魔王様、異世界へご帰還(強制)

ユースケ

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〇川に架かる橋
大間 柾「ふぅ・・・今日も良く働いた。 夜風が気持ちいいな。 しかし、東京の空は星が見えにくい。発展の代償か・・・」
  仕事を終え、夜の街を歩く。
  毎回、この時間は清々しさを感じている。
角田 花丸「きぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
大間 柾「なんだ!? 花丸!?」
角田 花丸「陛下ぁぁぁぁ!  死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
大間 柾「なんで!?」
角田 花丸「もう我慢ならんでそ! 陛下と共にノリで異世界へ来てみれば、パワハラロジハラスメハラカーニバルゥゥゥゥ!」
角田 花丸「私の良さを分からぬ愚か者の集まりにはホトホト愛想が尽いたでそぉ!」
大間 柾「それ多分、いや絶対にお前が原因だよね? 間違いなく俺には関係ない話だと思うわ。 予想というか確信だ」
大間 柾「というか、そうなると思ってたしなぁ・・・ お前の場合はなぁ・・・」
大間 柾「というか、こんな事したら100%誠司に報復されると思うぞ。 つか、お前、俺達いなくて生きていけるとは思えんのだが?」
大間 柾「それに花丸。 いっちょ前な意見は生活費を入れてからにしろ!」
角田 花丸「ほぁぁああああああああああ! 事実陳列罪は極刑死刑はりつ刑ぇぇ!」
大間 柾「第一、お前は魔王軍の中でもあんまり働いてなかっただろうに・・・」
大間 柾「世襲制の家系のちょっと変わった家系で、色んなところとパイプを持っていたから登用していたんだぞ?」
大間 柾「ただ、能力はあったしな。 お前の性格もあって策略はえげつなかったし・・・」
大間 柾「ただ、いかんせんナマケ癖が酷い。 とにかく楽しようとするのを業務効率化ってのは無理があるぞ? 悪い癖だ。」
大間 柾「あと、勇者パーティが魔王城まで来たの、お前の業務怠慢だからな。 そのナマケ癖、治せばいいんじゃないのか?」
角田 花丸「おほぉぉぉぉぉぉ! ロジハラでは誰も幸せにならないでそぉぉぉぉ!」
角田 花丸「何でもいいから返せでそぉ~! あの食っちゃ寝 食っちゃ寝のヌルと手抜き業務でも許された時代を返せでそぉぉ!」
大間 柾「それ許した覚えねぇんよなぁ。 あと、ロジハラって言う事は認めてはいるんだな。腹立つ・・・」
大間 柾「大体、お前が俺に勝てる訳ないだろ? 冷静になれ花丸。」
角田 花丸「ふぁはははは! 陛下も随分とおナマりになったでそぉ!」
大間 柾「なんだコイツ」
角田 花丸「責め苦とも言えるアルバイトの数々! そのおかげでスリムになった上、精神的に成長したこの花丸を陛下が倒すなど腹肩痛い!」
大間 柾「成長してたら、こんなことしないと思わないのか?」
角田 花丸「じゃかましいでそ!」
大間 柾「…………花丸よ。」
大間 柾「やりがいとは、自分で見つけるモンだぞ?」
角田 花丸「なにカッコつけてるでそぉぉぉぉ! 今はただのフリーターのくせにぃぃぃぃ! その命頂戴し、ついでに財布も貰って豪遊でそ!」
大間 柾「相変わらず欲望に忠実なヤツだなぁ」
大間 柾「ま、魔族なのだからな。当然か・・・」
角田 花丸「バカバカ陛下! バカ陛下ぁ! この花丸の下克上! お覚悟でそぉぉ!」
  腐っても魔族。
  花丸は地球人と違い、しっかりと魔力を持っている。
  それを拳に溜める。
角田 花丸「食らえでそ! スーパーミラクルバイオレットジャスティスダークパァァァンチ! とわぁああああああああああ!」
大間 柾「技名ダサすぎるだろ・・・」
  ――ドカァァァァァァン!
角田 花丸「びゃああああああああああああ!?」
  吹き飛ばされたのは花丸だった。
  だが、柾は何もしていない。
大間 柾「なんだ!?」
女神「や、やっと見つけました・・・」
大間 柾「お前は!? あの時の!」
女神「よ、よく分からない黒服の人に捕まって・・・さんざん詰問されて頭のおかしい人と言われて・・・牢屋にまで入れられ!」
大間 柾「あ、そっか、警察に・・・」
女神「おじさんに「お嬢ちゃん。故郷のお母さんが悲しむよ?」と言われる女神の気持ち・・・貴方に分かりますか!?」
大間 柾「いや、分かりたくない。」
女神「私! 女神! 女神です! 本来なら人に崇められるんです!」
女神「なのになんで!? 女神だって言っても誰も信じてくれないの!?」
女神「せっかく解放されたのにまた通報されるし! 信仰心が欠片もありませんよ! この世界の人々はぁ!」
女神「道を歩いている人にも、頭がカワイそうな人とか言われるしぃ!」
大間 柾「完全に不審者だろ。 女神なんて誰も信じないわ。つか、そのまま異世界へ帰ればよかったのに・・・」
女神「帰れませんよ! 今、フロストアースはたいへんな事になってるんです!」
女神「魔王よ! どうか力を貸してください!」
大間 柾「ふざけんな! シフトどうすんだ!?」
女神「・・・シフト?」
女神「そんな事より・・・良いですか? 今、フロストアースは――」
大間 柾「――魔王キーック!」
女神「ひにゃああああああああああ!?」
大間 柾「チッ、避けられたか。」
女神「あっぶ、あっぶなッ! なんてことするんですか!?」
女神「私は女神なんですよ! なんで攻撃するんですか!?」
大間 柾「不審者を現行犯逮捕する善良な一般市民だ。」
女神「不審者じゃありません!  女神! め・が・みぃ!!」
大間 柾「バカが! 神などと言う非科学的な物に頼る訳ないだろうがぁ!」
大間 柾「現行逮捕ぉ! 魔王ジャスティス!!!!」
女神「ちょっ!? 魔王のくせに非科学的って・・・にゃあああああああああああああああ!?」
  柾の解放した魔力によって、あっさりと捕縛された自称女神は気絶。
  そのまま、柾は交番に女神を届けるのだった。
角田 花丸「ひ、ひでぇめにあったでそ。 しかし、女神・・・ふふふ、これは好機でそ!」
角田 花丸「ふ、ふ、ふ、ふ」

〇ダイニング
大間 柾「ふぅ~、今帰ったぞ。」
小林 誠司「柾さま。お帰りなさいませ。 食事にしますか? それとも風呂でしょうか?」
大間 柾「なんか、そのセリフ嫌だな・・・。 とりあえず食事にしよう。」
大間 柾「ふぅ、ご馳走様だ。」
小林 誠司「お粗末様です。」
小林 誠司「しかし、柾さま。 酷くお疲れのようですが、仕事がお忙しいのでしょうか?」
大間 柾「いや、実はな――」
  誠司に先程の出来事を説明する。
小林 誠司「なんと無礼な輩でしょうか! 私がその場にいれば、即刻排除したものを!」
大間 柾「向こうからすれば、無礼者はこちらだろうがな。だが、あの女の話を聞く必要はない。」
大間 柾「我々は、もう地球の住人なのだからな。」
小林 誠司「……失礼を承知で発言をお許しください。柾さま。」
大間 柾「なんだ?」
小林 誠司「常々お尋ねしたかったのですが、柾さまは故郷に未練はないのですか?」
大間 柾「無いと言ったらウソになるぞ。 しかし、誠司よ。我々は敗北したのだ。世界の主導権を握る戦いにな・・・」
大間 柾「敗者はただ去るのみ。 意地汚く抵抗するのもありだが、俺の好みではない。」
大間 柾「その後の事に我々が考えるのは、そもそもお門違いだろ? 我々がどうにかするべき義理はあっても、義務があるか?」
小林 誠司「いいえ。 柾さまの意志。よく分かりました。 私は柾さまにお仕えするのみです。」
大間 柾「ふっ・・・好きにしろ」
小林 誠司「ところで、話に出てたバカ。 もとい、花丸は?」
大間 柾「・・・・・・あ」
角田 花丸「でそぉおおおおおおおおおおおお!」
小林 誠司「曲者!」
  ――バキン!
角田 花丸「びぎゃああああああああ!?」
大間 柾「あ、花丸だ」
小林 誠司「反射的に迎撃してしまったが、今のは貴様が悪い。」
角田 花丸「こ、これが現在の実情でそ!」
女神「何という事でしょう。 ここまで荒んでいるとは・・・」
小林 誠司「貴様は――」
大間 柾「自称女神!」
女神「自称ちゃうわぁぁ!」
大間 柾「不法侵入だ。 誠司、警察に連絡しろ。」
女神「ちょ、もう黒服の人たちは呼ばないでください! ていうか、私は家主に許可をもらっています!」
角田 花丸「そうでそ! 私が許可したでそ!」
大間 柾「お前か花丸! こんな浮浪者を家に招き入れたのは!」
女神「ふ、浮浪者ぁ!?」
角田 花丸「陛下・・・哀れな陛下。」
角田 花丸「フロストアースへ帰る時でそぉぉ!」
  ――バキッ!
角田 花丸「ぐばぁ!?」
女神「問答無用!?」
大間 柾「ふざけんなよ。 今、あの世界へ帰ってどうする? 第一、バイトのシフトはどうするんだ?」
女神「や、やはり・・・魔王は・・・」
角田 花丸「そ、その通りでそ」
女神「なるほど・・・これは酷く洗脳されていますね。」
大間 柾「洗脳?」
女神「この日本と言う社会。 「やりがい搾取」「24時間働けますか?」という名の洗脳・・・恐ろしいものです。」
大間 柾「・・・・・・・・・・・・は?」
角田 花丸「その通り! すっかり陛下はこの日本の悪しき風習に染まってしまったでそ!」
角田 花丸「悲しきかな。この日本の精神病者と自殺者とブラック企業は増える一方!」
角田 花丸「この社会に毒された事で、無駄に責任感の強い殿下はやりがい搾取の呪いにかかって――」
  ゴスッ!
角田 花丸「ぎにゃあぁ!?」
大間 柾「なにアホなこと抜かしてる! 働くさじ加減など自分で調整しろ! むしろ、お前の様なサボってる方がよっぽど問題だろうが!」
大間 柾「仕事をなんだと思ってんだお前は!?」
大間 柾「つかお前そんなに帰りたかったのか!? この世界を一番堪能してるはお前だろうが!」
大間 柾「ゲームだのネットだのマンガだのアニメだの! 面白さは認めるが、お前生活費一切入れずにそっちに全部使ってるだろうが!」
大間 柾「しかも家事とかしないし! そんな人間に仕事のことを語る資格はない!」
角田 花丸「フ、フロストアースには陛下にしかできない事が――」
大間 柾「お前はできる事すらやらんだろうが!?」
角田 花丸「このやりがい搾取され陛下めぇぇぇ!」
大間 柾「逆ギレはなはだしいな! お前は!」
女神「ちょっと落ち着いてください!」
  ゴスッ!
女神「ぐべぇ~」
  ――どさっ
大間 柾「口を挟むな電波女!」
角田 花丸「め、女神どのぉ~!?」
小林 誠司「フンッ!」
  ――ゴツン!
角田 花丸「びええええ!?」
  ――どさっ
小林 誠司「全く、この阿呆は・・・申し訳ありません柾さま。花丸の教育を怠った私の不徳の致すところです。」
大間 柾「お前が謝る必要はない。 先行きを見てない花丸のちょっとした暴走だ。」
大間 柾「コイツが、この電波女にある事無い事吹き込まれたか。もしくはいつも通りくだらない悪知恵だろう。」
角田 花丸「ぐ、ぐぅ~、かくなる上は・・・」
角田 花丸「女神パワー!」
  花丸が小さな球体を床に叩きつけた。
大間 柾「な、お前なにを――」
  瞬間、部屋の中が光に包まれた。
小林 誠司「これは――うおぉぉぉぉ!?」
角田 花丸「ふはははははははは! 不法入国者は強制帰還ですぞ!」
  光が収まった時、部屋の中には誰もいなかった。

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