エピソード12(脚本)
〇大学病院
〇病室(椅子無し)
──病室
日笠 さとる(あの後、どうなったんだっけ)
全体が白い壁に覆われた
個室の病室で僕は目を覚ました。
日笠 さとる(たしか、雨宮さんの ハンカチを拾おうとして、 溺れてそれで・・・)
ふと気づくと、
雨宮さんはベットの隣の椅子に腰かけ、
そのまま体をベットに預けている。
つまり、僕の下半身を枕にして寝ていた。
このシチュエーションにドキドキした。
スマホを確認すると、
7月7日 10時と表示されていた。
日笠 さとる(雨宮さんと映画に行ったのが、昨日)
日笠 さとる(昨日の夕方に溺れて助けられて、 今朝、雨宮さんがお見舞いに来て、 僕が目覚めたってことかな・・・)
声を出せない彼女が
どうやって助けを呼んだのかは
わからない。
でもきっと必死になってくれたんだろう。
その姿を想像すると嬉しくて、
愛おしくて──
日笠 さとる「ありがとう」
そうつぶやいて、
僕は雨宮さんの頭をなでた。
すると雨宮さんの表情がニヤっと笑った。
日笠 さとる「──え、起きてたの?」
雨宮 ゆりか「『実は寝たふりでした~』」
雨宮さんが
新しいおもちゃを見つけた
子供のような笑顔をしている。
彼女のニヤニヤが止まらない。
やばい、これはきっといじめられる──
雨宮 ゆりか「『そっか~、 日笠君は女の子が寝ている隙に 体を触っちゃういやらしい人なんだ~』」
日笠 さとる「『体じゃなくて頭だし!』」
雨宮 ゆりか「『それに「愛してる」って言ってたね~』」
日笠 さとる「『「ありがとう」だよ! 聞き間違いだって!』」
雨宮 ゆりか「『ごまかしたってダメだよ? 私は読唇術ができるんだから』」
そういって
彼女は右手をキツネの形に変えた。
キツネの口がパクパクしている。
その意味は知っている──
雨宮 ゆりか「──ほんと、おバカさん♪──」
雨宮さんの行動にキュンと来ました!