23歳アイドル引退します

めぐる

不倫騒動(脚本)

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〇ビルの裏通り
  それじゃあ、ここで。
  送っていけなくてごめんな。ちゃんとタクシーで帰るんだよ
コノハ「はい、ありがとうございました」
  じゃあ、気をつけて
コノハ「あ、あのっ・・・」
  うん?
コノハ「また、会っていただけますか?」
  もちろん。連絡するよ
コノハ「・・・?」

〇ライブハウスのステージ
コノハ「お疲れさまでしたー」
モモ「えっ、コノハのファンサ30人!? すごい、新記録じゃん!」
ヒマ「モモの28人抜いたの!? すっご・・・大変だったでしょ」
コノハ「い、いや、そんな。たまたまですよ。 誕生日近いから、それで」
  最近、コノハいいよなー
  わかる。なんか垢抜けてきたっつーか
  もともと顔は整ってるもんなー。
  最近は良い意味で自信がついてきたのか、オーラ出てるよなぁ

〇空っぽの部屋
監督「そろそろ時間だな。今日はこの辺にしよう」
  お疲れさまでしたー!
監督「コノハ、例の件だが、事務所から正式にOKが出た。君さえよければこのまま話を進めるが」
ヒマ「えっ、なになに?なんの話ー?」
コノハ「実は、Obbiっていうファッション雑誌の専属モデルのオファーがあって」
ヒマ「マジっ!?超すごいじゃん!! その雑誌、アタシ美容院行ったらよく読んでるよ!」
コノハ「あ、でもまだ本決まりじゃないんで、内密に・・・」
メロン「ちょっと、まずいことになってる!」
モモ「ビルの入口に、マスコミがたくさんいて・・・」
ヒマ「えっ?どーゆーこと?」
モモ「あっ!ヒマ、だめ!!」
  いたぞ!「Pass☆Tell」のメンバーだ!
  3階か!
  あそこはスタジオか何かか?
  ここが活動拠点らしいな
監督「──っ 急いでカーテン閉めろ!」
監督「悪い、事務所からだ。 何があった?」
監督「──え?・・・そうか・・・・・・それで?うん・・・」
監督「コノハ・・・最近、写真を撮られなかったか?」
コノハ「えっ?写真とは・・・」
メロン「あぁ、これね」
  大物俳優 麻布壮之助 5股不倫発覚!!
  有名女優A・アナウンサーN・女子大生作家S・グラビアアイドルG・地下アイドルK
マリン「・・・不倫!?」
監督「コノハ、どういうことだ? この男との関係は?」
コノハ「ふ、不倫だなんて。 ただ、何回か一緒にご飯に行っただけです!」
コノハ「ちゃんと、芸能界の方達がよく使う、個室のお店に行きましたし・・・」
メロン「あー、まぁ・・・他の人はホテルから出てきたところとか腕組んでる写真撮られてるけど、コノハのは道端で話してる感じ?」
メロン「なーんか、愛人の数を多く見せたいから、でっちあげられた感あるね」
監督「クッソ・・・ちゃんと確認もしないでこんな記事書きやがって。 とんだとばっちりじゃねえか!」
ヒマ「ってゆーかコノハ、麻布壮之助とどこで知り合ったの? 仕事で関わったことあったっけ?」
コノハ「あ、SNSの、ダイレクトメッセージで・・・」
監督「起きてしまったことは仕方がない。まずは、この状況をどう乗り切るかだな」
モモ「なんとかコノハを安全に帰せないでしょうか。いくら弁明したところで、あの人たちは聞く耳持ってくれないです!」
監督「そうだな。釈明は後で良い。今はあいつらと鉢合わせずに、どうやってここを出るか・・・」
マリン「あっ、このビル裏口ありましたよね? 私こっそり見てきます!」
コノハ「あ、あの、まさかこんなことに・・・ 皆様本当にすみません」
メロン「こういうのって、普通掲載前に事務所に確認来るものだけどなぁ。 匿名だから良いと思ったのかな・・・」
メロン「でもこの写真だけじゃ証拠不十分だから、ちゃんとした場を設けて話せば釈明できると思うな。実際に、事実無根だし」
メロン「この記事も麻布壮之助をバッシングしてるだけだし、芸能界の大先輩で断れなかったんです〜みたいに被害者ヅラしちゃえば?」
メロン「ついでにこの記事出した会社も悪者にできるしね。ほんと、想像だけでこういう書き方するの許せない!痛い目見た方が良いよ!」
コノハ「それは・・・」

〇空っぽの部屋
マリン「だめです、裏口も人だかりが!」
監督「そっか、それならしばらく待機だな。 事務所の方とも連絡とって、どうにか策を練る」
コノハ「申し訳ありません・・・」
ヒマ「いや、むしろコノハは被害者だよ!!」
ヒマ「大丈夫! 後でちゃんと説明すれば、みんなわかってくれるって!だってコノハは悪くないもん」
ヒマ「悪いのは全部、麻布壮之助・・・」
コノハ「釈明は、しません」
ヒマ「えっ!?」
メロン「それは、どういうこと?」
コノハ「私は壮之助さんを悪く言うことはできません」
コノハ「壮之助さんはとても優しく素敵な方です。 一緒にいたいと望んだのは、私の方です」
コノハ「壮之助さんが結婚しているのも、知った上で会っていました」
コノハ「不倫といえば、今の時点ではそうではないのかもしれません。 でも、いずれはそうなっていたと思います」
モモ「それでも、事実はきちんと説明した方が良いんじゃないかな?」
モモ「そうじゃないと、今後の活動にも支障が出ちゃうよ」
コノハ「承知の上です」
監督「コノハ、釈明する気がないのなら、もうこのグループにはいられないぞ。事務所としても契約解除になるだろう」
コノハ「・・・はい、わかりました」
ヒマ「えっ、待ってよ! それって、コノハ辞めちゃうってこと!?」
コノハ「これ以上、皆様にご迷惑おかけするわけにもいきません」
ヒマ「いやいや!なんでそんな奴のために! 相手は既婚者だし、コノハ以外の女の人とも関係あったんだよ?」
コノハ「壮之助さんは、私にたくさんのことを教えてくれました」
コノハ「芸能界の厳しさ、美味しい食事、見たことのない世界、女性として扱われる嬉しさ、息ができないほどの寂しさ、嫉妬・・・」
コノハ「人を、好きになること」
監督「・・・その意志は、変わることはないんだな?」
コノハ「はい」

〇空っぽの部屋
監督「あいつら、いつまでいるつもりだ!?」
モモ「そういえば、このビルの非常口、地下通路に繋がっていませんでした?」
監督「なるほど! そこから少し離れた地上に出れば良いのか!」
監督「それじゃあ、コノハはそのルートで帰ってくれ。俺がおとりになって、入口のマスコミを引きつけておく」
モモ「それなら、私たちは裏口から出て、そっちの人たちを引きつけます!」
監督「そうか。くれぐれも気をつけてな。 コノハのことを聞かれても、何も知らないと言っておけば良い」
メロン「じゃあ私はコノハと一緒に行くね! 1人で帰すのも怖いし」

〇ゆるやかな坂道
メロン「よし、ここら辺まで来れば・・・」
  いたぞ!こっちだ!!
メロン「えっ!?なんでこんなとこまで! コノハ、走るよ!!」
コノハ「は、はい!!」
メロン「こんなこともあろうかと、もう少し先に、タクシー呼んでおいたから♪ そこまでダッシュ!!」
コノハ「はぁ・・・はぁ・・・ メロンさん、なんでそんなに体力・・・」
メロン「この世界、結構体力勝負なところあるからねー!」

〇タクシーの後部座席
メロン「セーフ♪良かった〜撒いたね♪」
コノハ「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ いやほんと、こんなご迷惑を」
メロン「んーん、いいのよ♪」
メロン「きっと周りは『悪い男に引っかかった』って言うだろうけど、私は、そこまで人を好きになるってかっこいいと思うな」
コノハ「メロンさん・・・」
メロン「大丈夫だよ、芸能界じゃこんな事件よくあること」
メロン「麻布壮之助は一生言われるだろうけど、相手の女性たちは、数年後には忘れられてるよ!」
コノハ「そういうものでしょうか」
メロン「そしたらさ、普通の生活ができるね。 どっかの会社に就職して、素敵な人と恋愛して、結婚して、子供産まれて」
メロン「あなたが「コノハ」だったってことは、誰も知らない。 そんな世界で生きていけるよ、きっと」
コノハ「はい・・・」

〇タクシーの後部座席
コノハ「あ、それでは私はここで。 わざわざ家の前まで、すみません」
メロン「あははっ、事務所に経費で請求しておくから大丈夫〜☆」
メロン「それじゃ、ね」
コノハ「はい」
メロン「・・・もう、会うことはないだろうけど」
  お客さーん、どちらまで?
メロン「あ、はーい!えっと、駅方面にー」

次のエピソード:超えない一線

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