自宅内生存少女(インドア・サバイバル・ガール)

中村朔

第3話 対決! 釣り仙人(脚本)

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〇川のある裏庭(発電機あり)
釣仙人「あの魚を釣りあげた者が今日の勝者・・・ よいな、小娘! 小僧!」
晴菜ハル「望むところ!」
穂高亜樹「え? 俺も数に入ってる?」
晴菜ハル「亜樹、さっき教えたことを忘れないで。 あとは任せる!」
穂高亜樹「え? あ、おう」
釣仙人「では、いざ尋常に・・・」
「勝負!」
  何でこんな事になってるかと言うと・・・

〇川のある裏庭(発電機あり)
穂高亜樹「ハルー、今日の物資持ってきたぞー」
晴菜ハル「ありがと。 今日の野菜はそのカゴに入ってる。 帰りに持っていって」
穂高亜樹「あいよ。今日は何やればいい?」
晴菜ハル「その竹を3メートルくらいの長さに切って」
穂高亜樹「おっけ」
  毎朝ハルの家に物資を運ぶのが
  すっかり日課になった。
  休みの日はそのままハルの作業の手伝いを
  する。今日は土曜日、手伝いの日だ。
穂高亜樹「ところでハル、 さっきからやすりで何削ってんの?」
晴菜ハル「ルアー」
穂高亜樹「ルアーって、釣りのルアー?」
晴菜ハル「そう」
穂高亜樹「ルアーって作れるのか・・・ しかし何でまた急に」
晴菜ハル「干してた魚を猫に取られた。 補充する必要がある」
穂高亜樹「何もルアーから作らんでも」
晴菜ハル「作れるものは作る。それが家のルール」
穂高亜樹「じゃあ俺が切ってる竹って」
晴菜ハル「釣り竿」
穂高亜樹「・・・やっぱり」
  俺たちが住む燕町(つばくろちょう)は
  海に面した田舎町だ。
  俺とハルの家は海に近く、
  家の敷地が川に面している。
  だから庭から釣り糸を垂らして
  釣りができるのだ。
穂高亜樹「釣りかー、昔、ハルの親父さんに 教えてもらってたまにやったけど」
穂高亜樹「なんか俺、苦手だったんだよな」
晴菜ハル「どうして?」
穂高亜樹「待ってるだけで退屈だし、 それに釣りって運だろ?」
晴菜ハル「運じゃない。あれは魚との駆け引き」
晴菜ハル「魚は必死。生死がかかってるから。 でもこちらも同じ。生活がかかってる」
晴菜ハル「だから持てる技量を駆使して戦いを挑む。 それを疎かにする者には栄光は得られない」
穂高亜樹「・・・釣りの話だよね?」
晴菜ハル「生きることはサバイバル。それを あんなに実感できるものは、他にない」
穂高亜樹「そ、そうか」
晴菜ハル「その竹にリールと糸をつける。 亜樹はそれを使って」
穂高亜樹「え?」
晴菜ハル「今日は1週間分の干物を作る。 2人でがんばろう」
穂高亜樹「俺もやるの!?」

〇川のある裏庭(発電機あり)
穂高亜樹「てかこの川、何が釣れるの?」
晴菜ハル「ここは海に近い。 海水と淡水が混ざった汽水域」
晴菜ハル「比重の重い海水は下に沈んでる。 釣りたいのは海水魚だから、川底を狙う」
穂高亜樹「海の魚が釣れるんだ」
晴菜ハル「メバル、ハゼ、ボラあたり。ルアーは使わないから、ジグヘッドに餌を付けてあげる」
穂高亜樹「ジグヘッド?」
晴菜ハル「重りがついた針。セットしたら あの岩場の付近に投げてみて」
  ――ポチャン
晴菜ハル「仕掛けが沈んだら軽くシャクって魚を誘う」
穂高亜樹「シャクる?」
晴菜ハル「アタックが来たらしばらく待って、 完全にかかったら一気に合わせる」
穂高亜樹「アタック? 合わせる? 言ってることがわかんねえ!」
晴菜ハル「あ、引いてる!」
穂高亜樹「え? えいっ! ・・・ あれ? 何もついてない」
晴菜ハル「餌だけ取られてる。食いついた瞬間に 竿をあげて、ちゃんと針にかけて」
穂高亜樹「それが合わせるってこと?」
晴菜ハル「そう。もう1回やってみて。 私もいっしょに釣る」
穂高亜樹「お、おう」
  ――ポチャン
穂高亜樹「ん? また引いてる? これ引いてるの かな? さっぱりわかんねえ!」
晴菜ハル「餌をつついてる状態・・・ 今! 竿を上げて!」
  ――パチャッ
穂高亜樹「釣れた! なんかちっちゃいけど」
晴菜ハル「逃がそう。食べれるサイズじゃない。 食べるもの以外は自然に帰し・・・あっ」
穂高亜樹「ハルの竿も引いてる?」
  ――パチャッ
穂高亜樹「でかい!」
晴菜ハル「これは十分。美味しくいただこう」
穂高亜樹「しかし、家の庭で釣りなんて、 都会じゃ考えられないな」
晴菜ハル「これも田舎のいいところ」
穂高亜樹「だな・・・ あ、川向かいのおじいさんも釣りを始めた」
晴菜ハル「!」
釣仙人「ふん、小娘。 相変わらずみみっちい釣りをしておるのう」
晴菜ハル「・・・釣り仙人!」
穂高亜樹「え? 知り合い? ていうか何だよ その2chのコテハンみたいな名前は」
晴菜ハル「私と同じ、 この川を主戦場としてるおじいさん」
晴菜ハル「たまにいっしょになるけど、 勝ったことがない」
穂高亜樹「ハルが勝ったことないって・・・」
釣仙人「どれ、そろそろ釣るとするか」
  ――パチャッ
  ――パチャッ
  ――パチャッ
穂高亜樹「すげー・・・入れ食いってやつ? ていうか俺たち全然釣れなくなったぞ」
晴菜ハル「撒き餌のせいもある。 仙人は餌を撒いて魚を呼んでる」
穂高亜樹「だからこっちに魚がいないのか」
晴菜ハル「卑怯な手段じゃない。 それぞれのスタイルがあるだけ。私は 私のスタイルで戦う。亜樹、がんばろう」
穂高亜樹「お、おう!」

〇川のある裏庭(発電機あり)
穂高亜樹「・・・と言ったものの、ぜんぜんダメだな」
晴菜ハル「手強い・・・」
釣仙人「これくらいにしておくか・・・ん?」
晴菜ハル「・・・?」
穂高亜樹「どうした?」
晴菜ハル「・・・魚の気配が消えた」
穂高亜樹「あっ、なんか跳ねた! ていうか、今のでかくなかった!?」
晴菜ハル「シッ! あれは・・・シーバス!」
穂高亜樹「シーバス?」
晴菜ハル「スズキ。 この辺までくることは滅多に無いのに」
釣仙人「あれはワシがいただく!」
晴菜ハル「亜樹、竿をあげて。 ルアーに変えてシーバスを狙う!」
穂高亜樹「え?」
釣仙人「あの魚を釣りあげた者が今日の勝者・・・ よいな、小娘! 小僧!」
晴菜ハル「望むところ!」
穂高亜樹「え? 俺も数に入ってる?」
晴菜ハル「亜樹、さっき教えたことを忘れないで。 あとは任せる!」
穂高亜樹「え? あ、おう」

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