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きせき

エピソード2-無色の刻-(脚本)

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〇シックなリビング
  助けて欲しい。
  と、目の前の男は言った。
  三男ながら、明石家の当主になり、
  タイムマシン・・・・・・いや、正確に言えば、
  マシンではないが、
  過去に戻れる秘術を受け継いでしまった為に
  命を狙われている、のだと。
黒野すみれ「いくつか、聞きたいことがあるんだけど、良い?」
明石春刻「うん、勿論。というか、聞きたいことだらけだよね」
明石春刻「本当に命を狙われているのか、とか」
明石春刻「もし、狙われているなら誰に狙われているのか」
明石春刻「君が過去に戻ってくれた場合、君は何をすれば良いのか、とか」
明石春刻「そもそも、君が過去に行って、僕を助けた場合、」
明石春刻「君が過去に行かなくて、助けられなかった場合と矛盾するから」
明石春刻「結局、助けた事実がなかったことになるんじゃないか、とか・・・・・・」
明石春刻「あとは僕の足のサイズとスリーサイズとか?」
黒野すみれ「いや、スリーサイズはいらない。普通に」
明石春刻「そう? ちなみに、足のサイズは26cmで身長は178cm」
黒野すみれ「・・・・・・」
明石春刻「ごめん。何か、人と話すの、久し振りだから話すのが楽しくなってきてね」
  笑っているのに、仮面を被っているような笑顔。
  明石春刻・・・・・・という名前は初めて聞いたが、
  確かに、昔、どこかで見覚えのある表情だった。
  でも、一体、いつ?
  どこで?

〇黒

〇新緑

〇黒
  緑の中、の少年・・・・・・?

〇シックなリビング
明石春刻「大丈夫?」
黒野すみれ「え?」
明石春刻「何か、反応が薄かったから」
  大丈夫そうなら話を続けるけど・・・・・・
  と春刻は言葉を続ける。
黒野すみれ「うん、大丈夫。少し疲れただけ」
  私はそう返すと、窓の方を見た。
  夕方だった窓の外は次第に暮れ始め、
  私はカーテンを閉めた。

〇シックなリビング

〇黒
明石春刻「じゃあ、まずは本当に命を狙われているのか? について答えると、YESだよ」
明石春刻「まぁ、当然だよね」
明石春刻「命が狙われるなんてことがなければ、当然、初対面に近い君に会いにきて、」
明石春刻「こんな頭のおかしなこと、言わない」
  頭がおかしい自覚はあったんだ・・・・・・
明石春刻「まぁ、秘術を使えば、莫大な財産を築くこともできるし、」
明石春刻「僕を殺しても手に入れたいっていうのも理解できるよね」
  明石家の秘術。
  確かに、過去に戻り、過去をやり直すことができる。
  もし、そんな術があるのだとしたら、
  大金を払う、人間もいるだろう。
  そして、その大金や力を手に入れるため、
  春刻を殺す者も・・・・・・。

〇keep out
明石春刻「次に誰が? って話だけど、それは分からない」
黒野すみれ「分からない・・・・・・って」
明石春刻「うん。まぁ、普通に考えて、僕は三男だから長兄に次兄もいるし、弟も1人いる」
明石春刻「あと、明石家は1人につき、専属使用人がいるんだけど、」
明石春刻「彼らだって僕を殺すメリットはある」

〇山の展望台
明石朝刻「今日は一段と良い天気だな」
夕梨花「ええ、朝刻様」
  明石家長男・明石朝刻(ともとき)と
  その専属使用人・夕梨花(ゆりか)。

〇諜報機関
明石東刻「ふぅ、こんなものか」
南田「東刻様、南田でございます。お茶をお持ちいたしました」
  明石家次男・明石東刻(ひでとき)と
  その専属使用人・南田(みなみだ)。

〇配信部屋
  コンコンコン。
玄人「青刻坊ちゃま、玄人です。坊ちゃま、坊ちゃま、あれ?」
  明石家四男・明石青刻(きよとき)と
  その専属使用人・玄人(くろうと)。

〇シックなリビング
黒野すみれ「兄2人に、弟1人。それに、それぞれの使用人」
  単純に兄弟3人と使用人3人で、6人。
  怪しい人間、多すぎ・・・・・・って思うが、
  他にも専属ではない使用人やら、
  明石家の親戚やらが春刻の命を狙っている。
  という、可能性もない訳ではなかった。
明石春刻「まぁ、多すぎだよね。世の中の名探偵達ってほんと凄すぎって感じ?」
明石春刻「あんなに容疑者いるのに、ズバリ当てちゃって事件を解決してるんだからさ」
黒野すみれ「・・・・・・」
  ある意味、名探偵よりも目の前のこの男の方が凄い。
  と思うのは、私だけなんだろうかと思う。
黒野すみれ「(被害者候補の割にはなんか呑気だよな・・・・・・)」
明石春刻「あ、別に呑気って訳じゃないよ?」
明石春刻「ただ、殺されるーって騒いでも、殺されない訳じゃない」
明石春刻「殺される時は殺される。でもさ・・・・・・」

〇新緑
明石春刻「時間は無限じゃない」
明石春刻「だったら、殺されるーって騒ぐより、馬鹿なことを言いたい」
明石春刻「馬鹿なことを言って、誰かにクスリと笑ってもらいたいって思ってるだけなんだ」

〇シックなリビング
  ふざけたり、真面目になったり、よく分からない男。
  春刻はまた大丈夫? なんて聞いてきたから
  私は大丈夫だと答えると、
  春刻の専属使用人について聞いてみた。
  朝刻・東刻・青刻には専属使用人がついている。
  考えれば、ほぼ初対面に近い私よりも
  その人に過去に戻ってもらって
  何とかしてもらう方が普通だろう。
  何故なら、春刻が死ねば、
  職を追われることになる可能性が高い。
  それに、もし、使用人が見返りを求めてきたら、
  何かしてあげるのも楽だろうから。
  だけど、それは不可能な策だった。
明石春刻「ああ、僕の専属使用人はもうこの世にはいないんだよ」

〇風流な庭園
明石春刻「彼の名前は秋川(あきかわ)さん。僕が物心つく前から面倒を見てくれた人だった」
秋川「また庭に出られてたんですか?」
明石春刻「だって、家ってなんにもないんだもんって僕が言ったら」
秋川「そうですね・・・・・・何もないですね」
明石春刻「って言ってたっけ。確かに、家の中ってつまらなかったんだけどね」
明石春刻「秋川さんの話をする感じとかは面白かったんだよね」
明石春刻「まぁ、そもそも、あんまり、先代や他の兄弟とかも別邸で暮らしてたから」
明石春刻「会わなかったしね」
明石春刻「今、思えば、秋川さんが家族みたいなものだったんだと思う」

〇風流な庭園
明石春刻「秋川さんが死んだのは先代の遺書が発表された数日後だった」
明石春刻「発見されたのは庭で、右手に針で刺したような傷があった」

〇シックなリビング
黒野すみれ「針の跡?」
明石春刻「うん、多分、先の鋭い針のようなものに毒が塗られていたんだと思う」
明石春刻「まぁ、幸か不幸か、彼は即死ではなくて、僕は彼と少しだけ話すことができた」

〇宇宙空間
秋川「気を、つけ・・・・・・て。誰か、が・・・・・・」
明石春刻「あき、かわさん・・・・・・?」
秋川「あ、貴方を・・・・・・って、いる」
明石春刻「秋川さん? 秋川さんっ!!」

〇黒
明石春刻「気をつけて」
明石春刻「誰かが貴方を狙っている」
明石春刻「それが彼から聞いた最後の言葉だった」

〇黒
明石春刻「だから、もし、君が過去に戻ってくれたとしたら、やって欲しいことは3つある」
黒野すみれ「3つも?」
明石春刻「そう、3つ。1つは秋川さんを死んだ原因を突き止める」
  確かに、秋川さんに針の跡があったとは言え、
  それが致命傷だったかまでは分からない。
黒野すみれ「成程。確かに、針の跡があっても、それが致命傷ではないかも知れない」
明石春刻「うん。2つ目はその犯人を割り出して、他にも僕を狙っている人物がいないかを調べる」
  秋川さんの死因を作った人間を暴くだけでは解決しない。
  しかも、それは何人いるか、分からないのだ。
黒野すみれ「まぁ、全員、狙ってましたなんてことにならなきゃ良いけど」
  昔、探偵役と被害者役以外の全員が犯人でした。
  なんて、いうミステリーがあると聞いたことがあるが、
  犯人が1人でなければならない。なんて、ことはない。
  むしろ、同じ目的の下で、
  同志の裏切りに遭ったり、真相が明るみに出なければ
  結託した方が都合が良い場合もあるだろう。
明石春刻「ははは、確かにね。そして、3つ目」
明石春刻「これは全員犯人だったらほぼ絶望的だけど、協力者を得ること」
黒野すみれ「協力者?」
明石春刻「うん。実はまだ僕は明石家の家から出られていないんだ」

〇地下室
明石春刻「いつまで見つからずにいられるかは分からないけど、」
明石春刻「僕はその部屋から君の家へやってきたんだ」
明石春刻「君から見れば、未来の明石家からね」

〇魔法陣2

〇シックなリビング
黒野すみれ「未来の?」
明石春刻「未来の・・・・・・と言っても、何年も先じゃないけどね」
黒野すみれ「ということは、過去は変えられるの?」
  よくフィクションで過去を変える、変えないが
  争点になる時がある。
明石春刻「それに答えるならYESだよ」
明石春刻「だって、例えば、過去を変えられる蝋燭を大金を出して買っても、」
明石春刻「何かの原因で結局、変える前と変わらなかったらさ」
明石春刻「明石家はとっくの昔に石を投げられているよ」
黒野すみれ「石・・・・・・ね。じゃあ、親殺しのパラドックスも?」
明石春刻「ああ、自分が生まれる前の過去に行って、親を殺してしまったらってヤツかな?」

〇黒
明石春刻「その事実が確定して、未来ができていくことになる」
明石春刻「無理のない修正を経て、ね」

次のエピソード:エピソード3-無色の刻-

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