姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

第2話 突き付けられた剣先(脚本)

姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です

朝永ゆうり

今すぐ読む

姫様は冷徹王子の溺愛をご所望です
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇洋館の廊下
  ジーク王子の部屋へ向かった
  カレンとハンナ。
  しかし・・・
ウェルナー(専属護衛)「・・・・・・」
「じーーーー」
カレン(忘れてた・・・ジークに会う前に、彼をどうにかしないといけなかった!)
ハンナ「ひ、姫様、ここは策を練り直した方が」
ハンナ「そもそも、柱の陰から覗き見なんて・・・」
カレン「これは覗きじゃない! タイミングを伺ってる・だ・け!」
ハンナ「何のタイミングです!?」
カレン「それは・・・ええと・・・その・・・」
ハンナ「何にせよ、あの凄腕護衛のウェルナーさんを説き伏せる策を・・・」
カレン(彼、石頭なのよね・・・)
カレン(よーし、ここは!)
  ガチャリっ!!
ハンナ「ひ、姫様何を・・・っ!!」
ウェルナー(専属護衛)「誰だ!」
カレン「あら、ごめんなさい。ちょっと手が滑っちゃって」
カレン「これ、片付けといてくれる?」
ハンナ(姫様、古典的すぎるし、それに・・・)
ウェルナー(専属護衛)「おい、そこのメイド!!」
ハンナ「びくん!!」
ウェルナー(専属護衛)「これ、片付けておいてくれ」
ハンナ(ですよねー)
ハンナ「は、はい、ただいま!」
カレン(しまった! ハンナってメイドだったんだった!!)
ウェルナー(専属護衛)「・・・」
カレン「はぁー」
カレン「チラッ」
ウェルナー(専属護衛)「プリンセス、まだ何か?」
カレン「あの・・・えっと・・・」
カレン「ジークに・・・旦那に会いたいんだけど」
ウェルナー(専属護衛)「ああ、そういうことでしたか」
カレン(あれ、案外ストレート作戦で成功?)
ウェルナー(専属護衛)「それはできかねます、プリンセス」
ウェルナー(専属護衛)「誰一人この部屋には入れるなとの、ご命令なので」
カレン(やっぱり石頭!)
カレン「いいでしょ? 私、ジークの妻だよ?」
ウェルナー(専属護衛)「申し訳ございません」
カレン「どうしても・・・ダメ?」
ウェルナー(専属護衛)「ええ、特に今は忙しい時間でして」
カレン「そうなの・・・せっかく今日こそ夫婦の時間を過ごせると思ったのに」
ウェルナー(専属護衛)「な・・・っ!」
カレン(お、こういう話なら効果ありかも!)
カレン「せっかく結婚したのに、部屋も別々。 全然触れられないなんて、寂しいじゃない」
ウェルナー(専属護衛)「・・・・・・」
ウェルナー(専属護衛)「それでも、今はお引取り願います」
カレン(ダメかぁ・・・)
ハンナ「あ、あの!」
ハンナ「ウェルナーさん、姫様は・・・」
ハンナ「姫様は、寂しくておいでです!」
ハンナ「姫様は、愛を求めていらっしゃるのです!」
ハンナ「姫様は、ジーク王子の溺愛をご所望なのです!!」
ハンナ「だから、少しでもジーク王子との時間を・・・」
ジーク王子「うるさいぞ!俺の部屋の前で何を・・・」
カレン「ジーク!」
カレン「私、あなたに──」
ジーク王子「それ以上部屋に近づくな!」
  突きつけられた剣先。
  それは、カレンの喉元までわずか数センチ。
カレン「わ、分かった・・・もう、ここには来ないから・・・」
  ジークは鞘に剣を戻した。
ジーク王子「分かったならさっさと部屋に戻れ」
ジーク王子「城の中とはいえ、こんな時間に女が出歩くものじゃない」
カレン(え?)
ジーク王子「おい、メイド!!」
ハンナ「は、はい!」
ジーク王子「カレンを決してここに近づけるな。いいな」
ハンナ「はいっ!!」
ハンナ「ひ、姫様! 戻りますよ!!」
カレン「え、ええ・・・」
ウェルナー(専属護衛)「・・・・・・」
ウェルナー(専属護衛)「いいのか、ジーク?」
ジーク王子「構わん。・・・もう、誰も近づけるな」
ウェルナー(専属護衛)「はっ」
???「ジーク様〜っ!!」
トーマン(王子付執事)「ジーク様、ちょうど良かったです!」
トーマン(王子付執事)「国王様がお呼びです」
ジーク王子(例の件か・・・)
ジーク王子「分かった、すぐ行く」
ウェルナー(専属護衛)「・・・・・・」

〇貴族の部屋
カレン「はぁ・・・」
ハンナ「やっぱり無理なんですよ!」
ハンナ「“氷王子”は“氷王子”なのです!」
カレン「・・・」
ハンナ「姫様だって、あんなに血走った目をしたジーク王子に──」
ハンナ「剣先を、あんなふうに突きつけられて・・・」
ハンナ「私、私・・・」
ハンナ「うう・・・」
カレン「・・・ごめんね、ハンナ」
ハンナ「謝るのは私の方です!」
ハンナ「私が「甘えればいい」だなんて言わなければ・・・」
カレン「それは私のせい」
カレン「それにね、私、後悔してないよ?」
ハンナ「姫様・・・?」
カレン「だって、ジークに愛されたいって思ってるのは事実だし・・・」
カレン「ジークも、そう変わってくれるって信じてるし・・・」
カレン「それに、ハンナがウェルナーに言ってくれたこと──」
カレン「あれ、とっても嬉しかったから」
ハンナ「姫様・・・」
カレン「ハンナ、私ね、」
カレン「ジークが、好きなの」
カレン「もう10年も前の話なんだけど・・・」
  カレンはハンナに過去のことを話した。
  ジークが優しかったこと。
  ジークが変わってしまったのは、自分のせいであること。
カレン「だからね、私は“愛と幸せに満ちた王国”を、どうしても実現したいの」
カレン「だって、ジークも国民も・・・」
カレン「みんな、幸せになってほしいから」
ハンナ「姫様、その本・・・」
カレン「私にとっては、大切な本」
カレン「ハンナが読んでる、大人向けの恋愛小説よりも──」
カレン「私には、こっちのほうがいいみたい」
カレン「・・・なんて、子供っぽすぎるよね」
ハンナ「いいえ、姫様!」
ハンナ「・・・」
ハンナ「その本の中に、何かヒントはないですか?」
ハンナ「ジーク王子も、その本をお読みになっていたんですよね?」
ハンナ「だったら、もしかしたら・・・」
  二人は絵本を開いた。
  ────
ハンナ「ふわぁ〜あ」
ハンナ「は、すみません、姫様・・・」
カレン「ううん、今日はもう遅いから」
カレン「あとは一人で読むね」
ハンナ「・・・はい。では──」
カレン「あ、ハンナ!!」
カレン「ありがとうね・・・いろいろ」
ハンナ「いえ。大切な“お友達”のためですから!」
ハンナ「おやすみなさい、姫様」
カレン「おやすみ!」
カレン「・・・」
カレン「ジーク・・・」

〇西洋の円卓会議
  同刻──
ルシャード国王「グロース帝国との紛争において──」
ルシャード国王「我が軍の中佐、ディルクの訃報が届いたのは聞いたか?」
ルシャード国王「戦況は今なお有利だと聞いているが──」
ルシャード国王「ジーク、どう捉える」
ジーク王子「は、」
ジーク王子「辺境の街であるブルートにおける紛争は一段と激しくなっており」
ジーク王子「ディルクは敗れたわけですが、これは逆に好機とみています」
ジーク王子「中佐を失っても勢いの衰えない我が国をアピールし、帝国にさらなる脅威を与えるつもりです」
ルシャード国王「戦況は変わらぬと」
ジーク王子「はい」
ジーク王子「ディルク一人失ったところで、我が軍の強さは変わりません」
ルシャード国王「分かった」
ルシャード国王「引き続き、軍の統括は任せた」
ジーク王子「はっ」
ジーク王子「・・・」
ジーク王子「ディルク・・・」
ジーク王子「・・・」
ジーク王子(ブルート、か・・・)

〇荒廃した街
  ブルートという街。
  ──それは4年前、王子自ら・・・

〇西洋の円卓会議
ジーク王子「うっ・・・」

次のエピソード:第3話 宮廷画家の恋の指南

コメント

  • カレン、氷じゃなくて高そうな器を砕いちゃったー!😂 勢いがさすがですねw
    「夫婦の時間」の解釈が姫と護衛でだいぶ違ってそう……さてはムッツリスケ(自粛)
    王子は事情が複雑そうですね。柔らかい心を武装しないといけない状態なのかな……とちょっと思いました。

  • ハンナとカレンの絆にほっこりしました☺️ジークに再会できたけど剣先を向けられて残念でした😭ストーリー、セリフ、自然と頭に入ってきて読みやすいです!

  • 問題山積みの国政を担うってなっちゃうと冷酷に変わらざるを得ないのかな、とも思ってしまいますね。愛する人にも隙を見せられないようになってしまう可能性もあると感じました。
    最後の方の『ディルクが破れた』、は恐らく『敗れた』の誤植かと。いや、すみません。
    内容じゃない部分のコメント込みで。

コメントをもっと見る(15件)

成分キーワード

ページTOPへ