エピソード2(脚本)
〇睡蓮の花園
本作のメインヒロイン?サブ主人公?のユウガオさんです。
湖の女神と聞いて、ユウガオさんが実は人間じゃなかったと想像した人も多いでしょう。私も一度は考えましたが。人間です。
作中の通り、元・新月湖伝説は彼女の100年ほど前に生きていたお爺さまとお婆さまの大恋愛話から来ています。
星占の湖を"探しに"ではなく"訪ねに"と言っているのも、元々お爺さまが関係していたからでもあります。
ユウガオさんが星占の湖を見れたのは偶然ではありません。そもそも、強い風を伴った大雨が降った直後であれば誰でも星占の湖を
見ることができました。それでも死者が多かったのは誤った伝説を聞いて雨の中飛び込んだ人がいたり、湖に近づきすぎて水に
攫われる子供たちがいたからです。
ユウガオさんの瞳の色は隔世遺伝ですね。100年前なので、四世代継いでくらいでしょうか?
正直ややこしいですね。2親等の祖父母が新月湖のテーマになったで良くないかと思いましたが100年の歴史、今ユウガオさん家が
スムーズに貿易をできている意味、1700年代の在り方等を考慮した結果やはり大爺さまだー!と思いました。
作品内で泥水のようなものを「しくらと・・・しくらぁとだったかな?」と言っています。
これは、完全にチョコドリンクのことです。この作品の舞台となったのは1700年代前半の日本。1700年代後半は実際に遊女が
固形のチョコレートを6つもらった、という記述があります。1800年代になるまで何かに溶かしていないチョコレートは
とても苦く、薬剤として使用されていたそうです。今回はチョコレートからユウガオが海外と接点があるとわかること、
貴重なはずのチョコレートを惜しげなく五郎太に食べさせて(飲ませ)ていること、
また、"海外の、チョコレートを溶かして飲む飲み方を当たり前のようにしている"ユウガオを書きたくてチョコレートドリンク
を作品内に取り入れました。チョコレートは祖父の同業や知り合いの筋からこっそり売ってもらっています。
ちなみに、星座盤は星占いに使われるから星占の湖と言っていますが、元々は星の周期を見るものなので星占いメインで使われていた
わけじゃないです。あくまで、ニュアンスの問題です。
ユウガオさんが星占の湖に来ようと思ったきっかけは、彼女に縁談の話が来たためです。勝ち気な性格の彼女には決められた結婚が
窮屈に感じていました。また、婚約相手が自分の目を見た時どんな反応をするかも気がかりだったんですね。
人種を超えて自由に大恋愛を繰り広げた祖父と祖母の星占の湖を、結婚する前に見ておきたかった。それが良いとこのお嬢様なのに
付き人もなく旅をしてきた理由になります。
父と母はうすうすユウガオのいる場を勘づいていたので、3日も経たずに村に迎えの馬車か籠が来ています。
お父さんは「結婚は、お前の好きなようにしなさい」と言いますが、ユウガオさんは首を横に振って縁談を受け入れます。
彼女と五郎太の別れはあえて書きませんでしたが、割とあっさり別れています。「それじゃあね」くらいでしょうか。
五郎太への感情は・・・まあ、旅先で出会った憎めない子供、くらいでしょうか。しかし、結納の際には何故か五郎太の顔が浮かぶ・
くらいには、心の片隅に残った存在でした。なにせ、気にしていた目を純粋に誉めてくれた初めての人でしたから。
結婚やハッキリとした恋愛という形ではなく、けれど2人、どこか想いあうような精神的な結びつきの愛・・・作者の大好物です。
ちなみに、今回はユウガオさんに湖に飛び込んで溺れかけた五郎太を救出してもらいましたが、もし溺れている人を見かけたら絶対に
自ら飛び込んで救出しようとしないでください。相手が意識がありパニックで暴れた場合、自分まで溺れる危険性が高いからです。
また、気絶して完全に身をこちらに任せきっている人の体はとても重いので自分が泳げるからというだけでは難しいものがあります。
少なくとも私はできません。
空のペットボトルやベルト、ロープなどを使ってください。
〇朝日
成長した五郎太、改め徳誠くんです。
成人し、改名の際、母・徳エと父・善誠から一文字ずつもらいました。
見てくださいこの笑顔。どう見ても気のいい兄ちゃんです。
比べるな、という顔をされてしまいました。
彼がグリム兄弟よろしく怪談・伝承の文書としての収集の道に進んだきっかけはもちろんユウガオの出会いですが、
ユウガオの言葉を真に受けてそのまま収集を始めたという訳ではありません。
ユウガオの言葉により自分が今まで憎んでいたそれらの非現実的な話の価値というものを改めて正面から捉え直したためです。
自分で色々調べて判断した結果、ユウガオと同じ結論に至って、逆に物語に惹かれるようになりました。
その活動が高じて物語収集の旅に出ることにしました。そのためあくまでも彼の決断と意志です。
そんな徳誠くんですが、彼もまた旅の途中で出会った女の子と結婚し子供ができます。
ユウガオさんは彼にとってまあ、自分でも言っていた通り女神みたいな人だったんでしょうね。
彼がどんな話を書き記したかは・・・本編を見れば、鋭い読者様は気づいていただけるのではないでしょうか。
制作裏話なのですが、もうほとんど書きおわり!あとは細かい調整だけ!という時に重大なミスを犯していることに気付きました。
そう、徳誠くんが海に流したユウガオさんへの手紙です。
徳誠くん、サラッとボトルメールをしていますがボトルメールの始まりなどはともかくとして、そもそも日本初ボトル瓶が1800年
以降だったそうで・・・元々このお話は1700年代前半くらいで、ユウガオさんもクォーターだったはずなのに整合性が取れず急遽
1800年代以降を舞台とすることになりました。そのため、ほぼ全部書き終わっていた物語をまた調整&作り直すことに・・・
書き直しやだー!とボトルメールでなく、寺や新月湖や村に預けておいたり直でユウガオさんの家に届けたりと考えはしましたが
でもなんとなく、あの湖を思い出すような星の輝く夜、徳誠くんが海に手紙を流すような気がして書き直すことにしました。
大変だったんですよ!もう!
〇宇宙空間
以上が『湖の女神』の裏設定になります。他にも、語り逃したような気がしないでもないですが・・・
というか、時代考証はそこまでできていないとはいえ元々効果音機能解放のため軽ーく書くはずだったのに、なぜこんなことに?
松もとても不思議がっています。
何はともあれ、今回はこの辺で。もしよければ、もう一度本編を読んでみてくださいね。
まだ1話だけですが、私の別作品『時計塔のある町』もぜひ・・・!(コソッ
では、また次の作品でお会いしましょう。
〇黒背景