エピソード1(脚本)
〇ファンタジーの学園
昼間のアカデミーの敷地内に、人の形をした赤黒い塊がある。
元は人だったそれは、かなりの火力で焼かれたのが見て取れた。被害者は朝の出勤中に、突然発火し、そのまま亡くなったらしい。
ジョマ「こんがりですね」
遺体を前にして、ジョマは不謹慎な言葉を使う。あまり褒められたものではない。僕はため息をついて、ジョマをたしなめる。
ロク「不謹慎だよ」
ジョマ「すみません」
反省しているとは思えない表情で、流すように言いながら、ジョマは遺体のそばに屈み、手をかざした。
ロク「何するの?」
ジョマ「魔力紋が無いか、チェックです」
僕の問いかけに、ジョマは答えると、ニヤニヤしながら続ける。
ジョマ「あれば本部の奴らを叩けますから、ぐへへ」
僕は呆れつつ、ジョマを待つ。念入りにチェックしているらしく、時間がかかっていた。
ジョマの本部嫌いは相当なもので、何とかミスが無いか見つけるのに必死になっている気がする。
僕はレストルアの話を思い出した。被害者が誰なのか、どういう状況だったのか等々、全く確認していないらしい。
駆けつけて、魔力紋を確認して、無かったらすぐさま撤退。僕たち特殊捜査室に丸投げ。
初動が大事というのに、中々ずさんだと思う。
まぁ、レストレア達ハウンドは、魔力紋をかぎつけて、犯人を追い、捕縛するだけ。
被害者が誰なのか、状況がどうだったのか、そんな物必要ないのも確かではあるけど、それにしたって。
文句を並べても意味がない。僕は何をしなければいけないか、頭の中で整理する。
被害者の身元を確かめる。不審者がいたかどうかも確認しないと。いたなら通り魔の可能性も。
いなかったなら、交友関係を確認して、動機がある人間を見つけて。
発火の原因も特定しなければ。それによって、事故なのか殺人なのかわかるかもしれない。
ロク「これを二人でやるのか」
僕はため息まじりで口を開く。ハウンドは協力してくれる気配はない。僕とジョマだけだ。
ジョマ「ない!」
ジョマが突然声をあげる。遺体を隅々まで確認したけど、魔力紋はなかったらしい。
ロク「やっぱり魔力紋は残ってないかぁ」
ジョマ「意味がわかりません! 気が狂いそうです!」
ジョマが頭を抱えて、悶える様に叫ぶ。魔力紋が残っていないという事は、魔法は使われていないという事。
それなのにこの火力だ。僕は赤黒い遺体を見やる。
ロク「ガソリンとか、灯油を使えば、これぐらい」
ジョマ「なんです? がそ? とー・・・・・・なんです?」
僕がつい口に出してしまった言葉に、ジョマが反応する。急いで「何でもない、気にしないで」と微笑んで見せた。
この異世界には、そんなものは無い。しかも魔法が発達している。そのせいで科学技術が全く発展していない。
よって燃料なんてないし、ましてやライターやマッチなんてないから、魔法を使う以外に、点火する術がない。
そんな中で、魔法を使った時に残る魔力紋がないのだ。
ロク「もしこれが殺人なら、不可能犯罪じゃないか」
犯人は追われる事もないし、何の苦も無く、これからも以前と同じように、生きていくのだ。
人を殺しておいて。何の報いも受けないなんて、許せない。犯人がいるなら捕まえたい。
そういえば、僕を殺したあいつは、ちゃんと捕まっただろうか。事故に見える状況だったから、もしかしたら。
僕は、異世界転生した時の事を思い出す。僕は誰かに殺されて、この異世界に転生してきたのだ。
リアルな口調で表現されていて情景がイメージしやすかったです。斬新で冷静な「こんがりですね」の一言とそれに対するツッコミのシーン、不謹慎ながらも笑いました。
確かに現世と異世界では観点が違いますよね!
異世界では魔法が主流、でも現世には魔法は無いからこその観点で物事を見ることができますよね!
お互いが理解し合うのは難しそうですが、合わさったらとてつもない力になりそうです!
主人公の性格やその世界観などがとてもよく伝わってくる第一話ですね。これからの展開や物語の帰結がとても楽しみになってきます。