自宅内生存少女(インドア・サバイバル・ガール)

中村朔

第4話 台風の夜に(脚本)

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〇テントのある居間
  ――ゴソゴソ
晴菜ハル「ラジオ、どこにしまったっけ・・・」
  ――カタッ
晴菜ハル「?」
晴菜ハル「あっ、これ・・・ あのときのチョコレートの箱だ・・・」

〇森の中
  ――6年前
穂高亜樹「僕たち遭難しちゃったのかな・・・」
晴菜ハル「落ち着いて。まずは持ち物の確認。 持ってる物を見せて」
穂高亜樹「・・・タオルと双眼鏡」
晴菜ハル「私は懐中電灯とチョコ。水分がない。 さっきの湧き水のとこに戻ろう」
晴菜ハル「あそこは周囲が見渡せるから、 体力を温存しながら助けを待つ」
晴菜ハル「大丈夫。パパが絶対見つけてくれるから」
穂高亜樹「う、うん」

〇森の中
  ――ひゅううう
穂高亜樹「真っ暗だね・・・」
晴菜ハル「怖い?」
穂高亜樹「・・・うん」
晴菜ハル「怖いときは、自分が一番信じてるものを 思い浮かべるといい。 そうすれば怖くなくなる」
晴菜ハル「・・・って、パパが言ってた」
穂高亜樹「信じてるもの? ・・・ホントだ。 怖くなくなってきた」
晴菜ハル「何を考えてたの?」
穂高亜樹「ハルのこと」
晴菜ハル「えっ?」
穂高亜樹「ハルは何でも知ってるし、 何でもできるから、 いっしょにいたらきっと大丈夫だって」
穂高亜樹「ハルは何考えてた?」
晴菜ハル「・・・同じこと」
穂高亜樹「え?」
晴菜ハル「ううん、何でもない。 チョコレート食べよう」
穂高亜樹「もぐもぐ・・・なんか変な味だね。 お腹がポカポカして・・・ひっく」
晴菜ハル「あ、これウイスキーボンボンだ」

〇テントのある居間
晴菜ハル「亜樹、パパが見つけてくれたときは 酔って寝てたっけ・・・ふふ」
晴菜ハル「しまった、こんなことしてる 場合じゃない。ラジオ・・・あった」
  ――カチッ
「――大型で強い台風7号は勢力を強めて 今夜にも関東地方に上陸する見込みです」
晴菜ハル「台風の準備、しなくっちゃ」

〇学生の一人部屋
穂高亜樹「俺といっしょに、修学旅行に行こうぜ!」
穂高亜樹「・・・なんかキャラじゃないよな」
穂高亜樹「気分転換に、修学旅行でも行ってみない?」
穂高亜樹「・・・軽すぎるか」
穂高アキ代「さっきから1人で何やってんだい」
穂高亜樹「おかーーん! だから黙って部屋の中に入んなよ!」
穂高小鳥「わかった! ハル姉ちゃんを修学旅行に誘う練習だ!」
穂高亜樹「小鳥もだよ!」
穂高アキ代「ハルちゃん、参加するかねぇ」
穂高亜樹「学校は相変わらず来ないけど、 修学旅行って雪山でスキーだし、 来るかもしれないかなって・・・」
穂高アキ代「ま、誘ってみな。断られたら どうしようとか、うだうだ悩まずに」
穂高亜樹「う」
穂高小鳥「当たって砕けなよ!」
穂高亜樹「砕けるのかよ!」
穂高アキ代「じゃあ、これ今日の分の物資。 ついでに台風の準備、手伝ってきな」
穂高亜樹「台風?」
穂高小鳥「知らないの? 今夜は台風だよ!」

〇川のある裏庭(発電機あり)
穂高亜樹「うおっ! ホントだ、風強いな・・・ あっ、ハル!」
穂高亜樹「これ! 今日の分の物資!」
晴菜ハル「え!? 何!?」
穂高亜樹「今日の分の! 物資!」
晴菜ハル「ありがと! 台風の準備、手伝って!」
穂高亜樹「おう! あ、あのさ!」
晴菜ハル「何!?」
穂高亜樹「・・・い、いっしょに、 修学旅行に行かないか?」
晴菜ハル「何!? 聞こえない!」
穂高亜樹「お、俺といっしょに・・・」
晴菜ハル「いっしょに?」
穂高亜樹「・・・台風の準備しない?」
晴菜ハル「それを頼んだんだけど」
穂高亜樹「お、おう・・・うう、俺のヘタレ・・・」

〇テントのある居間
晴菜ハル「ありがと、おかげで畑の台風対策、 間に合った」
穂高亜樹「畑があると大変なんだな・・・」
晴菜ハル「あれ? 物資の中にお弁当が入ってる」
穂高亜樹「弁当? おかんからの差し入れじゃね?」
晴菜ハル「2人分」
穂高亜樹「え? 俺の分も?」
晴菜ハル「せっかくだから、いっしょに食べよう」
穂高亜樹「そうすっか。腹減ったし」
穂高亜樹「おうっ! 家の中にもけっこう 隙間風入ってくるのな・・・」
晴菜ハル「古い家だから。 でも大丈夫、いざとなったらテントに入る」
穂高亜樹「家の中にテントあるもんな。 キャンプみたいで楽しそうだな」
穂高亜樹「それに、台風ってだけでも ちょっとワクワクするし」
穂高亜樹「子供の頃、窓際に布団を敷いて 外見たりしなかった?」
晴菜ハル「・・・した。今日もやってみよう」
穂高亜樹「やってみる?」
晴菜ハル「縁側にテントを寄せて、 台風を見ながらお弁当を食べよう」
穂高亜樹「それ、楽しそうだな」
晴菜ハル「そして食後に、アレを観よう」
穂高亜樹「アレ?」

〇荒廃したショッピングモールの中
ゾンビ「うおおおぉぉ・・・」
ジョージ「くそ、ゾンビめ! 近づくな!」
  ――バキューン! バキューン!
キャロル「もういや! 私は逃げるわ!」
ジョージ「キャロル!? 待てッ! 危ないッ!」
キャロル「えっ? きゃああああ!」

〇テントのある居間
穂高亜樹「きゃああああ!」
晴菜ハル「亜樹、うるさい」
穂高亜樹「いや、だってさあ! ほら、内臓があんなに・・・ひいいいい!」
晴菜ハル「これで内臓に慣れれば 魚もさばけるようになるかもしれない」
穂高亜樹「そうかもしんないけど! ていうかなんでこの状況でゾンビ映画?」
晴菜ハル「ゾンビ映画にはサバイバルの要素が たくさん詰まってる。 こんな素晴らしい映画は他にない」
穂高亜樹「わざわざタブレットにダウンロード してあるなんてどんだけ好きなんだよ」
晴菜ハル「まだたくさんある。これ続編のほうが 面白いから、続けてみよう」
穂高亜樹「まじかよ」
晴菜ハル「あれ? ・・・充電切れちゃった」
穂高亜樹「ホッ・・・ハル、いつも1人で こんなのばっか見てるの?」

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