クチナシサーベイランス

tomori

union(脚本)

クチナシサーベイランス

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〇シックなカフェ
  ──とあるカフェ
石川柚葉「めずらしい奴から連絡が来たと思ったら・・・」
柴崎祈「お願い!幼馴染のよしみで教えてよ〜」
石川柚葉「どうせアンタのことだから小説のネタにでもしようと思ってるんだろうけど、一般人が面白半分で首突っ込んでいい事案じゃないのよ」
柴崎祈「というと・・・?」
石川柚葉「一部じゃ連続殺人の疑いも出て・・・って上手いこと聞き出そうとするな」
柴崎祈「バレたか」
石川柚葉「・・・」
石川柚葉「とにかく、これ以上は何聞いても無駄よ。私も警官の端くれ。機密は厳守しないと・・・」
柴崎祈「泣いてたんだ・・・」
石川柚葉「・・・え?」
柴崎祈「私が最後に話した時、泣いてたんだよ西野さん」

〇教室
西野由凪「・・・柴崎さん・・・私・・・うぅ・・・」

〇シックなカフェ
石川柚葉「それ、当時、警察に言った?」
柴崎祈「ううん。言ってないよ。だって聞かれなかったから」
石川柚葉「はぁ・・・」
石川柚葉「でも、なんで泣いてたのかしらね・・・」
柴崎祈「私もそれがずっと引っかかってて」
柴崎祈「あの時、無理にでも話を聞いてたら変わってたんじゃないかって・・・」
石川柚葉「祈・・・」
柴崎祈「だからせめて私ができる範囲で警察に協力できたらなって思ったんだけど・・・」
柴崎祈(まぁ、小説のためでもあるけど・・・)
石川柚葉「・・・わかったわ。そこまで言うなら協力してあげなくもない」
柴崎祈「ほんと!?いや〜持つべきものは警察官の幼馴染ですな〜!」
石川柚葉「まぁ、どっちみち今のアンタの話は赤嶺さんに話した方が良さそうだしね」
柴崎祈「そうそう。その赤嶺さんってどんな人なの?」
石川柚葉「そうね〜一言で言うと・・・」
石川柚葉「クール系美女刑事?」
柴崎祈「へ〜。クール系か〜・・・」
柴崎祈「・・・怖くない?」
石川柚葉「うーん・・・私はいい人だと思うけど・・・」
柴崎祈「そうなんだ・・・」
柴崎祈(大丈夫かなぁ・・・)
柴崎祈「・・・でもさ、なんで再調査しようってなったんだろうね」
柴崎祈「だって、どの事件も一度は自殺で決着がついてるわけでしょ?」
石川柚葉「・・・それは・・・」
石川柚葉「赤嶺さんだからよ」
柴崎祈「赤嶺さん、だから?」
石川柚葉「・・・あなた達が卒業して、5年後だから、今から3年前ね。五橋(いつつのはし)高校で同じような事件が起きたのよ」
石川柚葉「それがさっき話した二つ目の事件に当たるのだけど、その時亡くなった生徒も周りから愛されているような普通の生徒だったの」
石川柚葉「でもある日突然、屋上から飛び降りて・・・その子は、まだ17歳だったわ」
柴崎祈「西野さんと同じ歳だ・・・」
石川柚葉「そうね・・・それで、亡くなったその子の名前が」
石川柚葉「赤嶺かれん。赤嶺さんの実の妹さんよ」
柴崎祈「──!!」
石川柚葉「それで、妹さんの自殺が信じられなかった赤嶺さんは今でも調査を続けているってわけ」
柴崎祈「そう、なんだ・・・」
石川柚葉「最初はみんなが赤嶺さんを見て、可哀想だけど無駄な捜査だと、そう言ってたわ」
石川柚葉「でもこの間、ついに三つ目の事件が起きて、それでみんなが赤嶺さんの捜査に協力し出したってわけ」
石川柚葉「ま、私もこの三つ目の事件が起こるまでは、まさか西野さんの自殺が大きな事件につながってるかもなんて、考えもしなかったわ」
柴崎祈(これは思ってたより厄介な事件に首を突っ込んでしまったっぽい・・・)
石川柚葉「じゃあ、とりあえず赤嶺さんには私から連絡入れておくわ。今度焼肉奢りなさいよね〜儲かってるんでしょ?」
柴崎祈「はいはい、分かりましたよ〜」
石川柚葉「あ、そうだ!赤嶺さんの下についてる奴、私の同期なんだけど、ちょっと・・・なんていうか・・・」
柴崎祈「え?なに・・・怖いなぁ・・・」
石川柚葉「変わってる・・・のよね・・・ま、アンタとならウマが合いそうだから大丈夫か・・・」
柴崎祈「えー、やだなぁ・・・なんか心配になってきた・・・やっぱ会うのやめようかな・・・」
石川柚葉「だめよ!貴重な情報提供者なんだから!頼んだわよ!」
柴崎祈「ひぇ〜」

〇取調室
  ──取調室
柴崎祈(なんで取調室やねん!)
柴崎祈「あ、あの〜」
赤嶺ゆり「なんだ」
柴崎祈「いや、なんか私が犯人みたいな感じになってません・・・?」
赤嶺ゆり「石川巡査からは重要参考人として譲り受けたからな。話を聞くまではここから出すつもりはない」
柴崎祈(柚葉(ゆずは)のやつ〜!!)
赤嶺ゆり「それで・・・殺ったのか?」
柴崎祈「いやいやいややってないです!盛大な誤解です!!」
赤嶺ゆり「最初はみんなそう言う」
柴崎祈「だから〜!私はただ、西野さんの・・・」
乾航介「柴崎さんって、あの小説家の橋霧野(はしきりの)なんすよね!?」
柴崎祈「へ!?え、あ、そうですけど・・・」
乾航介「すげー!本物だ!俺大ファンなんすよ!サインもらっていいすか!」
柴崎祈「は、はぁ・・・」
柴崎祈(なんだコイツ・・・!)
赤嶺ゆり「お前は西野由凪と同じクラスだったそうだな。それで、さっき何を言おうとした」
柴崎祈「あ、あぁ、そうですね・・・私が西野さんと最後に会話した時の西野さんの様子が少し引っかかっていて・・・」

〇取調室
  ──数分後
赤嶺ゆり「なるほど・・・」
柴崎祈「はい・・・なんで話を聞いてあげなかったのか、ずっと後悔していて・・・」
赤嶺ゆり「・・・先程、西野由凪の表情が変わった時、誰かが彼女を呼ぶ声が聞こえたと言ったな」
柴崎祈「そう、ですね・・・」
赤嶺ゆり「その声に心当たりは?」
柴崎祈「どうでしょうか・・・西野さんは比較的大人しめのグループの子たちみんなと仲が良かったので・・・」
赤嶺ゆり「そうか・・・ふむ・・・」
赤嶺ゆり「柴崎、と言ったな」
柴崎祈「はい・・・」
赤嶺ゆり「お前が一番話を聞きやすいと思う西野由凪の友人にまずは話を聞くのが良さそうだが、あてはあるか?」
柴崎祈「そうですね・・・」
柴崎祈(明、西野さんとも仲良かったよな・・・)
柴崎祈「いるにはいるんですが、一年くらい連絡をとっておらず・・・」
赤嶺ゆり「そうか・・・石川巡査から君は優秀な助っ人になると聞いていたのだが、やはり一般人に捜査は・・・」
柴崎祈「手伝います!任せてください!」
赤嶺ゆり「・・・しかし一年連絡を取ってないのだろう」
柴崎祈「が、学生時代の友人なんてそんなもんですよ〜!」
柴崎祈(まぁ、私が人との交流を疎かにしてただけだけど・・・)
赤嶺ゆり「まぁいい。東京住まいだったな」
乾航介「めっちゃでかいタワマンに住んでるんすよね!」
柴崎祈(だからなんで知ってるの!)
赤嶺ゆり「だったらここでの調査は難しいだろう。協力してもらいたいのは山々だが・・・」
柴崎祈「それなんですけど」
柴崎祈「さっき言ってた西野さんと仲の良かった私の友人も東京に住んでるので、そこは問題ないかと」
赤嶺ゆり「そうか・・・」
柴崎祈「はい・・・それから、もし良ければ」
柴崎祈「上京した他のクラスメイトにも私から話を聞いてみます」
赤嶺ゆり「・・・!」
赤嶺ゆり「それは助かるが、しかし、単独での調査は危険だぞ」
赤嶺ゆり「たとえ友人だったとしても、思わぬ部分に足を突っ込んで、人間関係を崩しかねない」
赤嶺ゆり「人間関係だけならまだしも、犯人に目をつけられ、本当に危険な目に会う可能性もある」
柴崎祈「危険・・・」
乾航介「しかも先生の場合人生の勝ち組ですしね〜。恨みを持たれやすい立場ではありますよね」
柴崎祈「そんな・・・」
赤嶺ゆり「ふむ・・・」
赤嶺ゆり「だが、警察では無い一般人の方が情報を得やすい場合も少なからずある・・・」
赤嶺ゆり「そうだな・・・」
赤嶺ゆり「柴崎さえ良ければ協力してもらいたが・・・」
柴崎祈「ほんとですか!」
赤嶺ゆり「だがやはり単独捜査は危険だ。私も責任を負いきれないのでな」
赤嶺ゆり「そこでだ」
赤嶺ゆり「あまり頼りたくはないのだが、私の知人が東京で探偵をしている」
赤嶺ゆり「そいつに君のサポートを頼んでみよう」
柴崎祈「探偵・・・」
柴崎祈(なんかかっこいい感じやん!)
赤嶺ゆり「ま、小説のネタ探しに遊び半分で掻き乱されても困るしな。監視役という意味でもバディは必要だろう」
柴崎祈「そ、そんなわけないじゃないですか〜」
乾航介「ネタにするならぜひ俺を!」
柴崎祈「・・・」
赤嶺ゆり「そいつには私から連絡しておく。柴崎も何か進展があればいつでも連絡してくれ」
柴崎祈「わかりました!ありがとうございます!」
赤嶺ゆり「こんなところに呼んで悪かったな。これから、よろしく頼む」
柴崎祈「いえ!私なんかで良ければいつでも協力させていただきます!」

〇警察署の廊下
乾航介「良かったんですか?一般人なんかに大事な捜査を頼んで」
乾航介「もしかしたら彼女が犯人っていうことも・・・」
赤嶺ゆり「それはないだろうな」
乾航介「なぜですか?」
赤嶺ゆり「彼女の目からは小説を書くためなら何でもしますと言わんばかりの渇望を感じた」
赤嶺ゆり「もし彼女が犯人ならわざわざ警察署に来てまで捜査協力をしたいとは言わないだろう」
赤嶺ゆり「人は抑圧された環境や特殊な環境でない限りは自分の欲望のために素直に行動するものだ」
赤嶺ゆり「まぁ、それは私も変わらないがな」
乾航介「なるほど・・・赤嶺さん、見てるとこがやっぱ違うな〜」
赤嶺ゆり(私も結局、私欲のために彼女を利用したに過ぎない・・・)
赤嶺ゆり(しかし、あの目・・・あの渇望の目は、真実を追い求めるやつの目と一緒だった)
赤嶺ゆり「案外いいバディになるかもしれんな・・・」
乾航介「え?何がです?」
乾航介「もしかして今僕と赤嶺さんがいいバディって言いました?」
乾航介「言いましたよね!?」
赤嶺ゆり「はぁ・・・」

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