第2話 カレーライスの日(脚本)
〇川のある裏庭(発電機あり)
穂高亜樹「えーと、コレ、おかんから預かってきた 味噌と塩と、あと珈琲豆」
晴菜ハル「ありがと。 代わりにこの野菜を渡しておいて」
穂高亜樹「物々交換してんのか・・・」
晴菜ハル「野菜は作れるし、魚は裏の川で 釣れるけど、他は手に入らないから」
穂高亜樹「今日は何を手伝えばいい?」
晴菜ハル「畑を拡張するから、開墾を」
穂高亜樹「村かよ」
俺は穂高亜樹、
怪我で野球をやめて暇になった高校生。
今は幼馴染のハルの手伝いをしている。
こっちがその幼馴染の晴菜ハル。
何でも自分でこなすサバイバル少女だが、
今は引きこもりで学校に行ってない。
何で引きこもってるかは・・・
晴菜ハル「フギャアアア!」
穂高亜樹「何だよ急に!?」
晴菜ハル「いつも畑を荒らす猫がいたから威嚇した」
穂高亜樹「威嚇て」
晴菜ハル「私は向こうで開墾してるから、 ここ見張っててくれる?」
穂高亜樹「わ、わかった」
晴菜ハル「猫が来たら威嚇して」
穂高亜樹「威嚇ってどうすりゃいいの・・・」
晴菜ハル「さっきの私みたいに鳴けばいい」
穂高亜樹「フ、フギャアアア!」
晴菜ハル「それは驚いてる声。 威嚇の声はフギャアアア!」
穂高亜樹「違いがわかんねえ!」
俺はあんまり役に立ってないかも
しれないけど・・・
〇川のある裏庭(発電機あり)
晴菜ハル「亜樹、ありがと。 最後のほうの威嚇はよかった」
穂高亜樹「叫びすぎて疲れた・・・あ、すごいな。 こんなたくさん栽培してんだ」
晴菜ハル「きゅうり、ピーマン、トマト、夏野菜は たいていある。今日は夏野菜のピザを作る」
穂高亜樹「ピザ! でも、電気とガス 止まってるんだろ。どうやって?」
晴菜ハル「かまどを作ろう」
穂高亜樹「・・・かまどって作れるもの?」
晴菜ハル「耐火レンガはあるから、 それを使って・・・」
ピンポーン。ピンポーン。
晴菜ハル「!」
穂高亜樹「誰か来た?」
晴菜ハル「・・・3秒間隔の2回。担任だ」
穂高亜樹「先生?」
晴菜ハル「なぜか定期的にやって来る」
穂高亜樹「そりゃ、学校行かなかったら来るだろ」
晴菜ハル「亜樹、お願い・・・代わりに出て!」
穂高亜樹「え!? 俺が?」
〇一軒家の玄関扉
――ガラガラ。
先生「お、今日は出て来た・・・穂高?」
穂高亜樹「あ、ども」
先生「何でお前がって隣だっけ。晴菜は?」
穂高亜樹「いるんですけど・・・」
先生「いつも居留守なんだよな」
穂高亜樹「ハル、全然学校行ってないんですか?」
先生「一学期はほとんどな。 レポートで最低限の単位は取ったけど、 いつまでも特別扱いはできないからなぁ」
穂高亜樹「あのー、何ていうか、あいつ、 いい加減な奴じゃないから」
穂高亜樹「家でも遊んでないし、 むしろきちんと生活してるし。 だから、なんか理由があると思うんですよ」
先生「うーむ」
穂高亜樹「もうちょっとだけ、 様子見てあげてもらえないですか?」
〇川のある裏庭(発電機あり)
穂高亜樹「先生、帰ったぞ」
晴菜ハル「・・・あ、ありがと」
穂高亜樹「別に、あれくらい・・・」
晴菜ハル「あ、あのね・・・」
ピンポーン。ピンピンピンピンポーン!
晴菜ハル「!」
穂高亜樹「あれ? また誰か来た」
晴菜ハル「・・・ごめん、 今日はピザじゃなくてカレーになった」
穂高亜樹「えっ?」
???「あ〜き〜。ひさしぶりじゃん」
穂高亜樹「その声は・・・」
晴菜ハル「お姉ちゃん!」
穂高亜樹「えっ! 桜子姉ちゃん!?」
桜井桜子「おー、野球少年。メンタルほっそいくせに 体だけでっかくなっちゃって。 あ、野球に挫折して都落ちしたんだっけ?」
穂高亜樹「ぐはっ!」
この人は晴菜桜子。ハルのお姉さんだ。
あ、今は結婚して桜井桜子、だっけ。
言葉の切れ味は鋭く、アウトドアは
好きじゃない。姉妹でもハルと真逆だ。
晴菜ハル「またお義兄さんとケンカしたの?」
桜井桜子「ま、ちょっと。2、3日こっちにいるわ」
晴菜ハル「いつも急すぎる」
桜井桜子「ごめんて」
晴菜ハル「私は電気とガスが使えるうちに 色々やっておくから、 亜樹、お姉ちゃんの相手をお願い!」
穂高亜樹「え? 電気開通したの?」
桜井桜子「この家の電気とガス、 アタシが止めてんだけどさ、 帰るときは開通させんの。不便だから」
穂高亜樹「・・・そもそも、 どうして止めてるんです?」
桜井桜子「あの子、引きこもってるじゃん。 やめさせようと思って止めたんだけど」
桜井桜子「音を上げるどころかサバイバル知識 あるから生活できてんだよね」
穂高亜樹「ですね・・・」
桜井桜子「だから今は、 ゆるーい意地の張り合いみたいな感じ? あ、亜樹。このバッグ家に運んどいて」
穂高亜樹「何ですかこれ?」
桜井桜子「ブラとパンツ、それにパジャマと」
穂高亜樹「具体的に言わなくていいですよ!」
桜井桜子「あとハルへの差し入れ」
穂高亜樹「電気止めてるのに 差し入れするんですね・・・」
桜井桜子「亜樹、ハル手伝ってんの?」
穂高亜樹「まあ、野球やめて暇だし」
桜井桜子「あんたハルのこと好きだもんね」
穂高亜樹「なんでみんな知ってんの!」
桜井桜子「知らないのハルくらいでしょ。 あの子鈍いから」
穂高亜樹「ダダ漏れ・・・」
晴菜ハル「何がダダ漏れ?」
穂高亜樹「何でもない!」
桜井桜子「それ、今日の宿泊代。 服の下に米とお菓子が入ってる」
晴菜ハル「ご飯はいつも通りカレー?」
桜井桜子「もち」
晴菜ハル「了解」
桜井桜子「ハル、まだ家を出る気ない?」
晴菜ハル「まだ」
桜井桜子「あっそ。好きにしな。 で、今日のカレーは?」
晴菜ハル「夏野菜カレー。かまどを作るから、 それで焼きカレーにする」
桜井桜子「イイね!」
晴菜ハル「台所で作業してくる。 亜樹、かまど作るの任せてもいい?」
穂高亜樹「や、やってみる」
穂高亜樹「えーと、かまど、かまど・・・ どう作りゃいいんだ?」
〇川のある裏庭(発電機あり)
晴菜ハル「カレーできた。亜樹、かまどは・・・ あっ、いい匂いがする」
穂高亜樹「いちおうできた。手探りでやったから、 うまくできたかわかんないけど」
晴菜ハル「!」
穂高亜樹「えーと、まず耐熱レンガを コの字に積み上げて、」
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