エピソード11(脚本)
クスクス──
クラスメイト達の唇が笑っている。
女の子たちの唇が動く。
クラスメイト「雨宮さんってキモチワルイよね~」
クラスメイト「こっち来ないで欲しいよね~」
クラスメイト「話し方変だよね~」
聞こえるはずもないのに、
女の子たちは陰湿に口元を隠していた。
〇川沿いの公園
我に返ると、
お姉さんが体を後ろにそらせて、
不審な目で私を見てる。
雨宮 ゆりか「このままじゃ日笠君が死んじゃう」
雨宮 ゆりか「お願い、私の唇、動いて!」
唇にめいいっぱいの力を込めて叫んだ。
雨宮 ゆりか「「たきゅちぇて!」(助けて)」
──言えた
が、私の第一声にお姉さんが驚いた。
無理もない。
突然現れて息を切らして、
聞いたこともない言葉を話しているのだ。
伝わらないもどかしさに涙まで出てきた。
雨宮 ゆりか「「おびょれてるの!」(溺れているの)」
きっと私はひどい顔をしている。
おねえさんの表情を見ればわかる。
どうしよう。
かかわってはいけない人と
判断される前に伝えないと──
雨宮 ゆりか「(私の好きな人が溺れてるの! 助けて)」
声にならない声が悔しい。
伝えたくても伝わらないのが
こんなにも悲しいなんて。
脳裏に日笠君の顔が浮かぶ。
日笠君ならどうするかな・・・
日笠君の笑顔、唇、手の動きを
思い浮かんだ瞬間、私は閃いた。
〇川沿いの公園
『向こうの川で友達が溺れています。
助けてください』
私はスマホ画面をお姉さんに見せた。
あの日、
日笠君が私とコミュニケーションを
取った方法だ。
スマホ画面を見ると
お姉さんは急いで、
近くを通りかかった男性に
事情を説明してくれた。
その男性に日笠君は無事に助けられた。
数分後、
お姉さんが呼んでくれた警察と
救急車が駆けつけるサイレンの光が見えた。