第1話「顕現」(脚本)
〇渋谷の雑踏
2029年──
児玉優美(冬の雨って、雪より冷たく感じるのは、なんでだろ)
クリスマスの匂いが濃くなる12月17日
児玉優美(まあ、その雨は止んでくれたけど・・・)
その男は、人混みの中で仁王立ちしていた
児玉優美「えっ!?」
ただならぬ気配を持つ男──
男を避けて、人波は裂けていた
宮成大貴「児玉優美。いや、サンムラマート」
児玉優美「サ・・・って、なにを考えてるんですかっ、こんな人混みでっ」
宮成大貴「悦べ。余が直々に迎えに来てやったのだ」
児玉優美「余って・・・宮成さん! あなた、まさか・・・!」
宮成大貴「そうだ。大貴の自我はほぼ消失した」
宮成大貴「王の中の王たる余に、その魂の座を禅譲したのだ」
児玉優美「ふざけないでください! こんな衆人環視の中で!」
宮成大貴「良い。その気丈さは、余の好むところだ」
ジェイコブ・ロドリゲス「スグミさん!」
児玉優美「ジェイクさん! どうして!?」
ジェイコブ・ロドリゲス「神格霊の霊圧を感じて、駆けつけて良かった」
ジェイコブ・ロドリゲス「無事ですね?」
児玉優美「は、はい」
宮成大貴「邪魔立てする気か?」
ジェイコブ・ロドリゲス「だとしたら?」
宮成大貴「いいだろう。その意気に免じて、真の王たる余の力、その身で味わうことを許そう」
宮成大貴「その身に余る光栄に震えるが良い」
オジマンディアス「フハハハハ!」
児玉優美「なっ・・・!」
ジェイコブ・ロドリゲス「スグミさん! 離れて!」
児玉優美「は、はい!」
ジェイコブ・ロドリゲス「やむを得ん・・・」
ジェイコブ・ロドリゲス「ハアアアア!」
レオニダス「私が相手だ! オジマンディアス!」
オジマンディアス「レオニダス・・・そなたは善く善く無謀な戦いを望むようだな」
レオニダス「私はスパルタの王だ! 決して退かぬぞ!」
オジマンディアス「そうか。そなたの誇るトリアコシア、ここで使うか?」
レオニダス「・・・この時代の民衆を巻き込むわけにはいかぬ」
レオニダス「伝承具現など使わなくても、私は戦える」
オジマンディアス「それは残念だ。テルモピュライの再現ならば、付き合ってもやったのだがな」
なっ・・・なんかの撮影じゃねえのかよ!
お、おい! なんかやばいぞ! 離れろ!
救急車! いやっ警察!
スマホ向けてる場合かよ! やばいって!
オジマンディアス「その程度か、レオニダス。興醒めもいいところだ。余興にすらならん」
児玉優美「ジェイクさん!」
児玉優美「許さない・・・!」
オジマンディアス「ほお。ならば、どうする?」
児玉優美「セミラミス!」
セミラミス「我の出番のようだな」
オジマンディアス「ちっ、セミラミスか・・・そなたに用はない」
セミラミス「そうつれないことを言うな。我が相手をしてやる」
オジマンディアス「興が削がれた・・・そなたでは酒宴の相手にもならん」
オジマンディアス「そなたを迎える場は、あらためて用意するとしよう」
オジマンディアスは雑踏の中に姿を消した──
セミラミス「勝手な男だ・・・ふんっ、興醒めはこちらの方だ」
児玉優美「・・・ハッ」
児玉優美「ジェイクさん・・・!」
倒れているジェイコブに駆け寄る優美
児玉優美「ジェイクさんっ!」
ジェイコブは意識を失っていた
遠野篤志「児玉さん!」
児玉優美「遠野さん!」
遠野篤志「良かった。無事のようですね」
児玉優美「はい。でも、ジェイクさんが・・・!」
遠野篤志「ジェイコブさんのことは救急隊に任せましょう」
児玉優美「はい・・・」
〇渋谷の雑踏
本日、午前11時すぎ。渋谷スクランブル交差点にて、傷害事件が発生しました
警視庁によると、刃物のようなもので刺されたとみられる男性は、意識不明の重体とのことです
犯人と思われる男は逃走しており、渋谷署は注意を呼びかけるとともに、男の行方を追っています
〇病院の廊下
都立広尾病院内
児玉優美「ジェイクさん・・・」
治療室から出てきた遠野に駆け寄る優美
児玉優美「あのっ、ジェイクさんは・・・?」
遠野篤志「安心してください。一命は取り留めました」
児玉優美「そうですか。良かった・・・」
遠野篤志「我々憑坐(よりまし)は、憑霊した神格霊の影響を受けています」
遠野篤志「ジェイコブさんに憑霊しているのは不撓の王。治癒においても不屈の力を発揮したようです」
児玉優美「面会は・・・?」
遠野篤志「それはまだ・・・しかし、面会の許可もすぐに出るでしょう」
児玉優美「はい・・・」
遠野篤志「さて、今後についてですが、螺旋機関としても宮成大貴の自我消滅とオジマンディアスの暴挙は看過できません」
遠野篤志「オジマンディアスの目的がはっきりしていない現時点での手掛かりは、児玉さんに対する発言だけです」
遠野篤志「私は、オジマンディアスに対する螺旋機関としての対応を決めるために動かなくてはなりません」
遠野篤志「差し当たって、児玉さんには当分の間、護衛のしやすいホテルに滞在していただきます」
遠野篤志「護衛は、北畠さんと高倉さんにお願いしてあります。早速ですが、ホテルに移動しましょう」
児玉優美「分かりました。一度、自宅に戻っても?」
遠野篤志「もちろんです」
〇セルリアンタワー東急ホテル
セルリアンタワー東急ホテル
高倉隼人「厄介なことになりましたね。真弘さん」
北畠真弘「そうだね。まさか宮成さんが、自我を捨てて神格霊に肉体を明け渡すとはね」
高倉隼人「なんかいけ好かない奴だったけど、その霊力に見合わない精神の脆弱さに、つけ込まれたんでしょう」
北畠真弘「だろうね。僕たちにとっても他人事じゃない。程度は異なれど、神格霊の影響を受ける憑坐としてはね」
高倉隼人「真弘さんは大丈夫ですよ」
北畠真弘「ありがとう」
北畠真弘「おっ、我らのカリスが到着したようだ」
児玉優美「北畠さんっ。高倉くんっ」
北畠真弘「大変でしたね」
児玉優美「はい・・・」
高倉隼人「真弘さんと俺が付いてりゃもう大丈夫ですよ」
児玉優美「ありがとう。よろしくね」
高倉隼人「任せてください」
北畠真弘「じゃあ、早速だけど部屋に」
児玉優美「はい」
遠野篤志「では、私はここで失礼します」
児玉優美「はい。ありがとうございました」
〇ダブルベッドの部屋
3人はルームサービスで夕食を済ませた
北畠真弘「じゃあ、僕たちは、そろそろ隣の部屋に」
高倉隼人「そうですね」
北畠と高倉が立ち上がった時だった
北畠真弘「・・・!」
高倉隼人「真弘さん? なにか?」
北畠真弘「僕の結界を破って近付いてくる神格霊がいる」
児玉優美「オジマンディアス・・・」
北畠真弘「おそらく」
高倉隼人「どうします?」
児玉優美「・・・迎え撃ちましょう」
児玉優美「逃げても無駄でしょうし、なにより逃げ回るのは性に合いません」
児玉優美「オジマンディアスに立ち向かう覚悟はできています」
北畠真弘「・・・分かりました。では、そうしましょう」
高倉隼人「じゃあ、臨戦態勢といきましょうか、真弘さん」
児玉優美「わたしも、サンムラマートを顕現させます」
高倉隼人「児玉さんも?」
児玉優美「ジェイクさんの時のような後悔はしたくないの」
児玉優美「相手が明らかな敵対行為を取った以上、わたしは断固として抗う」
高倉隼人「・・・分かりました」
児玉優美「ありがとう」
北畠真弘「では、3人で迎え撃つとしましょう」
児玉優美「はい!」
サンムラマート「セミラミスを内包した私と呼応しただけあって、優美は気丈ですね」
サンムラマート「それにしても、2人とも甲冑ではないのですね」
源頼光「私の戦闘様式に甲冑は不要なのです」
源義経「俺は現実主義なんでね。現代の戦闘服が性に合ってる」
サンムラマート「平安の怪異殺しと、八幡大菩薩の化身。源氏の双璧が身方とは、なんとも心強いことです」
サンムラマート「来たようですね・・・」
オジマンディアス「迎えに来たぞ、サンムラマート」
サンムラマート「ひとつ問います。なぜ、私なのですか?」
オジマンディアス「ふむ。まあ、よかろう。答えてやる」
オジマンディアス「そなたが憑坐に選んだ児玉優美に対して、大貴が恋慕しておった影響も否めないが」
オジマンディアス「ネフェルタリの顕現が叶わぬ今生においては、そなたこそ余の妃に相応しい」
サンムラマート「お断りします。あなたの尊大さは私の好むところではありません」
オジマンディアス「言うではないか。余を前にして、その物言い。いよいよ気に入った」
オジマンディアス「今生に於ける、そなたの空中庭園は、余が用意してやろう」
源義経「話を聞かない上に、よく喋る男だ」
オジマンディアス「貴様に用はない」
源義経「南無、八幡!」
オジマンディアス「八幡の加護か。余の攻撃を防ぐとはな」
源義経「こちらの番だ!」
源義経「八艘跳び!」
オジマンディアス「ラムセウム・テモノス!」
オジマンディアス「ふんっ」
源義経「ちっ! 八艘跳びの連続攻撃で傷ひとつ付けられねえのかよ!」
オジマンディアス「防御とはいえ、余に伝承具現を使わせるとはな・・・」
オジマンディアス「良かろう。余が手ずから真の力とは何たるかを教えてやる」
設定がとてもしっかりしており、繊細に練り上げられています!!
闘いのエフェクトも上手く『避ける』動作は目から鱗でした!!
これだけ作り込まれた作品ですので、続きが気になります(*´`*)
可愛いのに気丈なヒロイン! いいですね(^▽^*
わきを固めるキャラも、第一話からとても印象的です。
世界観が胸熱でずっとワクワクでした!こういうのが読みたかった!続き楽しみにしております!