん、すばらしい発表だった」
教授「君の10年間に及ぶ研究」
教授「いずれ、世界中の食糧問題を解決するだろう」
教授「まさに、君はヒーローだ」
三太郎「私がヒーローだなんて、恐縮です」
教授「ところで」
教授「次の国際会議がインドで開催されるのだが」
教授「各国の研究機関から強い要望がきていてね」
教授「君の成果であるニワトリを、一度見てみたいらしい」
教授「どうだね、参加してみる気はないか?」
三太郎(国際会議!)
三太郎(このチャンスを逃すわけにいかない!)
三太郎「ぜひ!お願いします!」
教授「快く引き受けてくれて、嬉しいよ」
教授「過酷な旅路になると思うが、せいぜい頑張ってくれ」
三太郎(過酷・・・?)

〇宿舎の部屋
  12日後・・・
三太郎「はぁ・・・はぁ・・・」
三太郎「うっぷ、気持ち悪い・・・」
三太郎「輸送船に乗ってから、今日で12日目・・・」
三太郎「もう無理、限界だ・・・」
ニワトリ「コケ〜・・・」
三太郎「ニワトリ、お前も限界だろう?」
三太郎「そもそもの原因が・・・」
  三太郎くんへ
  ニワトリのストレスを考慮し、
  インドまで船で向かってくれ
  2週間の長旅だが、
  まだ若い君ならば、余裕だろう
  くれぐれも、
  ニワトリの世話を欠かさないように
三太郎「教授め・・・」
三太郎「まるでニワトリを理解していない・・・」

〇宿舎の部屋
ニワトリ「コケーッ!?」
三太郎「なんだ!?」
ニワトリ「コケーッ!」
三太郎「おいまてっ、どこへ行く!?」
  きゃー!
  うわっ、ニワトリ!?
三太郎「まずいっ!」
三太郎「まてっ!ニワトリ!」

〇施設の廊下
三太郎「すみません!!」
三太郎「この辺でニワトリを見ませんでしたか!?」
船員「ニワトリなら、甲板の方へ走っていったけど・・・」
三太郎「ありがとうこざいます!!」
船員「えっ!?・・・おい!」
船員「外は危険だぞ!戻れ!」

〇漁船の上
三太郎「おーーい!ニワトリ!」
三太郎「どこだー!?」
  コケーッ!!
三太郎「あっ、いた!」
ニワトリ「コケッ!コケッ!」
三太郎「よかった!心配したんだぞ!」
ニワトリ「コケーッ!」
三太郎「ははっ、この大雨の中なのに、嬉しそうだな」
三太郎「お前も長旅にウンザリしてたのか?」
ニワトリ「コケッ!」
  ―――!
  ――――――!
三太郎「・・・ん?」
三太郎「なんだ?」
  船内へ戻れー!
  高波が来るぞー!
三太郎「えっ・・・?」
  コケーーーッ!!!
三太郎「ニワトリ――!!!」
三太郎「・・・ちきしょう!」
  おい!人が海へ飛び込んだぞ!!

〇海
三太郎「ぷはっ!」
三太郎(どこだ!?どこへ行った!?)
三太郎「ニワトリーっ!!!」
三太郎「うわぁ!」
(息っ・・・息がっ・・・!)
(やば・・・俺・・・)
(このまま・・・死ぬんじゃ・・・?)
(・・・)

〇海辺
  ・・・
  ・・・・・・
三太郎「う・・・」
三太郎「うーん・・・」
三太郎「・・・」
三太郎「・・・生きてる」
三太郎(生きてる、けど)
三太郎(これは・・・)
三太郎(これはひょっとすると・・・)
三太郎「遭難・・・!?」
三太郎「そうだ!スマホ!」
三太郎「チキショウ、水没してやがる・・・」
三太郎「まずは、人を探さないと・・・」
三太郎「おーーーい!!」

〇島
「誰かいないのかーーー!!!」

〇海辺
三太郎「・・・」
三太郎「誰もいねぇ・・・」
三太郎「ニワトリ・・・」
三太郎「俺の・・・10年間の・・・」
三太郎「研究成果・・・」
三太郎「ぐすっ」
三太郎「俺はもう、終わりだ・・・」
三太郎「このまま、俺は死ぬのかな・・・」

〇海辺
三太郎「はぁ・・・」
三太郎「何もしないまま・・・夜になっちまった」
三太郎「腹が減って、頭も回らないし」
三太郎「生きる気力も、湧いてこない」
三太郎「どうせ、終わりだ、全部」
  ーー・・・
三太郎「・・・ん?」
  コケー・・・
三太郎「・・・!」
  コケーーーッ!!!
三太郎「に、ニワトリ!?」
三太郎「ニワトリーッ!!!」
ニワトリ「コケーッ!!!」
三太郎「お前、よく生きてたなぁ!!!」
ニワトリ「コケッ!」
三太郎「よかった・・・本当によかった・・・」
  腹が減った・・・
  ・・・
  コイツ、美味そうだな・・・
  コイツを食べれば・・・
  少なくとも5日、いや7日は持ちこたえられる・・・!
  なにせ新種、奇跡のニワトリ!
  丸焼きか、それとも串で刺して焼き鳥か・・・
  油があれば、唐揚げが食べられるな・・・
  いやいや!だめだ!
  コイツは、俺が10年間に及ぶ、遺伝子研究の成果!
  新種のサンプル、第一号!
  もし食べてしまったら・・・
  俺が積み上げてきたキャリアは終了
  食糧問題は解決しないまま・・・
  あー、だめだ
  空腹で、何も考えられない
  唐揚げ・・・
  食べたい・・・
  地元の居酒屋で・・・
  ビールと一緒に・・・
  ・・・

〇居酒屋の座敷席
三太郎(ここは・・・)
三太郎(居酒屋・・・?)
三太郎(もしかして、夢の中か?)
店員「へい、唐揚げお待ち」
三太郎(か、唐揚げ・・・!)
三太郎(カリッカリ、黄金色のツヤ!)
三太郎(唐揚げの表面で、油がハネてやがる)
三太郎(揚げたての証拠!)
三太郎(うまそ〜〜〜!)
店員「それと、ビール」
三太郎(揃ってしまった・・・)
三太郎(最強の黄金コンビ!)
三太郎(まずはビール、ではなく)
三太郎(唐揚げ!)
三太郎(揚げたてを、そのまま食べるっ!!!)
三太郎「くぅ〜〜〜、うんめぇ〜〜〜!」
三太郎(肉汁が、口の中で溢れてる)
三太郎(鶏肉、やわらけぇ〜!)
三太郎(よし、唐揚げの油で喉が潤ったところで)
三太郎(ビールを一気に流し込む・・・!!!)
三太郎「くぅ〜〜〜!!!」
三太郎(やばい、意識が飛びそうだ・・・!)
三太郎(ビールが身体に染み込んでくる・・・!)
三太郎(この組み合わせ、犯罪的・・・!)
三太郎(そして、再び唐揚げ!)
三太郎(レモンを絞り、豪快にかける!)
三太郎(レモンの皮から溢れ出る香り・・・!)
三太郎「ん〜たまんねぇ〜〜〜!」
三太郎(最後に塩を少し付けて)
三太郎(食べる!!!)
三太郎(・・・)
三太郎(と・・・)
三太郎(飛んだ・・・!)
三太郎(うめぇのに、涙が出てきやがる・・・)
店員「兄ちゃん、美味しそうに食べるねぇ」
店員「おじさん、嬉しくなっちゃうよ」
三太郎「この唐揚げ、すごく美味しいです」
店員「そうだろう、そうだろう」
店員「なにせ・・・」
店員「このニワトリの肉を使ってるからな」
三太郎「なっ・・・!」
三太郎「そんな・・・」
三太郎「俺は・・・食っちまったのか・・・」
三太郎「嘘だ・・・嘘だ・・・」

〇海辺
三太郎「ニワトリーーーッ!!!」
ニワトリ「コケーッ!?」
三太郎「はっ!」
三太郎「夢か・・・」
三太郎「すまん、驚かせた」
ニワトリ「コケ?」
三太郎(夢でよかった〜・・・)
三太郎(でも、不思議だ)
三太郎(腹が、満たされている気がする・・・)
三太郎(これは、もしかしたら・・・)
三太郎(夢の中で飯を食えば、生き延びられる・・・?)
三太郎(いける・・・いけるぞ!)
三太郎「おっし!」
ニワトリ「コケッ!?」
三太郎「絶望してる場合じゃない」
三太郎「いま、お前を食べて俺だけ助かっても、食糧問題は解決しない」
三太郎「俺とお前、一緒に生き延びてさ」
三太郎「世界中の人間を、腹いっぱいにしてやろうぜ」
ニワトリ「コケーッ!」

〇取調室
「・・・」
  ・・・これが1日目の出来事です
税関職員「フッフッフ・・・」
「アッハッハッハ!!!」
税関職員「オマエ、ウソ、ヘタ!」
通訳「どうせなら、もうちょっとマシな嘘をついてくださいよ」
  いやいや!本当にあったことなんです!
  信じてくださいよ・・・!
税関職員「デモ、オマエ、オモシロイ!」
税関職員「ツヅキ、キカセロ!」
通訳「一体どうやって生き延びたんですか?」
通訳「40日間、無人島で!ニワトリと!」
  はぁ〜・・・
  えっと・・・2日目はたしか
  大量の飲み水を、確保しました
税関職員「デタ、ウソ!」
  嘘じゃないです!
  でも、私も未だに信じられません
  あれは、奇跡だったとしか思えないから

次のエピソード:第2話 焼き鳥

コメント

  • 唐揚げが食べたくなり、ペットが飼いたくなり、何より食事のときに「いただきます」と言うことの重みをユーモラスに表現されているように感じました。伏線やエフェクト、内容どれも参考になります。続きも楽しく読ませてもらいます!

  • 面白いですー!!そしてっ!!唐揚げ!!食べたくなりました・・・あぁーでもニワトリちゃん可愛いです・・・

    サバイバル✖️グルメって凄い組み合わせです!!

    あと、始まり方もドラマのようで・・・凄いです!!!!

  • 面白いです!

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