復讐女と特撮ヒーロー市川君

昼夜睡

許すことは生きること(脚本)

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〇女の子の部屋(グッズ無し)
  今日は大好きな彼氏と初デート──
  慣れない化粧もヘアアレンジも頑張っちゃうぞ!
  って、ちょっと張り切りすぎちゃったかな…
  服、変じゃないかな…
  ふっ…ぶはっ!ははっははははは!!
  んなわけあるか!
  まず冒頭から間違ってんだよ!!!
  そんなキラキラ青春ストーリーは
  残念ながらここでは始まりません──
  失望させてしまった様なら申し訳ございません……
  でも!安心してください!!
  マイナススタートのものはプラスにしかならな…
  ピィィンポーン♪
  さてと、戦いのゴングが鳴った──
佐藤沙緒理(さすがに全身タイツ…じゃないよね…?)

〇シンプルな玄関
佐藤沙緒理「おはよう!じゃあ行きますか!」
市川大和「おはよう、今日むちゃくちゃ暑いな」

〇電車の中
  ガタンゴトンガタンゴトン──
  人の多さと熱気で柔軟剤、香水、煙草、お弁当の香りや体臭などが各々の主著をしながら車内で対立しあっている。
市川大和「電車って移動式香り付きサウナだよね」
佐藤沙緒理「う、うん?」
  うん、言いたいことは分かるんだけどそんなもの誰が得するんだよ!!
  あれ、でもこれって以心伝心!!?
市川大和「こっちのが多分楽だと思う…」
  優しく私を自分の胸の中へ引き寄せた──
佐藤沙緒理(ドキッ…あれ、今………!!)
佐藤沙緒理(夏でも悪寒ってするもんだよね……)
  彼の胸元から香るハッカの香りが
  私の心拍音を落ち着かせた──
佐藤沙緒理「後でアイスかなんか食べる?」
市川大和「いいね、食べようか」
佐藤沙緒理「…とりあえず冷たい飲み物飲みたいね!」
  思った以上…いや!
  それ以上に会話が盛り上がらない……!!
  まずそれ以前にする話が…ないっ!!!
市川大和「もうすぐ着くな……」
佐藤沙緒理「そうだね!!」
市川大和「近くに映画館あるし映画でも見る?」
佐藤沙緒理「お、いいね!そうしよか!」
  そう!!
  なんてったって映画は話をしなくてもいい!!!
佐藤沙緒理「大和なにか見たい映画とかある?」
市川大和「…マ……ダー……え……」
佐藤沙緒理「ん?なんて言った……?」
市川大和「いや、やっぱりいいや… 沙緒理が観たい映画を一緒に観ようよ」
佐藤沙緒理「じゃあねー、これみたいかも!」
市川大和「じゃあそれに決定だね」

〇超高層ビル
  今だけはドラキュラの気持ちが分かるような気がする──
  それぐらい太陽が鬱陶しい。
佐藤沙緒理「ごめん、ちょっとあそこの椅子座ってもいいかな?」
市川大和「沙緒里大丈夫? 俺冷たい飲み物買ってくるよ…!!」
佐藤沙緒理「ありがとう……」
市川大和「そこ座って待ってて!!」
佐藤沙緒理(人酔いしたかな・・・)
  ほんとにタイミングが悪すぎる。
???「あっちぃ!まじ暑すぎ!!」
佐藤沙緒理(うるさいなぁ、なんなのこの人達・・・)
???「ねぇ!ねぇねぇ!! こーんな暑いのにその格好暑くない?」
「やっば!暑苦し!!夏なんだしもっと出してこうぜ?」
  うざ…まず肌のことや日焼け後の手入れを考えるとこの方が楽なんだっつーの!!
  女をなんだと思ってる訳こいつら・・・
佐藤沙緒理「ごめんなさい、ちょっと気分が悪くて……」
???「え!じゃあ、なんなら一枚でも脱いじゃった方が楽になることね?」
「気分悪いなら空気の入れ替えしなきゃ!って俺何言ってんだろwww」
佐藤沙緒理(つまらないからとっとと黙れ・・・)
佐藤沙緒理「いや、大丈夫ですからほんとにもうすぐ彼氏くるんで……」
???「え、そんな体調悪い彼女放置するとかまじないわー!なぁ?!」
「そうそう、俺らが……!!!」
佐藤沙緒理「あっ!大和おかえり!! 飲み物ありが…と……う……?」
  彼は無言で飲み物を渡すとどこかへ行こうとした──
  え、待って…ちょっとどういうこと?!
佐藤沙緒理「や、やま…ねぇ、大和……!!!!」
  彼は振り返ることなく去っていった──
???「おいおい!あれ彼氏?最低だな!? あっちに車停めてるし冷房効いてるからおいでよ!!!」
佐藤沙緒理「もうっ!やめてください!!!!」
「ちょ、なにそれ可愛い!!! もっかい今の言ってみてよ!もーいっかい!もーいっかい!!」
???「そんな急に立つと危ないよぉー? ほらほら、落ち着いて……」
  触るな触るな触るな触るな──
  ねぇ、大和…どうして置いてくの??
佐藤沙緒理「ほんっっと最低!!!!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「僕、さぁぁあんじょぉぉおう!!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「沙緒里……!待たせたな!!」
  ………え?
  どういうこと……??
???「はぁぁああああぁあ!? なんだこいつ、気持ちわりぃ!! てか、ダッさ!!」
「邪魔すんじゃねぇよ変態…!!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「ダサいのはお前らの方だ!!」
  言葉は同じだけど違う意味でね…!!
市川大和(特撮ヒーロー)「こんなことをして何が目的なんだ!!」
???「お前こそなんだよふざけた格好しやがってよ、おら!こいよ!変態!!」
  …待って、確かに全身タイツで見た目弱そうに
  見えるかもしれないけど──
  元は学校で知らない人は居ないぐらい有名な不良で、教室の壁に空けた穴の名はギロチンホールと呼ばれていたような男だ。
市川大和(特撮ヒーロー)「さぁ、裁判を始めようか!!」
???「はぁぁぁああぁあ!!? ちゃんと日本語話せよ気持ちわりぃ!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「お前らは沙緒里を困らせ怖がらせた、そして周りにも迷惑をかけている、そして何より重罪なのは僕の沙緒里に触れようとした!」
市川大和(特撮ヒーロー)「だから僕は君たちを・・・・・!!」
  待って、大和!お願いやめ………!?
市川大和(特撮ヒーロー)「抱きしめぇぇええええぇる!!!」
???「ぐはぁぁぁああぁあぁっ………!!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「さぁ、そして己の罪を数えろ!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「自分が何をしたのか、何が悪かったのか、誰に迷惑をかけたのか…しっかり考えろ!!」
???「やめろぉ…ぐぅるじぃぃいいい!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「人間は過ちを犯す生き物だ、長い人生の中で間違えることだって時にはあるだろう!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「だから僕は君達を・・・・・・」
市川大和(特撮ヒーロー)「許すっ……!!!!!」
  そう言い彼は二人を離し、彼等は地面に倒れ込んだ──
???「やっば…早く行こうぜ…くそぉ!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「沙緒里、大丈夫だったか?」
  パチン!!
佐藤沙緒理「怖かったんだからね!何してたの!!」
佐藤沙緒理「でも、助けてくれてありがとう・・・」
市川大和(特撮ヒーロー)「ごめんな、よしよし・・・」
「お兄ちゃんすごぉぉぉおおおい!!」
「スーパーヒーローだぁああ!!!」
「きゃー!ちょっとかっこいいかも!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「おーっと、困った人々が僕を呼んでいる! それでは諸君、しばしの別れだ!」
市川大和(特撮ヒーロー)「シュパァァァあぁット!!」
「あー、待ってよぉぉお〜!!」

〇超高層ビル
  10分後…
佐藤沙緒理「おかえりなさい!!」
市川大和「ただいま、映画観なきゃな……」
  私は彼のTシャツの袖を掴んだ──
佐藤沙緒理「ねぇ、お腹空いた… それもあるけど大和のこともっとちゃんと知りたい、知らないことが多すぎるから……」
市川大和「沙緒里、さっきは無言で離れてごめんな」
佐藤沙緒理「いいよ、もう気にしてないし!」
市川大和「マスカライダーエックス・・・」
  ……ん??
市川大和「俺が見たかった映画…好きなんだこれ」
  やっぱり特撮ヒーロー好きなのね!!!
佐藤沙緒理「じゃあ今度それ見よっか!!」
市川大和「いいの?興味無いっしょ絶対…」
佐藤沙緒理「確かにそうかもしれないけど、大和を知ることに繋がるでしょ?」
佐藤沙緒理「興味を持つか持たないかも見てから決めることだしね!!」
市川大和「沙緒里、ありがとう・・・」
  まぁ、興味を持つことはないけどな!!!!
佐藤沙緒理「いえいえ!こちらこそだよ!!」
  話によるといつも全身タイツは持ち歩いているようだ──

次のエピソード:母は偉大なるエスパー

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