コスパの悪いこの世界

玄夜 穹

美味しい食べ物片手に花火は最高(脚本)

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玄夜 穹

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〇噴水広場
  王国の空に様々な形を咲かせる花火――。
  花火が上がる毎に、辺りからも声が上がる。
  それはカナリアとクリスタも同じであった。空を見上げる二人の瞳は、花火と共に煌びやかに映る。
カナリア「クリスタ。」
クリスタ「ん?」
カナリア「今日はありがとね。いい気分転換になったよ!」
クリスタ「それを言うなら、国王様にだね!」
  クリスタの言葉に、カナリアは再び空を見上げる。
クリスタ「あ!国王様の花火だ!」
  今日一番の特大花火。それは国王の全裸を表現しているのか……。
  一瞬でカナリアから笑顔が消える。
カナリア「きたねぇ、花火だ。」
クリスタ「ん?」
カナリア「何でもないよ。クリスタちゃん今日も可愛いね!」
クリスタ「な、なに急に。」
???「ふふふふ。」
???「あれは上等な女達だな。高く売れそうだ。」
???「なぁボギー?」
ボギー「……。」
???「……。」

〇中東の街
  生誕祭が終わり、帰り道の混雑度に困った二人は、裏道から帰る事になった。
  先ほどまでの賑わいっぷりからは、程遠い静けさに
  祭りが終わった事をカナリアは実感する。それはクリスタも同じであろう。
カナリア「ふー。食べた食べた。」
クリスタ「全部のお店は流石に食べきれなかったね。」
カナリア「全部はそもそも無茶あるよね。」
カナリア「本当クリスタって食いしん坊。」
クリスタ「育ち盛りですから!」
カナリア「そーゆーレベルじゃないんですけど……。」
???「おっと。そこの嬢ちゃん達。」
???「こんな暗い道を歩いてるって事は、攫われてもいいって事だよなぁ?」
  カナリア達が歩く正面。その闇から二人の男が姿を現した。
カナリア「な、なにあんた達。」
カナリア「クリスタ!あたしの後ろに!」
クリスタ「う、うん!」
カナリア「あんた達。何者!?」
バギー「俺様はバギー」
バギー「人攫いです。」
カナリア「……直球ね。」
バギー「なぁボギー?」
ボギー「……。」
バギー「……。」
バギー「嬢ちゃん達ちょっと待ってね?」
カナリア「え?あ、はい。」
バギー「お前さぁ?」
バギー「何か言えよ。」
ボギー「……。」
バギー「もうさぁ。二年経つのよ。」
バギー「俺一人で喋ってるみたいな感じ。」
バギー「寂しいじゃん!!」
ボギー「……。」
バギー「……。」
バギー「ねぇ!お願い!何か言ってよ!」
バギー「言葉にしないと伝わらないじゃない!」
カナリア(なにこれ。)
ボギー「……。」
カナリア「じゃぁ。」
カナリア「お疲れ様でしたー。」
バギー「ちょちょちょい!!」
バギー「ボギー!二人を取り押さえろ!」
ボギー「……!」
  バギーの声に即座に反応するボギーはカナリアとクリスタの腕を掴んだ。
カナリア「痛っ――!」
クリスタ「やめて!」
  カナリアの苦しそうな表情にクリスタは眦を吊り上げ、掴まれていない左掌をボギーの顔の前に突き出す――。
クリスタ「ダイヤモンドフリーズ!!!」
ボギー「……!」
  咄嗟に二人の腕を離したボギーは宙に高く飛び上がり、裏通り一帯を凍らせる魔法から回避する。
バギー「いい魔力だ。その外見で上級魔法を使えるとは」
バギー「少しばかり驚いたぜ。」
バギー「だが、実戦経験は浅いみたいだな!」
クリスタ「きゃぁっ!」
  バギーの容赦のない拳に、クリスタは通路の壁に背中を強く打ち付ける。
カナリア「クリスタ!!」
  駆け寄るカナリアの声に反応しないクリスタ。
  カナリアは下唇を噛み、バギーを睨みつけるが、不敵な笑みでそれを返す。
バギー「さぁ嬢ちゃん。もう分かっただろ?」
バギー「大人しくしていれば、危害は加えない。」
バギー「大事な商品だからな!」
カナリア「この、ゲスっ――!」
カナリア「ち、近寄るな!」
バギー「無理言うなよ。」
バギー「言ったろ?俺達は――。」
  その瞬間――。
  囁くような声が通路に響き渡る。
  ダイヤモンドフリーズ。

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