notice(脚本)
〇教室
高宮明「みんな祈(いのり)が大好きだよね」
柴崎祈「えー!なに急に!そんな褒めても何も出ないぞ!」
高宮明「ううん、いいなって思って。祈がみんなの人気者で、羨ましいんだ」
柴崎祈「明(めい)だっていろんな人から頼られてるじゃん」
高宮明「・・・そんなことないよ・・・私はみんなから嫌われてるから」
柴崎祈「ハハッ!!何言ってるの。あの葉山の彼女がみんなから嫌われてるわけないよ」
高宮明「・・・」
柴崎祈「・・・明?」
高宮明「・・・私、祈になりたい・・・」
柴崎祈「え・・・?」
高宮明「そしたら、いつも笑って見てるだけで、それだけで、ずっと幸せでいられるから──」
〇綺麗な会議室
──とある編集社
田中「──ですから新作をそろそろ・・・先生、先生!!聞いてます?」
柴崎祈「はい!?」
田中「はぁ・・・いや、だから!そろそろ新作、お願いしますよ・・・」
柴崎祈「あ、あぁ!そうですね!そう、なんだけど・・・」
田中「・・・もしかして、ネタが思いつかないとか・・・」
柴崎祈「──!!・・・ままままさかぁ〜・・・」
田中「はぁ・・・やっぱりね・・・そんなことだろうと思ってましたよ・・・」
柴崎祈「あ、はは、はは・・・」
田中「いいですか、ご時世的なものがあるとはいえ、先生はそもそも人と会わな過ぎます!」
柴崎祈「・・・人と?」
田中「えぇ。小説家というのは、人と会い、刺激をもらうことでそれを作品にしていくものです・・・」
田中「逆に、こんな引きこもりでよく今まで書けてましたね」
柴崎祈「いや、引きこもりって!」
田中「引きこもりでしょう!!全く。今日だって何ヶ月ぶりですか、編集社に来るの」
柴崎祈「4ヶ月・・・くらいですかね・・・」
田中「・・・6ヶ月、半年です」
柴崎祈「あー・・・もうそんなに経ってたんですね〜・・・はは、は」
田中「はぁ・・・いいですか。新作を書くためにも、先生の社会性のためにも、もうなんでもいいからとにかく人と会ってください」
柴崎祈「はぁ・・・わかりました・・・」
田中「頼みましたよ!じゃあ、新作、期待してますからね」
柴崎祈「はぁい・・・」
柴崎祈(人と会えって言われてもなぁ・・・)
柴崎祈(・・・そういえば莉帆(りほ)から連絡来てたっけ・・・)
──ゴールデンウィーク帰ってくる?久しぶりにみんなで集まるんだけど祈も来ない?
柴崎祈(みんなって誰だ・・・まぁでもネタのためにも人が多いに越したことないか・・・)
柴崎祈「・・・久しぶりにみんなに会いたいなぁっと・・・」
柴崎祈(はぁ・・・仕事のためとはいえ、久しぶりに人と会うの疲れそうだな・・・)
〇居酒屋の座敷席
──居酒屋
一ノ瀬莉帆「いやぁ〜祈が来てくれてほんと嬉しい!誘ってよかった〜」
松浦愛夏「今や売れっ子小説家だもんね」
一ノ瀬莉帆「ね!忙しくなってから全っ然来てくれないから寂しかったよ〜」
柴崎祈「いやぁ、ははは」
柴崎祈(有名になったらたかられるから気をつけろって小説家の先輩に言われてたんだよね・・・)
松浦愛夏「私とか莉帆は定期的に祈に会ってたけど、蘭(らん)とか奏多(かなた)たちは卒業ぶりなんじゃない?」
菅谷蘭「確かに!まさかあの祈がね〜」
柴崎祈「いやぁ、そんな大したもんじゃないよ」
菅谷蘭「東京のタワーマンションに住んでるんでしょ〜。聞いたよー」
柴崎祈「いやぁ!でもタワマンの中だったら全然だよ!駅から少し遠いしね」
柴崎祈(誰だよ言ったの!)
柴崎祈(てかみんなってクラスの一軍だけじゃん!みんなってそういうみんなかよ!)
成川奏多「すげぇなタワーマンション!マジ夢あるわ〜」
成川奏多「てかそういや高宮も東京じゃなかったけっけ?柴崎仲良かったよな?」
柴崎祈「え!?あ、あぁ、うん、まぁ・・・」
成川奏多「圭(けい)も気になるっしょ」
葉山圭「え・・・うん、まぁ・・・」
松浦愛夏「・・・」
菅谷蘭「・・・」
柴崎祈(・・・えぇ、何この空気・・・)
成川奏多「なぁ柴崎は高宮と会ってないの?」
柴崎祈「明、ね・・・」
〇レトロ喫茶
──一年前
柴崎祈「そっか〜!じゃあオーディションに向けて稽古頑張らないとだ!」
高宮明「うん!祈はどうするの?仕事、辞めちゃったんでしょ」
柴崎祈「そうだね〜、なんかの賞に引っ掛かったら最高だけど・・・まぁ、いろいろ書いてみるよ!」
高宮明「お金は?大丈夫なの?」
柴崎祈「今は働いてた頃の貯金があるし・・・無くなったら・・・そうだな・・・バイトでもしようかな」
高宮明「そっか・・・さすが祈。夢に向かっててなんかかっこいいね!」
柴崎祈「それは明もでしょ!明が有名女優になってテレビで活躍してる姿が目に浮かぶな〜」
高宮明「うふふ。そんなにすぐにテレビに出るような有名人にならないよ」
柴崎祈「えーそうかな?明なら可愛いし、演技うまいし、すっごい努力してるし、絶対すぐ有名になれると思うよ!」
高宮明「うふふ。ありがとう。頑張るね」
柴崎祈「うん!私応援してるから!」
高宮明「私も。祈のこと応援する」
柴崎祈「ふふっ」
柴崎祈「うれしい!ありがとう!頑張ろうね!」
高宮明「うん。コンクール、賞取ったら教えてね」
柴崎祈「うん!明も!」
高宮明「うん。わかった」
〇本棚のある部屋
柴崎祈「はい、はい・・・そうですか・・・はい・・・わかりました・・・はい、はい・・・ありがとうございます!」
柴崎祈「・・・」
柴崎祈「ぃやったあああああぁー!!!!」
柴崎祈「そうだ!明に教えなきゃ」
──直木川賞!とったよ!
柴崎祈「明からだ!」
──すごいね!ほんとにおめでとう!祈なら絶対できると思ってたよ!
柴崎祈「ふふっ」
──明は最近どう?
──私は全然だよ。この前もオーディション落ちちゃった・・・
──祈、私もう厳しいかも・・・
柴崎祈「明・・・」
──夢、諦めちゃうの?良かったら話聞くよ!明日会えない?
柴崎祈「・・・」
〇本棚のある部屋
──次の日
柴崎祈(まだ返信ない・・・)
柴崎祈「明、大丈夫かな・・・」
〇居酒屋の座敷席
柴崎祈(──それから結局音信不通なんだよな・・・)
柴崎祈「実は私も1年くらい連絡とってないんだ。ごめんね」
成川奏多「そっか〜。なんか圭も別れてから連絡とれてないらしくてさ。柴崎ならなんか知ってるかなって思ったんだけど」
柴崎祈「・・・そうなんだ・・・なんか、明すごく頑張ってたから、私も気になってたんだけど、連絡来なくなっちゃって・・・」
一ノ瀬莉帆「明は女優目指してるんだっけ?」
柴崎祈「そう。それでオーディションとか受けてすごく頑張ってたんだ。稽古も、毎日毎日遅い時間までやって・・・」
菅谷蘭「ふーん。そうなんだ」
松浦愛夏「一握りの世界だからね〜。厳しいよね」
柴崎祈「そう、なのかな・・・」
松浦愛夏「・・・」
菅谷蘭「・・・」
成川奏多「そ、そういえばさ!」
成川奏多「この間、家に刑事が来たんだよ」
柴崎祈「刑事?」
成川奏多「あぁ。なんか・・・西野のこと、聞かれてさ・・・」
一ノ瀬莉帆「西野・・・って、西野さん?」
成川奏多「そう。西野の自殺、謎が結構多かったじゃん。なんか似たような感じで亡くなった子が最近もいたらしくて」
菅谷蘭「え!?なにそれ・・・こわっ・・・」
成川奏多「だよな・・・その最近亡くなった子もさ、全然遺書とか見つからなくて、最近まで楽しそうに学校行ってたらしい」
成川奏多「周りのやつらもなんで自殺したのかわからないって言ってるらしくて・・・それがちょっと西野の時と似てるっつーか・・・」
一ノ瀬莉帆「確かに。西野さんの時も結局遺書とかは見つからなかったって話だったもんね」
成川奏多「あぁ。だからお前らのところにも来るかもな」
葉山圭「・・・」
菅谷蘭「まじ〜?なんか警察って別に悪いことしてなくても怖いよね」
柴崎祈(西野さん・・・)
〇教室
西野由凪「う・・・うぅ・・・」
柴崎祈「・・・西野さん・・・?」
西野由凪「・・・うぅ・・・ヒックッ・・・」
柴崎祈「どうしたの!?・・・大丈夫?何かあった?」
西野由凪「柴崎さん・・・私・・・うぅ・・・」
柴崎祈「うん・・・なんでも言って・・・?」
「由凪?」
西野由凪「・・・!!」
柴崎祈「・・・西野さん?」
西野由凪「ご、ごめんなさい・・・!なんでもないの・・・ありがとう・・・!」
柴崎祈(どうしたんだろう・・・すごく泣いてたように見えたけど・・・)
〇居酒屋の座敷席
柴崎祈(それが、私が西野さんと話した最後の会話になったんだっけ・・・)
菅谷蘭「ねぇ、祈、警察来るかもって・・・」
柴崎祈「え・・・あぁ、うん・・・そうだね・・・まぁ、来たらちゃんと話したいとは思うけど・・・」
柴崎祈(・・・これはもう少し調べてみる価値がありそうだな・・・)
〇飲み屋街
柴崎祈「成川。さっきの話だけど・・・」
成川奏多「ん?・・・あぁ、刑事が来たってやつ?」
柴崎祈「うん。その刑事の名刺とかある?」
成川奏多「名刺?あぁ、あると思う。ちょっと待ってな」
柴崎祈「ありがとう。これ、もらってもいいかな?」
成川奏多「あぁ。いいけど・・・何に使うんだよ?まさかこっちから連絡するのか?」
柴崎祈「まぁ・・・ちょっとね・・・」
成川奏多「ふーん。小説家は物好きだな〜」
柴崎祈「まぁね〜」
柴崎祈「じゃ、私帰るね!今日は誘ってくれてありがと!」
一ノ瀬莉帆「えー!祈もう帰るの?」
柴崎祈「うん!じゃあまた!」
柴崎祈「・・・赤嶺刑事・・・か」
妙な同窓会ですよね。
盛り上がってるようで、実は全然盛り上がってなくて、お互いの腹を探り合ってるというか。
過去の事件も含めて、続きが気になります。
冒頭の言葉が気になりつつも、スルスルと読んでいきました。いつの間にか祈ちゃんの気分だったのが不思議です。明ちゃんは生きているのかな?
続きが楽しみです!
小説家は辛いですね。全然ネタが浮かばなかったら仕事になりません。そのネタ探しに、何やら事件性を感じは予兆がしてきました。いい小説が書けるかも。