クレオパトラの椅子

三角錐

第1話(脚本)

クレオパトラの椅子

三角錐

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クレオパトラの椅子
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〇黒背景
  アパートの水道が止められた日
  俺は古代エジプトへ飛んだ

〇歌舞伎町
  新宿・歌舞伎町──

〇ホストクラブ
???「ゴメン、お待たせ!」
美奈(シャボン玉!?)
ホスト「やめろって言ってんのに」
ホスト「セルフシャボン玉演出・・・」
ヒカル「ミナちゃんって言うんだね!」
ヒカル「どういう漢字書くの?」
美奈「「美しい」に「奈良の奈」です」
ヒカル「ナラノナ・・・」
ホスト「なんでわざわざ聞くんですかね」
ホスト「アイツの唯一の長所はくじけないとこだ」
ヒカル「でさ、そしたら隣のアパートから」
ヒカル「・・・」
美奈「ヒカルくん?」
ヒカル「ギャーーーーーッ!!! 虫ィィ!!!」
美奈「え、いやこれ違」
ヒカル「ギャーーーーーッ!! ワインがーッ!」
美奈「・・・・・・」
ヒカル「ヤバイ、超ベタベタする! 帰ったらシャワー・・・」
ヒカル「ア! 今うち水道止められてんだった!」
美奈「あのう・・・帰りますね、私」
ヒカル「えッ!! なんで! 待って!」
ホスト「・・・何が足りないんだろうな」
ホスト「金と知性と客観性、あとは落ち着きと色気と声量調節能力ですかね」
ホスト「・・・なんでホストになっちゃったかな」
ホスト「先輩がスカウトしたんですよ」
ホスト「・・・・・・」

〇黒背景

〇広い公園
ヒカル「・・・」
ヒカル「神は俺にゾッコンみたいだな」
ヒカル「恵みの雨だ・・・」
ヒカル(・・・)
ヒカル(そういや、この公園・・・)
ヒカル(母さんとよく来てたとこじゃないか?)

〇広い公園
ヒカル「母さん、キレイな服が汚れちゃう」
お母さん「大丈夫! 母さんだってヒカルと砂遊びしたいもん」
ヒカル「ふふっ」
ヒカル「母さんは何作ってるの?」
お母さん「ピラミッド!」
ヒカル「ぴらみっど?」
お母さん「エジプトにあってね」
お母さん「本物は これの何万倍も大きいの」
ヒカル「ホント? 見たことあるの?」
お母さん「ううん、まだ」
お母さん「でもね 父さんが今度連れてってくれるって」
ヒカル「やったぁ!」
お母さん「三人で見ようね」
ヒカル「うん!」

〇広い公園
ヒカル(結局、 ピラミッドは見れずじまいだったけど)
ヒカル(・・・)
ヒカル「・・・ん?」
ヒカル「何だこれ」
ヒカル「見たことない模様・・・」
ヒカル「砂時計?」
  砂場で拾った砂時計を
  何気なくひっくり返してみた
  すると

〇黒背景
  一瞬でアリ地獄が出現したみたいに
  足元の砂が
  下へ下へと落ちていった
ヒカル「落ちる・・・ッ!!」

〇神殿の広間
ヒカル「い゛った゛ァ゛・・・!!!」

〇神殿の広間
ヒカル(どこだ、ここ・・・)
ヒカル(・・・あの世か?)
ヒカル(誰かいる──!)
ヒカル「あの〜・・・すみません」
???「・・・」
ヒカル(気絶してる・・・?)
ヒカル(いや・・・目は開いてるか?)
ヒカル(暗闇でも分かるぐらい目が大きい)
ヒカル(この目、まさか・・・)
ヒカル「母さん!?」
???「・・・」
ヒカル「待って、俺だよ 今ライターで明かりを・・・」

〇神殿の広間
ヒカル「ギャーーーーーッ!」

〇王宮の入口
子ども「ねえ あれなぁに?」
町人「墓ドロボウさんだよ」
子ども「墓ドロボウ?」
ヒカル(何なんだ?)
ヒカル(いつの間にか手足を縛られて ガタイの良い男に囲まれてる・・・)
町人「情けないねェ、 盗みに入って気絶するなんて」
町人「外国の人だわなぁ?」
町人「んだなぁ」
町人「あのねぇ、言っとくけど 墓ドロボウはもう古いの」
町人「そうだぞ 目ぼしいのはもう随分荒らされてるしなぁ」
町人「しかもアンタが入ったとこのミイラは まだ作りかけでなぁ」
ヒカル(何言ってるか全ッ然分からない)
ヒカル(雰囲気から察するに・・・)
ヒカル(俺をめぐって争いが起こってる?)
ヒカル(カッコよさが国境も性別も超えてったか? 困ったな・・・)
町人「ムショに連れてくか」
町人「んだな」
町人「行くぞ、ほら」
ヒカル「ストップストップ! ボクはみんなのモノ、OK?」
町人「抵抗すンのは損だぞ おとなしく・・・」

〇王宮の入口
銀二郎「アンタ、日本人か?」
ヒカル「お、おお! イエス! イエス、アイキャンドゥ!」
銀二郎「は?」
町人「おう 銀ちゃん!」
町人「今日も暑いなぁ銀ちゃん」
銀二郎「おいアンタ、墓に泥棒に入ったって聞いたけど本当か?」
ヒカル「え!?」
ヒカル「いや違・・・ッ! うちの母さんが! ア! いや、母さんと思ったらツタンカーメンで! アレ? ツタンカーメン・・・」
銀二郎「頼むから分かるように話してくれ」
ヒカル「ついさっきまで公園にいて! 砂場! 砂場からここに!」
銀二郎「──!」
銀二郎「なるほどね」
銀二郎「悪いけど、この人離してやって」
町人「でもよぉ こいつはミイラの前で倒れてて・・・」
銀二郎「明かりがない時間に迷い込んだらしい」
銀二郎「この人に何かあったら僕が責任を取る」
銀二郎「だから、離してやってくれないか」
「・・・」
ヒカル(何語か分かんないけど、ペラペラ・・・ 何者だ? この人)
町人「銀ちゃんがそう言うなら、 そうなんだろうな」
町人「んだな 銀ちゃんがそこまで言うなら」
町人「早とちりだったみたいで すまねぇな」
ヒカル(解決・・・したのか?)
銀二郎「ほら、行くぞ」
ヒカル「ちょ、待っ・・・」

〇中東の街
ヒカル「あの、ありがとう」
銀二郎「・・・」
ヒカル「ええと、名前・・・」
ヒカル(そういやさっき ギンチャン、ギンチャンって)
ヒカル「──“銀ちゃん”!?」
ヒカル「お前、銀ちゃんなのか!?」
銀二郎「は?」

〇黒背景
玲子「銀二郎はね、 大学で心理学の勉強をしてて」

〇黒背景
玲子「銀ちゃんはね、倹約家なの ホストクラブに通ってるなんてバレたら 叱られちゃう」

〇黒背景
玲子「銀ちゃんは・・・ 元気でいるかな」

〇中東の街
ヒカル「お前の母さん、玲子さんだろ?」
銀二郎「どうしてそれを・・・」
ヒカル「心配してたぞ! ある日急にいなくなったって」
銀二郎「──!!」
銀二郎「・・・」
銀二郎「僕の母さんとどういう関係?」
ヒカル(やべっ)
ヒカル「ご近所さんだよご近所さん!」
銀二郎「ふーん・・・」
銀二郎「ホストとお客じゃなくて?」
ヒカル(す、鋭い)
ヒカル「とにかく! ダメだぞ、母さん心配させちゃ」
ヒカル「俺と一緒に帰ろう なっ」
銀二郎「アンタ、ここがどこだか分かってる?」
ヒカル「・・・エジプト!」
銀二郎(分かるんかい)
銀二郎「あーそうだよ、正解」
銀二郎「だけど、ただのエジプトじゃない」
銀二郎「ここは 現代人が言うところの、古代エジプト」
銀二郎「おそらく──紀元前50年頃だ」
ヒカル「紀元・・・前・・・?」
ヒカル「ビフォア、キリスト・・・?」
銀二郎「僕は帰らなかったんじゃない」
銀二郎「帰れなくなったんだ」
ヒカル「帰れなくなったって・・・」
銀二郎「アンタが来て助かったのはこっちだよ」
銀二郎「砂時計を持ってるだろ?」
ヒカル「砂時計・・・?」
「・・・・・・」
銀二郎「無くしたのか?」

〇砂漠の基地
ヒカル「ハァ・・・ッ、ハァ・・・ッ」
銀二郎「ほら、早く! どこで落としたッ!」
銀二郎「アレがないと帰れなくなるぞ!」
ヒカル「た、多分気を失ったところで・・・」
銀二郎「ミイラの置いてあるとこか」
銀二郎「まずいな、今日はたしか王子デートDAY・・・」
ヒカル「王子デートDAY?」
銀二郎「うちの王子さまはデートでミイラ巡りするんだ!」
ヒカル「えええ!?」
銀二郎「急ぐぞ!」

〇神殿の広間
ヒカル「そうだ、確かここら辺で・・・」

〇神殿の広間
王子「ここで何をしてる?」
銀二郎「王子・・・」
ヒカル(王子サマ? へぇ〜)
銀二郎「すみません 探し物を・・・」
王子「そうか 私も手伝おう」
ヒカル(一緒に探してくれてる? 優しいじゃん)
銀二郎「・・・」
クレオパトラ「ねぇ、入口にこんなものが落ちてたの」
ヒカル「それだ!」
銀二郎「砂時計・・・!」
王子「おお、クレオパトラ それはこの者の落とし物だそうだ」
王子「渡してやってくれ」
クレオパトラ「嫌よ」
銀二郎「・・・ッ」
銀二郎「何でも致しますから・・・」
銀二郎「返してください」
クレオパトラ「アタシ これが気に入ったの」
銀二郎「命・・・命より大事な物なんです!」
クレオパトラ「なに? アタシに貰われるのが嬉しくないの?」
クレオパトラ「ねぇ、何とか言ってやって?」
王子「すまないな銀二郎 クレオパトラが欲しがっているから」
銀二郎「くっ・・・!」
クレオパトラ「さ、行きましょう ありがとうね銀二郎」
ヒカル「オイッ!」
ヒカル「砂時計! いいのか? 持ってかれたけど・・・」
ヒカル「なぁ、銀二郎──」
銀二郎「ウッ・・・・・・」

〇神殿の広間
ヒカル「・・・!!」
ヒカル(・・・)
ヒカル(平気なわけない)
ヒカル(一人で、 言葉の分からない異国に放り込まれて)
ヒカル(一生戻れないかもしれないって思いながら 生きてたんだ)
ヒカル(それを・・・)
ヒカル「取り返しに行こう、銀二郎!」
銀二郎「無理だよ」
銀二郎「王はこの世界において絶対だ」
銀二郎「もちろん、その子である王子も」
銀二郎「そして王子はあの女── クレオパトラの言いなりだ」
ヒカル「なるほどな」
ヒカル「それなら話は簡単だ!」
ヒカル「俺に任せろ!!」
銀二郎「無理だよ、王子に楯突くなんて・・・っ」
ヒカル「そうじゃない!」
ヒカル「狙うのはクレオパトラだ」
銀二郎「クレオパトラを殺すのか?」
ヒカル「そんなこと怖くて出来るか!」
銀二郎「じゃあどうやって?」
ヒカル「俺が── クレオパトラの椅子を奪うんだ」
銀二郎「クレオパトラの・・・椅子を?」
  第二話へ つづく

次のエピソード:第2話『銀二郎の場合①』

コメント

  • 話の設定とか、展開が予測不能でハマりました。出会えてよかった

  • 古代エジプトとはかなり楽しそうな設定ですね。転生先にも同じ日本人の協力者がいるというのも面白いそうです。彼の腕(口?)ひとつでどう切り開いていくのか楽しみです。

  • キャラクターが魅力的でした!
    伏線が丁寧ですし、砂時計のギミックがよいですね!
    続きを楽しみにしています!

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