コスパの悪いこの世界

玄夜 穹

コスパの悪いこの世界(脚本)

コスパの悪いこの世界

玄夜 穹

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〇ヨーロッパの街並み
  ダイヤモンドフリーズ。
  通路一帯を凍らせた先ほどのクリスタを凌ぐ太い氷のカナリアとバギー達を引き離す。
バギー「な、なんだこの魔力は!」
???「やぁ。野蛮な転生者ちゃん。」
カナリア「あ、あんた誰?」
???「?」
???「君に腕輪を売った店主さ。」
カナリア「……。」
カナリア「ええええええ!!!!!!」
???「そんな事より。助けに来たよ。」
カナリア「あ、ありがとう!」
  謎の青年はそう言うと、カナリアをスルーし。
  クリスタを抱きかかえた。
???「さてと。」
???「行こうか!マイエンジェル。」
カナリア「ちょちょちょちょ!!」
???「ん?」
カナリア「なに二人で逃げようとしてんのよ!!」
バギー「ボギー!」
バギー「さっさとこの氷の柱壊すぞ!」
バギー「逃げられちまう!」
ボギー「……!」
カナリア「ほら!来ちゃうじゃん!」
???「君にとって格好の場でしょ?」
カナリア「何言ってんの!?」
カナリア「い、意味わかんない!」
???「転生者っていうのはね。」
???「こっちの人よりも魔法を使えるようになるには難儀なものなんだ。」
カナリア「ど、どういう事?」
???「僕達は前世の記憶がある。」
???「つまり、魔法なんて使えない現実を生きてきた訳だ。」
カナリア「そうだけど……。」
???「そんな積み重なった人生を歩んできたのに、いきなり固定観念のずれた事が出来ると思う?」
カナリア「……。」
???「魔法はイメージが強ければ発動する。」
???「けれど僕達にとって、そのイメージを阻害しているのが、前世の記憶って事。」
カナリア「な、なるほど。」
???「でも、君に売った腕輪があれば魔法を使える。」
???「いわば、自転車とかでいう補助輪さ。」
???「さぁ。使ってみな。」
カナリア「……。」
カナリア「わ、分かった。」
カナリア(ま、まずは呼吸を整えて……。)
  カナリアは心を落ち着かせ、息をゆっくりと吐き出した――。
  氷の柱の先に向けて右掌を向け、炎のイメージをする。
???「……ん?」
  風が吹き出す。それは次第に強くなり、謎の青年は顔を歪める。
???「ちょっ――!」
カナリア「インフェルノ――」
カナリア「ブロッサム!!」
  カナリアが魔法を唱えると、バギー達の足元に赤黒い小さな花が咲く。
バギー「あん?」
バギー「なんだ?」
バギー「なんにも起きねーじゃねぇか!」
バギー「わははは!!!」
  バギー達が笑った瞬間。花は閃光を放った――。
バギー「あ?」
  この時バギーは……。
  初めて走馬灯というのが、あると知った。
  瞬間的な轟音と共に大爆発が巻き起こり、バギー達は一瞬で吹き飛ぶ。
  小さな花から発せられた爆発は、想像を超える威力で通路まで吹き飛ばし
???「まずい!!」
  謎の青年はカナリア達を抱え、空高く飛ぶ――。
カナリア「う、そ。あたし。」
カナリア「魔法、つか、えた。」
???「魔力全部使い果たすなんて……。」
???「不器用で、野蛮な転生者ちゃんだ。」
  カナリアは魔力を使い果たすと、気を失うと同時に腕輪は砕け散った――。

〇豪華な部屋
校長「カナリアさん。」
校長「いくら族に襲われたからといって、街を吹き飛ばしていいとはなりません!」
カナリア「うっ――。すみません。」
  あれから一週間が経ち、街は修復作業が行われていた。
  カナリアの放った魔法は他の被害が出なかった事については、幸運ではあっただろうが。
  国王は大変ご立腹であり、現在に至る。
校長「今回の件について、あなたがこの学園で魔法の実績が無い為。」
校長「自身の力量が分からない上での行動という。しょーもない結論になりましたが。」
校長「国王様も仕方―無く。それはもー仕方無ーく。」
校長「お怒りを鎮めてくれました。」
校長「しかし――。」
校長「次はありませんからね!?」
カナリア「ひゃいっ!」

〇大教室
カナリア「あぁ……。」
カナリア「死にたい……。」
クリスタ「ま、またそんな事言って……。」
クリスタ「私はカナリアちゃんのお陰で助かったんだよ?」
クリスタ「怪我人もいないし、あの人達も捕まって。カナリアちゃんすごいじゃん!」
カナリア「でも……。」
???「まぁ、国が滅んだ訳じゃないし。いいんじゃない?」
カナリア「!?」
カナリア「な、なんであんたがここにいんのよ!」
???「いやぁ。商売だけじゃ生計が厳しくてさ。」
???「実績から先生をやる事になったんだよね。」
カナリア「は!?」
カナリア「あんた歳あたしと変わんないでしょ!?」
???「この世界では実力があれば、歳は関係ないんだよ。」
カナリア「ゔっ――。」
クリスタ「カナリアちゃん。この人と知り合いなの?」
カナリア「え?」
カナリア(あ、そうか。気を失ってたから、こいつの事覚えてないんだ。)
???「始めまして。僕はルーフェイスと申します。」
クリスタ「あ、初めまして……。」
カナリア「ちょ、ちょっと軽々しくクリスタに触らないでよ!」
ルーフェイス「ちっ。」
カナリア「あ!」
カナリア「今舌打ちしたでしょ!?」
クリスタ「まぁまぁ二人共。」
ルーフェイス「そう言えば。」
ルーフェイス「腕輪ならいつでも売るからね?」
カナリア「え?」
カナリア「そう言えば、無くしたみたい。」
ルーフェイス「無くしたんじゃなくて壊れたのさ。」
カナリア「壊れた!?」
ルーフェイス「あれ。言ってなかったっけ?」
ルーフェイス「あの腕輪は使い切りタイプなんだ!」
クリスタ「な、なんの話してるの?」
カナリア「クリスタ!」
クリスタ「は、はい。」
カナリア「こいつとんでもない詐欺師だから気を付けて!」
ルーフェイス「本当この世界って」
ルーフェイス「コスパ悪いよねー。」
カナリア「お前が言うなーーー!!!」
  こうして、詐欺師教師のルーフェイスが担任を務める事になり
  この先の未来が更に不安になるカナリアであった。

コメント

  • どのキャラクターも個性的で愛らしく、やり取りが面白かったです!
    話の展開もテンポよく、最後まで一気に読ませていただきました。
    背景の選択、時間帯の設定が的確で、ファンタジー世界の雰囲気がとてもよく伝わってきました。
    四話で完結のようですが、ぜひ続編も読んでみたいと思いました!

  • キャラも物語も、どれをとっても面白いです。特に主人公のカナリアのキャラが、とても好きです。日常的なことに一喜一憂する姿も、愚痴ってしまったりもするところも、凄く共感できるし魅力的です。キャラクターたちの何気ない会話もユーモアが溢れていて笑えました。最後までとても面白かったです。完結していますが、物語もキャラも魅力的で、ぜひ続編が読みたいです。また、作者さんの他の作品も読んでみたいと思いました!

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