助演女優の武器は涙(脚本)
〇神社の石段
沙緒理、女の子は女優でなくちゃダメよ──
ふと頭の中に母の言葉が過ぎる。
佐藤沙緒理「それは私のことが好きだってことなのかな?」
市川大和(特撮ヒーロー)「お…、おう!」
佐藤沙緒理「嘘つき・・・!!!!」
佐藤沙緒理「そうやって言ってまたどうせすぐ居なくなるんでしょ?」
佐藤沙緒理「あの時のように・・・」
だって私の事なんて好きじゃなかったんだから──
市川大和(特撮ヒーロー)「一目惚れだった!!!!!」
いや今そんな事聞いてないからね?!!
市川大和(特撮ヒーロー)「始まりはそうだったけど…… 俺って不良扱いだったじゃん?まぁ、実際そうだったしさ…」
市川大和(特撮ヒーロー)「だから、正直沙緒理とは住む世界が違うなって思ってた」
町が違うだけであと一緒だから!!!
市川大和(特撮ヒーロー)「それでも気になって仕方なくて、かといって学校で話しかける勇気もなくてさ あの時の俺ってほんとにだっせぇわ……」
あの、今日鏡見てきたよね……!!!?
市川大和(特撮ヒーロー)「とりあえず話がしたくて、藤永と仲良さそうだったから理由つけて連絡先聞いた」
市川大和(特撮ヒーロー)「そしたら真面目そうにみえて意外と気さくで共通点とかも多くて、気づいたら完全に好きになってた」
市川大和(特撮ヒーロー)「でも、沙緒理がどんどん自分の中で欠かせない存在になっていくのが怖かった」
うん、私は今目の前に居るあなたの存在が何よりも怖いよ!!!!!
市川大和(特撮ヒーロー)「自分に対する劣等感や、失望されたら嫌だなとかそんな感情に襲われて全てから逃げたくなった……」
私も逃げていいかな?!
今のこの現状から……!!!!!
佐藤沙緒理「何言ってるの?」
佐藤沙緒理「だって他に好きな人が居たから私と離れただけでしょ……」
佐藤沙緒理「勝手に綺麗事にしないでよ!!!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「そう思われても仕方ないと思う…… けど、自分の自信のなさから発した言葉があれだった」
市川大和(特撮ヒーロー)「幼いながらにカッコつけた言葉だったけど心の底から後悔した…」
市川大和(特撮ヒーロー)「だから! こうしてまた俺と会ってくれてありがとう そして本当にあの頃あんなこと言ってごめん」
市川大和(特撮ヒーロー)「でも!あの頃の俺とはもう違う…! だって今の俺は不良じゃないし……!!!」
だいぶ違うね!!
見るからに違うから大丈夫だよ!!!!
市川大和(特撮ヒーロー)「胸を張って沙緒理のそばに居られる! だって、鍛えてますから…!!」
だから何を根拠にそうなったんだよ!!!
どこを鍛えたのか教えてくれ!!
市川大和(特撮ヒーロー)「何より沙緒理の笑顔が忘れられなかった、遅いかな…今頃になって言うのは」
市川大和(特撮ヒーロー)「俺は…俺は…俺は君が好きだ!!! 君の事を大切にする!!」
そんなこと言われても信じられないよ──
まず、何があってこうなったのか私に一から教えよ!!ねぇ!?
市川大和(特撮ヒーロー)「時間はかかるかもしれないけど沙緒理の俺を好きだった記憶が沙緒理の心の中にあるなら、俺が…俺が思い出させる!!」
いや、あなたがあなたであったことを私が逆に思い出させてあげるから?!!
まず普通に考えてよ?!!!
そんなもの残ってる訳ないでしょ──
佐藤沙緒理「ごめん、明日答えを出させて貰ってもいいかな……」
佐藤沙緒理「ちょっと今すぐにっていうのは難しいかも」
市川大和(特撮ヒーロー)「分かった、送ってくよ」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
久々に会った昔好きだったであろう男は
特撮ヒーローのコスプレをして現れた──
計画は駄々崩れだしとりあえず・・・
佐藤沙緒理「なんか、物凄く疲れたなぁー」
佐藤沙緒理「明日なんて言おうかな・・・」
佐藤沙緒理「ちゃちゃっと寝る準備するかぁ……」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
カーテンを閉め忘れたせいか朝日が眩しい──
「沙緒理! さーおーりー!起きなさーい!!」
佐藤沙緒理(んー・・・ なに、お母さん…ってまだ8時じゃん!)
「お友達が来てるわよ!!!」
佐藤沙緒理「え、こんな時間に…誰だった?」
「市川大和って言ってたよ? お母さんはじめましてだった!もうっ!」
……いや、早すぎんか?!?!
佐藤沙緒理(まさかあの姿で家に…!?)
私は慌てて玄関に行きドアを開けた。
〇シンプルな玄関
佐藤沙緒理「ごめん、待たせ……て…?」
市川大和「おはよう、始まりは朝ってよく言うからさ… 昨日は夜遅くまでごめんな」
えーっと……この人はどちら様ですか?
佐藤沙緒理「大和なの…?」
市川大和「昨日の返事聞かせて貰っていいかな」
いや、昨日と変わり過ぎだろうが!!
これは突っ込むべきなのか…突っ込んで欲しいのか?!
佐藤沙緒理「ごめんね、大和のことはっきり好きだと今は言えないけど……」
佐藤沙緒理「これも何かの縁かもしれないし そんな私でもいいって言ってくれるのならもう一度始めから大和とやり直したい」
いやいや!!
それよりあの全身タイツはどうした!?!?
気になる…!!
気になるけどそんなこと聞けない……!!
市川大和「俺は沙緒理が好きだよ、だからそれで構わないしそばにいて欲しい」
私は彼の頬を両手で優しく包みそっと顔を近づけた──
佐藤沙緒理「……後悔してももう遅いからね」
そう言って私は彼にキスをした──
市川大和「……後悔はもう十分してきた」
市川大和「次は取り戻す番だよ」
真っ直ぐ私の目を見つめた彼の頬はほんのり赤く染まっていた。
うん!!!!
やっぱり全身タイツが気になって仕方ない!!
さぁ、楽しい楽しい恋愛ごっこの幕開けね──