第四話 朧げな記憶(脚本)
〇古びた神社
白栴「な、なななな何!? この人達、何っ!? ってか、人!?」
白栴「か、かくなる上はっ!」
白栴「よっ・・・妖魔退散っ!!」
白栴は、柩から出て来た二人の額にお札をビシッと貼る。
そして、二人から距離を取り、空聖と天玉の後ろに隠れた。
空聖「ハハハッ!! 出たな? 白栴流のあいさつ!」
天玉「功徳様のお札・・・! 何と・・・ありがたい代物かっ! 蓬戒(ほうかい)!簾浄(れんじょう)! 後生、大切にしろよ!」
蓬戒「・・・し、痺れた〜!! 何っ!?この新手のアピールの仕方っ!! かわいいっ! かわいいんだけど!?」
簾浄「・・・ふむ。 確かに・・・痺れたな・・・」
空聖「ハハハッ! 相変わらずだなぁ? 蓬戒! 簾浄!」
白栴「????? ・・・知り合いっ?」
その時、ズキリと白栴の腕の痣が痛んだかと思うと・・・
白栴の脳裏に声が響く。
『願わくば・・・』
『輪廻の先でも・・・』
『再び、廻り逢えますように・・・。』
『誓いの証が・・・』
『呼び合いますように・・・』
空聖「・・・白栴!おいっ!白栴? 大丈夫か?」
白栴「はっ!」
白栴「う、うん!だ、だ大丈夫! それより・・・この人達?し、知り合いなの?」
天玉「・・・この二人を前にしても・・・功徳様は思い出さないのか?」
空聖「・・・そうみてぇだな・・・」
白栴「???」
空聖「じゃあよ? 久々に全員、揃ったんだ! ”誓いの証” 見せ合おうぜ?」
天玉「なるほど! ”誓いの証”を見せ合えば、功徳様も思い出すはず・・・!」
蓬戒「何?何? もしかして・・・この子リスちゃん! あの功徳なのっ!?」
簾浄「な、何と!」
白栴「何かよくわからないけど・・・イヤな予感が・・・」
空聖「って事で、白栴! 痣、見せてくれ!」
白栴「わわわわわっ!ちょちょ・・・っと!やめて──!!」
そう言って空聖が白栴の腕の包帯を解くと──
痣を中心に白栴は眩い光に包まれた。
〇古い本
白栴の脳裏に古い記憶が甦る。
〇草原の道
〇荒野
〇大樹の下
〇睡蓮の花園
白檀功徳「──よくぞここまでついて来てくれました。 ”九魔羅”を封印し、無事に”経典の実のなる宝樹”を守ることが出来た」
白檀功徳「これも全て、ここにいる皆のおかげ。 ──ありがとう」
白檀功徳「さぁ、これで旅はおしまい。 皆、自由ですよ」
天玉「功徳様・・・」
蓬戒「・・・そんな寂しい事、サラッと言っちゃうんだ? ま、功徳らしいっちゃ功徳らしいけど・・・」
簾浄「・・・功徳様! 私は・・・そのっ・・・!」
空聖「・・・」
白檀功徳「皆、やっと自由を得たというのに──なんて顔をしているんです?」
白檀功徳「はっ! 自由になったは良いものの! 何をしたら良いのか分からないとか?」
空聖「──白檀(びゃくだん)」
白檀功徳「なんですか?空聖」
空聖「──オマエ・・・あの宝樹に身を捧げる気だな?」
天玉「なっ!?」
白檀功徳「・・・空聖に、隠し事は無理でしたね・・・」
白檀功徳「ええ。 この旅の終わりは・・・私の命を”経典の実のなる宝樹”へと捧げる事で幕を閉じるのです・・・」
天玉「なっ!?馬鹿なっ! 宝樹を守っただけでは駄目なのかっ?」
白檀功徳「今の宝樹は、九魔羅の邪悪な気が多く含まれている状態・・・。 こんな状態では、経典の実は成らないでしょう」
蓬戒「だからって、功徳が人柱にならなくちゃいけない訳!?」
簾浄「・・・聖なる気を持つ者は、他にもいるはずでは?」
白檀功徳「・・・この旅の始末は私がつけたいのです」
空聖「・・・」
白檀功徳「貴方達に自由を与える事が私に出来る最後の花向け。 どうか──皆、この”自由”を受け取って欲しいのです」
空聖「そんな後味悪りぃ”自由”なんていらねーよ!! 一人で何もかにも背負い込みやがって! 一人で逝かせる訳ねーだろっ!!」
白檀功徳「・・・空聖・・・」
そこへ一人の僧が近付いて来た。
黒檀功徳「白檀。 何を揉めているんだい?」
白檀功徳「お兄様! なぜ、ここへ? 体調は、良いのですか?」
空聖「黒檀(こくだん)か・・・」
黒檀功徳「やぁ、皆元気かい? ここの甘露水は、私の病に効くからね。 汲みに来たんだよ」
天玉「功徳兄者からも言ってやってください! 功徳様は・・・自分の身を犠牲にして全てを終わらせようとしているんです!」
白檀功徳「天玉!!」
蓬戒「黒檀なら、何か良い解決策・・・知ってるんじゃない!?」
簾浄「このままだと・・・白檀様が・・・」
黒檀功徳「皆・・・白檀の事を大切に思ってくれているんだね。 ──ありがとう」
黒檀功徳「白檀。 お前には、体の弱い私に代わり・・・九魔羅討伐と経典の実のなる宝樹を守る旅をしてくれた事、感謝している」
白檀功徳「九魔羅討伐と宝樹を守る事は、我ら一族の悲願。 お兄様が気に病む事ではありません!」
黒檀は白檀の頭にそっと手を乗せる。
そして、フッと笑った。
黒檀功徳「白檀──お前もそろそろ”自由”になりなさい」
白檀功徳「えっ!?」
黒檀功徳「──私が、宝樹へ身を捧げよう」
白檀功徳「な、何を言い出すのですっ!?」
黒檀功徳「私も法師の端くれ。 白檀ほど、聖なる力は無くても・・・ 宝樹の中にある九魔羅の邪悪な気を抑える事は出来る・・・」
〇古い本
──ザザッ──
〇古びた神社
白栴「・・・」
空聖「──ん!おいっ!白栴!!」
白栴「はっ!!」
白栴は、今甦った記憶の断片と目の前にいる四人の男達の顔を照らし合わせる。
白栴「・・・空聖・・・天玉・・・蓬戒・・・簾浄・・・?」
天玉「!!」
空聖「──・・・ちっとは思い出したか?」
古い記憶らしきものが胸でくすぶる白栴の前に、空聖は自分の痣を見せる。
それに倣い、天玉、蓬戒、簾浄も自分の胸辺りに刻印された蓮の花のような痣を栴檀に見せる。
白栴「・・・!!」