ある日、ぼくらの王が殺されて

浮艇 景

1-3:正面衝突!(脚本)

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〇黒
  ────その日の夜遅く。
  ……おい、起きろ。起きろロノ!

〇森の中
ロノ「は!!」
アミー「やっと起きたか、ロノ! やべーぞ、勇者の奴が近くに現れたんだ!」
ロノ「ゆ、勇者……!?」
陸サメのアーク「焦るな。勇者はまだこちらに気づいていないはずだ。そのまま物陰に隠れていれば問題ない。」
アミー「くっ……そのまま闇討ちしてえ……!」
陸サメのアーク「闇討ちを仕掛けるのも手だが、状況次第だな。」
ロノ「で、勇者は今どこに……?」
陸サメのアーク「お前らの肉眼からじゃまだ見えないが、この森に侵入してきたと他の奴らが教えてくれたんだ。」
陸サメのアーク「こうして闇に潜んでいれば、そのうち見えてくるだろう。ほら────」
勇者「……リリ、魔物達はこの辺りにいるんですね?」
リリ「ええ。で、どうするの? 殲滅させるの?」
勇者「そのつもりです。 王を失った魔物達は怒り狂い、罪のない人々を襲いかねませんから。」
勇者「怒りの矛先が僕に向いているそのうちに……」
リリ「……!! アヴニール、後ろ!」
  キンッ!!
  剣と牙がぶつかりあい、
  甲高い金属音が森に響き渡った。
  
  ……ドラカブラ男爵が勇者に背後から闇討ちを仕掛けたのだ。
  男爵が体勢を整えると、再び勇者の首筋に飛びかかる。
  しかし、軽くいなされて鋭い爪は空を切った。
勇者「やはり現れましたね。 あなた達が潜んでいることは、わかっていましたよ。」
ドラカブラ男爵「ケッ、バレていたか。 だが、そんな事はどうでもいい。 貴様、今我々を殲滅するとか言ったな!? 聞き捨てならねえな!」
勇者「ええ。 我々に降伏すれば、これ以上あなた方に危害を及ぼさずに済みますが、そうするつもりは無いんでしょう?」
ドラカブラ男爵「当たり前だ!! 俺達は決して降参しない!! 貴様らを倒すまで、絶対に屈したりしないのだ!!」
勇者「やっぱり、そうですよね。 我々が何度和解を持ちかけても、あなた方は決して応じてこなかった。」
勇者「ずっと昔からそうだったようですね。 それで我々人間とあなた方魔物は長い間争ってきた。」
勇者「どこから始まったかさえわからないこの憎しみは代々受け継がれ、怒りを募らせながら互いに傷つけあってきた────」
リリ「……。」
勇者「────我々の代で、全て終わらせようじゃありませんか。」
ドラカブラ男爵「────望むところだっ!! 俺達が必ず魔王様の無念を晴らし、人間共を駆逐する!!」

〇魔物の巣窟
  そして、ぼく達魔物と人間はぶつかった。
  牙、爪、魔法、毒針、触手、石頭────各々の武器を持ったぼく達の先輩は一斉に勇者に向かっていった。
  でも────…………

〇森の中
大蜘蛛「ウ……」
  (バタリ)
ドラカブラ男爵「魔王様……申し訳、ござい…ま……」
  (バタン)
アミー「お、おい……オレ達魔物は十数体はいたよな? それに対してあっちは勇者と戦えねー女だけだぞ?」
アミー「なのに……なんでオレ達が一方的に叩きのめされてんだよ!?」
陸サメのアーク「くっ……流石勇者といったところだな。 ……仕方がない。逃げるぞ、お前ら。」
ロノ「そ、そんな!! まだ戦っている先輩達がいるのに……」
陸サメのアーク「今、勇者には絶対勝てない。 ここで全員倒されるより、少しでも生き残った方がいいだろう。」
勇者「ふぅ……これで全部でしょうか?」
リリ「いいえ。まだ、いる。 それほど強くはないけど、まだ三体か四体くらいの気配がある。」
リリ「……ほら、そこ。 木陰から出てきて逃げようとしている!」
「げぇっ!! バレてる!!!」
ロノ「どどど、どど、どうしようどうしよう!?」
陸サメのアーク「……オレが行く。 じゃあな、無事に逃げ切れよ、ロノにアミー。お前ら子供はオレ達の希望なんだから。」
アミー「そんな! アークパイセン待っ────」
陸サメのアーク「よぉ、勇者。 オレのダチをよくもいたぶってくれたな。」
陸サメのアーク「次はオレ様が相手だ。 どこからでもかかってきやがれっ!!」
勇者「…………。」
アミー「パイセン達……!! この恩は一生忘れないッス……!!」
  アークさんは、無謀だとわかってて勇者に噛みつこうと向かっていった。
  (ガキャン、ザシュッ!!)
  アークさんがあっけなくやられていくのをぼくは────見ているしかできなかった。
陸サメのアーク「うぐぅっ……早く、逃げ……」
  (バタン)
勇者「…………さて、次は君ですか?」
ロノ「ッ!! (やば!! 逃げ遅れた!!)」
アミー「ロノーッ!!!」
勇者「……やっぱりだ。君はまだ子供だったんですね。しかも種族としても弱い魔物だ。」
ロノ「あ、あうあうぁ……」
勇者「……僕は……本当はこんなことしたくない。 だから、すぐに僕の前から去りなさい。 そうしたら見なかったことにします。」
  ぼくは恐怖で身体がすくみあがっちゃって、その場から動くことができなかった。
勇者「それでも僕の前に立ち塞がるというのなら────」
アミー「まっ……まちっ待ちやがれ!!」
アミー「お、おおい勇者。ロノに、い、一歩でも近づいてみやがれ。 このニンゲンヲ、こ、こっころすぞ!」
リリ「……何を言ってるの?」
勇者「…………彼女は幽霊ですよ。」
アミー「えっ。」
アミー「って、そっそんな事はどうでもいい!! すぐに、その、勇者の命を差し出さないと、この幽霊を燃やすぞ!!」
ロノ「うええぇぇぇん!! 覚悟しろ、勇者! この野郎ー!!」
  勇者は動けないだろうと思って、ぼくは突進を仕掛けた。
勇者「……仕方がない。」
勇者「空間魔法『ミナケーレ』!!」
  勇者は手から光の玉を作り出すと、ぼくに投げつけた。
ロノ「痛くないよっ! そんなの効か────」
  でも言い終わる前に光がぼくを包み込んで、辺りが真っ白に染まる。視界が歪んでいく。
ロノ「あれ? アミー、ぼく…どうなって……」
アミー「ロノが……消えた!? おいてめえ!! 一体ロノをどこにやった!! くそ、燃やしてやる!!」
勇者「君も、すぐあの子と一緒にしてあげますよ────『ミナケーレ』!」
アミー「くそっ……!! うわああああぁぁぁぁぁ!!」
勇者「大丈夫ですか、リリ。」
リリ「私が怪我するわけないでしょう。 既に一回死んでるんだから。」
勇者「まあ、そうなんですけどね。 ……さ、僕達の国に帰りましょう。」

コメント

  • どのモンスターたちも個性的で、セリフが生き生きとしていました! ロノのキャラクターが可愛らしく、あんな見た目なのに、最後にはいとおしくなりました。
    可愛らしいやり取りにほっこりしていましたが、勇者との戦闘シーンでは胸に来るものがありました。異種族が分かり合えるのか、というテーマを含みつつ、重くなりすぎないバランス感覚が素晴らしいです。続きも期待しています。


  • めちゃくちゃ弱いモンスターたちが主人公という設定で、それがまず面白くて、また彼らの個性も強く、会話の掛け合いも楽しいです。最初はコミカルですが、勇者たちと対峙してから、物語が一気に加速し、緊張感が高まりました。勇者側にも事情があり、彼らとモンスターが対峙する複雑な背景も面白いなと。やはり勇者と決着をつけることになるのでしょうか。この先の展開、全く読めないので、続きが楽しみです!

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