盤上のリトルマーメイド

望月 風花

エピソード8(脚本)

盤上のリトルマーメイド

望月 風花

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〇改札口前
  午前10時、
  太陽の日差しがさんさんと降り注ぐ、
  駅の改札は混雑していた。
日笠 さとる(本当に来てくれるかな・・・)
日笠 さとる(当日ドタキャンなんてことも・・・)
雨宮 ゆりか「日笠くん!」
雨宮 ゆりか「『ごめんね、待った?』」
日笠 さとる「『ううん、僕も今、来たとこ』」
  ドラマやマンガでよくある
  セリフを交わした。
  
  少し違うのは声には出さず、
  手話で話したことだ。
日笠 さとる「『じゃあ、行こっか!』」
日笠 さとる(よし、リードできている)
  ショッピングモールの4階、
  一番奥の部屋に僕らが目指す
  映画館がある。
  僕のリードができたのは
  ショッピングモールの入口に
  入るまでだった。
  エレベーターの場所すら
  キョロキョロ探している僕に
  雨宮さんが道順を教えてくれた。
  その後は雨宮さんの後ろを
  ついていく形になった。
日笠 さとる(うう・・・ 情けない・・・)

〇映画館の座席
  ──あの大人気ドラマ「ドクターY」が、
  この冬映画になって帰って来る!──
日笠 さとる「『あのドラマ、映画になったんだね』」
雨宮 ゆりか「『ホントだ。 私あのドラマめっちゃ見てた!』」
  僕ら以外にもお客さんはいるが、
  この会話は僕らだけにしかわからない。
  この広い宇宙で、宇宙で一番好きな人と、
  二人だけの言語で会話するのが幸せだった。

〇エレベーターの前

〇ショッピングモールのフードコート
  ──デパート1階、フードコート
  映画も終わって、
  二人で感想を言い合いながら
  フードコートに向かった。
  彼女はロコモコ丼を注文し、
  僕は醤油ラーメン。
  
  もっとオシャレなものを
  頼めばよかったとちょっと後悔した。
雨宮 ゆりか「『日笠君はどこの高校を考えているの?』」
日笠 さとる「『う~ん、まだ漠然としか 考えてないんだ。雨宮さんは?』」
雨宮 ゆりか「『私は、令和高校に行きたいな。 すごくオシャレな高校だから』」
  令和高校はその名の通り、
  令和元年に開校した高校だ。
  
  開校まもないというのに
  偏差値は60以上の超名門校だった。
日笠 さとる「『すごい! 雨宮さんは頭がいいもんね』」
雨宮 ゆりか「『ありがとう。 でも、友達を作れるか不安なんだ・・・』」
日笠 さとる「『雨宮さんなら、きっとできるよ。 性格は明るいし、優しいし』」
雨宮 ゆりか「・・・」
雨宮 ゆりか「『あの、日笠くん・・・』」
日笠 さとる「『ん? なに?』」

  『私ね、実はいじめられてたんだ・・・』

〇山中の川
  ショッピングモールを出て、
  近くの有名なせせらぎを歩いた──
  会話はない。
日笠 さとる「『そろそろ・・・。帰ろっか。』」
雨宮 ゆりか「『・・・。そうだね・・・。』」
  そして僕らの足は、駅に向かった。
  このまま進めばお別れだ。
  少しでも別れの時間を遅らせたくて、
  僕は立ち止まり、
  ペットボトルのお茶を飲もうとした。
日笠 さとる「ゴホッ」
  勢いよく飲んだのがまずかった。
  お茶が肺に入り、僕はむせてしまった。
  ──本当にカッコ悪い・・・
雨宮 ゆりか「『大丈夫? これ使って・・・』」
  こんなきれいなハンカチを
  僕のお茶で汚すわけにはいかない。
日笠 さとる「『ありがとう。 でも、もう大丈夫だから・・・』」
雨宮 ゆりか「『あ、ハンカチが!』」
  雨宮さんのハンカチが
  風に飛ばされて宙を舞う。
  
  運悪くせせらぎに落ちてしまい、
  川の流れに沿って行った。
  ──僕のせいだ・・・。
日笠 さとる「『取って来るね。ちょっと待ってて』」
雨宮 ゆりか「『危ないよ! ハンカチの一枚くらい大丈夫!』」
  男としてそうはいかない。
  何もかも僕のせいなんて嫌だ。
  それにかっこいいところを見せたい。
  川の速さはそこそこだが、
  幸いいくつか乗れそうな石があった。
  石場を伝って、川の中央までやってきた。
  そしてタイミングを計って身をかがめた。
日笠 さとる「よし! 取れた!」
日笠 さとる「あ!」
雨宮 ゆりか「『日笠君!!』」

  水流が邪魔して、うまく立てない。
  服がみるみる水を吸っていき、
  服にボーリング球を
  くくりつけられているみたいだ。
  ──やばい、溺れる・・・

次のエピソード:エピソード9

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