ある日、ぼくらの王が殺されて

浮艇 景

1-2:ぼくらのその後(脚本)

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〇けもの道
  ぼく達はアークさん達に連れられ、洞窟を出て、森の中を歩いていた。
アミー「アークパイセン……どこに向かってるんです? こんなにぞろぞろと皆で……」
  (ぞろぞろ)
陸サメのアーク「他の魔物達と城で合流するのだ。 こうなった以上、皆で固まっていた方が安全だろう?」
陸サメのアーク「まずこの国の中央にあるアンヤ平原を抜け、山を通って城に向かう予定さ。」
ロノ「お城? まだ勇者がいるんじゃ……? 危なくない?」
陸サメのアーク「心配には及ばん。 勇者は、王様を倒すと宝に目も暮れずさっさと城を後にしたそうだ。」
陸サメのアーク「城は岩山と有毒な沼に囲まれているから、勇者以外の人間は容易には近づけまい。 だから、これからは城を拠点とする。」
ロノ「守りを固めながら、反撃の準備をするんだね。」
陸サメのアーク「ま、そんなところだな。」
アミー「………………あのよ、アークパイセン。」
「!!」
アミー「魔物が皆集まるって事はさ、オディールちゃんも来るのか?」
陸サメのアーク「……ハァ? オディールちゃん?」
  (↑オディールちゃん)
ロノ「サキュバスの女の子でぼく達の幼馴染なんだけど、普段は人の国で人間に紛れて生活してるからあまり会えないんだ。」
アミー「でもめっちゃ可愛いんだぜ! コソコソ隠れるのは嫌いだけど、オディールちゃんに会えるなら大人しく従ってやるよ!」
陸サメのアーク「あんな低級色魔共の事なんか知らん! アイツらは敵である人間に魂を売るような奴らだから、お前らも信じすぎないほうがいいぞ。」
「……えぇ~……」
陸サメのアーク(……単純な奴らだ……。 悪い奴らに騙されてヒョイヒョイついて行かないといいんだが……)

〇美しい草原
  ────その頃。
???「!!」
???「どうかしましたか?」
???「……ここから西の方。 大量の魔物の気配がする。」
???「ここから西というとクララの森ですね。 魔王がいなくなったことで、慌てふためいているのでしょう。」
???「……どうする? 勇者?」
勇者「……少し様子を見ていきましょうか。」

〇黒
  ……その日の夜。

〇森の中
  ぼく達はクララの森を出る前に少し休むことになった。
  アミーは本来夜の方が元気なのに、あっという間に寝入ってしまった……
ロノ(王様が死んじゃって、急に生活が変わったもんだから疲れていたのかなあ……)
陸サメのアーク「ロノ、どうした? 少し寝たらまた歩かなきゃいけないから、今の内に寝なきゃ駄目だぞ。」
ロノ「うん……疲れてるはずなんだけど、ぼくはなんでだか眠れないんだ。 目がギンギンになっちゃって。」
陸サメのアーク「それはお前が心配性だからだ。 色々と不安で寝れないんだろ。 寝てる間に襲われたらどうしようとかこの先どうしようとか。」
ロノ「そ、それはあるかも…… 色々な考えが頭の中でずっとぐるぐるしてるんだ。」
ロノ「考えたって仕方のないことはわかってるんだけどね……。」
陸サメのアーク「ほう、なるほどな。 それならいい方法がある。 ”絶対に”お前を寝かしつけてやろう。」
ロノ「ア、アークさんが寝かしつけてくれるの? (殴られて気絶させられそう……)」
陸サメのアーク「いいや、寝かしつけるのはオレじゃない。」
陸サメのアーク「この大蜘蛛さんだ。 おーい、よろしく頼んだぞ。」
大蜘蛛「……………………。」
ロノ「あっ、あの、やっぱり大丈夫です! 頑張って寝ますから近寄らないで!! お願いします触らないで、毒針刺してこないで!!」
大蜘蛛「…………オレノ目ヲ見ロ。 オ前は段々眠クナール、 オ前は段々眠クナール────」
ロノ(あれっ……これは催眠魔法?)
ロノ(見た目怖いから、ついあんな事言っちゃったけど……優しい……かも……)
大蜘蛛「………………オヤスミ。」
  後で知ったことだけど、ぼく達が眠っている間、大蜘蛛さん達が見張りをしてくれていたそうだ。
  皆、人間達に容赦ないけれど、子供のぼく達にはとても優しい保護者だった。
  
  ……ぼくはそんな皆が好きだ。
  ちょっと口は悪いけど優しい皆のおかげで、僕は平和に暮らせている。
  ……でも、勇者の影はそんな些細な幸せさえも奪おうと近づいてきているのだった。

次のエピソード:1-3:正面衝突!

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