フラワー探偵・花音

安曇野あんず

第4話 ブーケの導き(脚本)

フラワー探偵・花音

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〇シックなカフェ
  振り返ると牧野さんの手にはナイフが握られていた。
岸井浩太「!」
市ノ瀬花音「え・・・」
  岸井さんが私をかばうように一歩前へ出た。
牧野拓実「これ・・・」
  牧野さんは笑顔のままナイフでライラックの枝を切って差し出した。
牧野拓実「お客さん、店に入る前、ライラックに顔を寄せていたので、この香りがお好きなんじゃないかと思って・・・」
市ノ瀬花音「え!? あ、はい」
市ノ瀬花音(あー、ビックリした。枝を切るためにナイフを持っていたんだ・・・)
牧野拓実「水に差してもらえば、しばらく持つので良かったらお持ちください。今が一番いい時期なので」
市ノ瀬花音「ありがとうございます。 私、この甘い香りが大好きで・・・」
牧野拓実「やっぱり。ぜひまた、お越しください」
市ノ瀬花音「ありがとうございます。 これ、部屋に飾ります」

〇通学路
市ノ瀬花音「香澄さん、見失っちゃいましたね」
岸井浩太「この時間なら、きっと家に帰宅したんでしょう。家の場所は分かってますから大丈夫です」
  香澄さんの家のほうへ歩いて行くと、少し先に香澄さんの後ろ姿が見えてきた。
岸井浩太「やはり背後をやけに気にしていますね。 少し距離を取って尾行しましょう」
  香澄さんは、そのまま家に帰り、しばらくして家の電気が消えるのを岸井さんと二人で見届けた。

〇中規模マンション
  岸井さんに送ってもらって家の前にたどり着いた。
岸井浩太「お疲れ様でした。尾行、疲れましたよね?」
市ノ瀬花音「いえ、さっき店長さんがナイフを持っていた時は驚きまたけど、そんな疲れてはいないです」
市ノ瀬花音「でも香澄さんを見てると、全然殺人に関わっているような気がしません。尾行しているの申し訳ない気がしてきました」
岸井浩太「尾行した限り、彼女の行動から直接、殺人に結びつく証拠は何もありません」
岸井浩太「でも、たとえ普通に見えても悪人にツケこまれて犯罪を起こすこともあります」
岸井浩太「どこに事件解決の鍵があるのか、あらゆる可能性を考えていかないと・・・」
岸井浩太「百合さんが、なぜ命を落とすことになってしまったのか、まだ何も分かっていないですから」
市ノ瀬花音(岸井さん、凄く真剣だ・・・・。 デートみたいなんてノンキなことを思ってる場合じゃなかった・・・)
市ノ瀬花音(絶対に事件を解決しなくちゃ・・・)

〇事務所
  数日後。岸井さんと一緒に、恵麻を訪ねて劇団の事務所に向かうと、大きな荷物を持った男の人とすれ違った。
  それは先日の舞台で小道具のナイフを持 
  っていた男の人だった。
中村恵麻「あ、花音。岸井さん」
市ノ瀬花音「今、出てった人、舞台でナイフを持っていた人だよね?」
中村恵麻「そう。あの人、今日で劇団、やめちゃうんだ」
市ノ瀬花音「そうなの?」
中村恵麻「あんな事件があって犯人も分かってないから、みんな疑心暗鬼になってて・・・」
中村恵麻「このまま事件が解決しないと、うちの劇団、バラバラになっちゃうよ」
市ノ瀬花音「そうなんだ・・・」
中村恵麻「ごめんね。劇団のことでバタバタしてて、花音たちに事件のこと任せっぱなしで・・・」
市ノ瀬花音「いいよ。こんなことになって恵麻はツライに決まってるし、ほかの人が普通でいられないのは当たり前だよ」
中村恵麻「・・・ありがとう。花音。・・・そういえば尾行したって言ってたよね。何か収穫はあった?」
市ノ瀬花音「宮下香澄さんのこと調べてるけど、まだ犯人に結びつくことは・・・」
中村恵麻「そっか・・・」
岸井浩太「勤め先の美容院か、よく行っている『ライラック』という店で犯人と接触するんじゃないかと尾行してますが・・・」
中村恵麻「ちょっと待って。『ライラック』って、あのレストランの『ライラック』のこと」
市ノ瀬花音「うん。恵麻、聞いたことある?」
中村恵麻「それって確か・・・」
  恵麻が棚からファイルを取りだした。
中村恵麻「百合さんは、この近くに新しい劇場を作る意見交換会のメンバーだったの。その劇場内にレストランを作る話があって・・・」
中村恵麻「その資料がこれなんだけど、ほら、ここを見て」
  恵麻が指さした資料に『レストラン候補一覧』があり『ライラック・店長・牧野拓実』と書かれていた。
市ノ瀬花音「これ、あの店の店長さんだ・・・」
中村恵麻「私も一度、百合さんと一緒にこのレストランに行ったことあるんだ」
中村恵麻「でも結局『ライラック』は選ばれなくて、劇場には百合さんの推薦で別の店が入ることに決まったみたい」
岸井浩太「なるほど。そうなると牧野拓実にも百合さんを恨んでいた可能性はあるってことですね」
市ノ瀬花音「・・・・・・」
市ノ瀬花音(そうなのかな。牧野さん、いい人そうだったけど・・・)

〇お花屋さん
  百合さんの死から一ヶ月。事件が解決しないまま、私たちは休みのたびに尾行を続けていた。
市ノ瀬花音(香澄さんはやけに背後を気にするけど、それ以外に怪しいところなんて全くないし、この事件、解決できるのかな・・・)
  ついつい事件のことを考えていると、店にお客さんが入ってきた。
市ノ瀬花音(ダメダメ。仕事に集中しなきゃ)
市ノ瀬花音「いらっしゃいませ」
  明るく声がけすると目に飛び込んできたのは香澄さんの姿だった。
市ノ瀬花音(ウソ・・・なんで香澄さんが?)
  私の前までやってきた香澄さんが目を細めてジっと見つめてきた。
市ノ瀬花音(もしかして・・・尾行しているのがバレて、香澄さんが私に会いに来たってこと?)
宮下香澄「ねぇ、あなた、もしかして『ライラック』の常連さん?」
市ノ瀬花音「え・・・」
市ノ瀬花音「はい。『ライラック』なら、その、何回か行ったことあります」
宮下香澄「あ、やっぱり。何度か見かけたことがあったから。仲良さそうな恋人と・・・」

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