ズッテン、ズズテン♪

パズズスター

第1話「俺が伝説にしてやるよ!」(脚本)

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〇大きな公園のステージ
記者A「若者に絶大な人気を誇るバンド “ミリュンダソーダ”の反戦ゲリラライブ!」
記者A「見渡す限り人、人、人です!」
記者A「警察発表によりますと、集まった人の数・・・」
記者A「10万人を既に超えているとのことです!」

〇空
  みんなありがとうな
  おかげでこのライブ、でかいニュースになりそうだ
  俺たちの国は戦争が強い
  おそらくこれからも負けることはないだろう

〇荒廃した市街地
  でも俺は嫌なんだ
  仲間の死も、敵兵の死も、もう見たくない
  戦争屋と言われるバカな政治家に
  ケリを入れてやる!俺の歌で

〇空
  みんな・・・雨でずぶ濡れになっちまったな
  ごめんな、俺のわがままに付き合わせてしまって
  お詫びに今日はとことんサービスするからさ!
  楽しんでくれよ
  行くぜ!
  次は、お前らが1番好きな曲だ!
「“レッド オブ アシュマダイ”! 気合い入れろ!!!」

〇空
「ワン ツー スリー フォー」
  うん?
  なんだ、あれ・・・?
  何かが飛んでくる

〇白
「RPGーーー!!!」

〇白
  ロケット弾だった
  自分の体が吹き飛んだのがわかった・・・
  人間て自分が死ぬとき
  
  ちゃんとわかるんだな

〇大きな公園のステージ

〇宇宙空間
  目が開く・・・
  暗いな・・・
  なんだ?

〇宇宙空間

〇宇宙空間
ムルヂ「気がつきましたね、リキト様」
  うん? 誰だこいつ?
  俺の名前を知ってる!?
リキト「もしかしてあんた神様?えっと、あの・・・天国って暗いんだね」
ムルヂ「神様、とんでもない!私は博打打ちです」
リキト「博打打ち?」
ムルヂ「はい まさかあなたと組めるなんて夢のようです」
ムルヂ「さあゲームを始めましょう 私たちなら、とんでもない大金持ちになれますよ」
リキト「ゲーム?」
ムルヂ「ささ!そんなところでいつまでも寝転がっている場合ではありません」
ムルヂ「私の家に行きましょう」
リキト「あれ?俺・・・手も足も、ちゃんとついてる!」
ムルヂ「当たり前です」
リキト「俺、ロケット弾にやられてバラバラに吹っ飛んだ・・・よね?」
ムルヂ「はい、なので私がリキト様の魂をここに運びました」
リキト「魂を、運んだ?」
ムルヂ「さあ立って、行きますよ」

〇英国風の部屋
リキト「あ、あんた名前は?」
ムルヂ「私、ムルヂと申します」
リキト「な、なぁムルヂさん、俺たちのライブに来ていた観客は無事なのか?」
リキト「仲間は、バンドメンバーとスタッフは? どうなった?あんた知ってんだろ!」
ムルヂ「ご安心ください 観客の皆様にお怪我はありません」
ムルヂ「バンドのメンバーに怪我をされた方がおりますが、命に別状はありません」
ムルヂ「あの爆発で奇跡的です」
リキト「そうか良かった・・・教えてくれてありがとう、ムルヂさん」
リキト「俺だけが死んじまったって訳か・・・ うん、だがそれでいい、それで」
ムルヂ「リキト様、その体は如何ですか? お気に召しましたか?」
リキト「え!そういえばこの体・・・」
ムルヂ「そちらに鏡がございますよ」

〇英国風の部屋
リキト「だ、誰ですかこれは!?」
ムルヂ「残念ながら、こちらの世界に運べるのは、リキト様の魂のみ」
ムルヂ「いまリキト様が動かしているのは」
ムルヂ「魂の入れ物として私が用意した人形でございます」
ムルヂ「ちなみに顔は私の好みに合わせて!!」
ムルヂ「服はリキト様があちらの世界で着ていたものを真似て作らせました」
ムルヂ「なかなか刺激的な服ですな」
リキト「に、人形だって!?髪も皮膚も人間そのものじゃないか!」
ムルヂ「私たちの世界では、それくらいのものを作ることは容易いことです」
ムルヂ「ですがどんなに優れた科学力であろうと、私たちの世界では評価されません」
ムルヂ「価値があるのは、“音楽の才能”のみ!」
リキト「音楽の才能?」
ムルヂ「はい」

〇英国風の部屋
  ぐう~~~~~~
リキト「は、ヤベっ、お腹が鳴った」
ムルヂ「ハハハッ、リキト様お腹が減ったようですな」
ムルヂ「では町の食堂に参りましょう」
リキト「本当に良くできているよ・・・この人形は」

〇兵舎
ムルヂ「さあリキト様、遠慮なさらずに」
リキト「あ、ありがとう いただきます!」
リキト「あの、ここってなんなの?本当に天国じゃないの?」
ムルヂ「はい、ここはリキト様が暮らしていた世界とは別の世界です」
ムルヂ「信じられませんか?」
リキト「うん、まあでも・・・信じるしかないよね」
リキト「夢にしては、覚める気がしないし」
ムルヂ「ハハハッ、リキト様のそういうところ、好きです」
リキト「なあ、ムルヂさん、あんたゲームを始めましょうって言ったよね?」
ムルヂ「はい、この世界では先ほども申しましたが、音楽の才能のみが認められます」
ムルヂ「現在この世界を統べる王も、音楽の才能によりその座を奪いました」
ムルヂ「バトルによって勝ち上がり、王となったのです!」
リキト「バトル?」
ムルヂ「そうです!音楽の才能が試されるゲームによるバトルです」
リキト「ま、マジかよ・・・」
リキト「じゃあ、血筋とか関係無く」
リキト「そのゲームに強ければ、誰でも王様になれるってこと!?」
ムルヂ「左様でございます」

〇芸術
ムルヂ「それだけではありません!この世界の宝が全て自分のものになるのです」

〇兵舎
リキト「宝?ああ、それであんた大金持ちになれるって言ってたのか」
ムルヂ「はい、私の望みは大金持ちになること」
ムルヂ「そのためにリキト様の魂をこの世界にお連れしたのです」
リキト「ふーん・・・で、俺にそのゲームをやれと?」
ムルヂ「はい」
ムルヂ「リキト様の音楽の才能は素晴らしい! 王以上だと私は確信しております!」
リキト「オイオイ、勝手に確信しないでくれよ」
ムルヂ「リキト様!ゲームで王に勝ち、新しい王となってください」
ムルヂ「そして、私を大金持ちにしてください!お願いします」
リキト「イヤイヤイヤ、困りますって・・・」
リキト「はっ!じゃあ、まさかそのために俺をロケット弾で殺したとか?」
ムルヂ「と、とんでもない!私ではありませんよ」
リキト「そっか・・・そうだよな、すまない」
ムルヂ「いえ、お気になさらずに」
ムルヂ「それよりリキト様、お腹はもう一杯になりましたか?」
リキト「お腹?あ、うん、ありがとう!ごちそうさま」
ムルヂ「では場所を変えましょう、ここでは誰に話を聞かれるかわかりません」

〇美しい草原
ムルヂ「ここなら大丈夫!誰もおりません」
ムルヂ「実は、ゲームに参加しようとする者は、王の信者から襲われることが多いのです」
リキト「オイオイ、怖いな・・・」
ムルヂ「でも心配いりません」
ムルヂ「リキト様なら、ゲームですぐに有名になれます!」
ムルヂ「名の知れたプレイヤーは、王の命令により保護されます」
リキト「え、そうなの?」
ムルヂ「はい、ご安心ください」

〇空
リキト「あっ、桜だ!この世界にも桜があるのか・・・」

〇空
リキト「なあムルヂさん、なんで俺なんだよ?」
リキト「俺より才能があるやつなんてたくさんいるだろ」
ムルヂ「いえ、私が知る限り、リキト様がサイコーでございます」
リキト「サイコーって・・・」
ムルヂ「残念ながら私に音楽の才能はありません」
ムルヂ「そしてこの世界にも、王以上の天才はいなかった」
ムルヂ「そんなとき、リキト様を見つけたのです」
ムルヂ「素晴らしかった」
ムルヂ「それから毎日、どうやったらあなたと組めるのかを考えました・・・」
リキト「そしたら丁度」
リキト「願い通り俺が死んでくれたと・・・」
ムルヂ「いえいえ、決して私は願ってなど」
リキト「いいんだよ、そういう運命だったんだ」
リキト「ムルヂさん、飯も奢ってもらったし、 やるかやらないかは別として」
リキト「話だけは聞くよ」
リキト「そのゲームのやり方を教えてよ?」
ムルヂ「あ、ありがとうございます!」
ムルヂ「ゲームに参加する者は、ある者と契約を結びます」
リキト「ある者と契約?」
ムルヂ「はい、実はもう良さそうな相手を見つけました」
ムルヂ「写真がございますが、ご覧になりますか」
リキト「えっ、もう相手を見つけてんのかよ!じ、じゃあ・・・一応見ようかな」

〇美しい草原

〇暖炉のある小屋
リキト「な・・・こ、これって、子供じゃないか!」
ムルヂ「今年13歳になる女子でございます」
リキト「こ、この子と俺が契約すんの?」
ムルヂ「はい」

〇美しい草原
リキト「で、契約してどうすんのさ?」
ムルヂ「リキト様の素晴らしき才能によって、その娘を歌姫にするのです!」
リキト「へ?」
リキト「それってまさか、アイドルに育てるってこと!?」
ムルヂ「はい、王が育て上げた歌姫を超える存在になれば、我々の勝ちです!」
リキト「じゃあ、俺の役目は、その子のために曲を作ること?」
ムルヂ「曲を作る?まあ、ある意味そうなりますかね」
リキト「・・・?」
リキト「なあ、ムルヂさん」
リキト「悪いけど俺、金には興味ないんだよ」
リキト「それに他人の人生を背負うのも嫌なんだ、ごめんな」
ムルヂ「そうですか、お金には興味がありませんか」
ムルヂ「では、リキト様がまた元の世界で暮らせるとしたらどうでしょう?」
ムルヂ「それも戦争のない世界で」
リキト「なに!そ、そんなことが可能なのか?」

〇謁見の間
ムルヂ「可能です、あなたが王になれば!」

〇美しい草原
リキト「本当か?」
ムルヂ「はい」
リキト「間違いないな」
ムルヂ「間違いございません」
リキト「そうか・・・ 戦争のない世界」
リキト「わかった」
ムルヂ「リキト様・・・では!」
リキト「ああ、その娘を俺が伝説にしてやるよ!」

〇白
  次回 第2話
  「アイドル誕生祭」

次のエピソード:第2話「アイドル誕生祭」

コメント

  • リキトの思想に強く共感し、死んだあとも彼の魂がその想いを強くしているところが嬉しかったです。彼の音楽の才能で、その世界を平和に導くことができますように。

  • 次もめっちゃ読みたくなりました!
    物語の進み方や興味をそそる言い回しがとてもお上手で、いつの間にか物語の虜になっていました笑
    戦争のない世界、今の情勢だからこそ同じことを思います…。

  • 面白かったです。人間の肉体は滅びても魂は存在し続けるということ。その人が持っていた能力がその後,他の人間に幸を齎すという展開にワクワクしました。続きが読みたいです♬

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