特異地蔵譚

わらやま

サモトラケのニケ地蔵 対策課(脚本)

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〇飛行機内
不動 明夫「おじさん!! もう少しでフランス着くね!!」
識者「ああ。順調なフライトでよかった。 約束の時間まで時間があるから、予定通り先にルーブル美術館を見て回るかな」
不動 明夫「やったー!!」
識者「久しぶりの海外案件だが、あんまりはしゃぐなよ」
不動 明夫「オッケー」

〇華やかな広場
識者「ふぅ・・・ようやく全部回れたな。 どうだった?初めてのルーブルは?」
不動 明夫「なんて事はなかったわ」
識者「おい!!言いたいだけだろ!!」
不動 明夫「すごくよかったよ。ヨーロッパの美術家ってのもなかなかだねぇ」
不動 明夫「ま、僕は成田山新勝寺の方が好きかな」
識者「まったく・・・ まあ、お前はそうだろうが・・・」
識者「そろそろ約束の時間だ。館長に会うぞ」

〇貴族の応接間
美術館館長「あなた方が日本の特異地蔵対策課の・・・!?」
識者「ええ、十三と申します」
美術館館長「失礼ですが、そちらの少年は・・・ あなたの子供か何かですか!?」
不動 明夫「僕も特異地蔵対策課だよ!!」
美術館館長「ああ、これは失礼。アジア人はだいぶ若く見えるもので・・・」
識者「それで館長・・・依頼というのは・・・ といっても先程美術館は見せてもらったから、何となく分かってはいるが・・・」
美術館館長「流石の審美眼ですね・・・」
美術館館長「ええ、実はうちの展示品の『サモトラケのニケ』・・・3日前から行方不明なんです」
識者「やはり今置いてあるのはレプリカでしたか」
美術館館長「ええ、まさか私が館長をしている間に特異地蔵化するとは・・・」
美術館館長「依頼は、サモトラケのニケの破壊です」
不動 明夫「・・・」
美術館館長「もし、ルーブルの管理していた美術品が人々に迷惑をかけたとなると・・・」
美術館館長「ルーブル美術館の権威は地に落ちます」
美術館館長「何とか秘密裏に解決いただきたい」
識者「盗難という可能性は無いと思ってよいのかな?」
美術館館長「この美術館の警備は世界最高峰だ・・・ カメラには人っ子一人映っていなかった。 映っていたのは・・・」
美術館館長「サモトラケのニケが動いて美術館を出る所だけだ・・・」
不動 明夫「自律型特異地蔵『サモトラケのニケ地蔵』・・・」
識者「ああ・・・間違いないな・・・」
識者「よく我々に相談いただけました・・・ 必ずや解決しましょう」
美術館館長「ああ・・・頼むよ・・・ だが、どうやって居場所を突き止めるんだ!?」
識者「自律型特異地蔵の誕生時の行動パターンはある程度決まっています」
識者「自分が作られた縁の地に向かおうとするのです」
不動 明夫「それに、人間への擬態能力があるんだ!!」
不動 明夫「今頃人間に化けて移動してるはずだよ」
美術館館長「なるほど・・・ サモトラケのニケの縁の地となると・・・」
識者「ええ、おそらくギリシャのサモトラケ島に向かったと思います」
識者「美術品由来の特異地蔵は、人々の思いを受けてストーリーを重視しますから」
美術館館長「我々も向かいましょう」

〇西洋の住宅街
おじいさん「ほう、ここがサモトラケ島かぁ」
おじいさん「なかなか風光明媚じゃわい。退職金を注ぎ込んで旅行に来たかいがあったわい」
おじいさん「ここでサモトラケのニケが見つかったんじゃなぁ」
おじいさん「ほう、現地の方もワシと同じように思いにふけっておるようじゃ」
???「あなたは・・・」
おじいさん「な、なんじゃぁ!?」
???「あなたは何に勝利したいですか?」
おじいさん「へぁ、勝利!?どういうことじゃ!?」
おじいさん「んー、まあ、強いていうなら近所の・・・」
不動 明夫「うぉぉぉぉぉ!!待った待ったぁ!!」
おじいさん「な、なんじゃ!?日本人の少年!?」
不動 明夫「おじいさん!!ごめん!!」
おじいさん「ガフっ!!何故!!」
美術館館長「はぁはぁ・・・速いな・・・」
識者「はぁはぁ・・・だが、何とか間に合った・・・」
不動 明夫「サモトラケのニケ地蔵は、依頼者の勝利の代償に首と腕をもぐ。それがどんな願いであっても」
???「あなたは勝利が欲しくないの・・・!?」
不動 明夫「勝利とは自分の手で掴むもの!! 君の助けはいらないのさ!!」
???「私の助けがいらない・・・!?」
???「ソンナコトハナイナイナイナイナイナイ」
識者「姿を表しましたね!!」
不動 明夫「おじさん!!いいよね!?」
識者「ああ、頼む!!」
識者「不動明王地蔵!!」
不動 明夫「うぉぉぉぉ!!」
美術館館長「な、その姿は!?」
識者「不動君は、日本政府が管理している自律型特異地蔵の一体」
識者「その名も『不動明王地蔵』」
不動明王地蔵「いくぜ!!」
サモトラケのニケ地蔵「私は・・・私は勝利を捧げなくてはいけないのだ!!」
不動明王地蔵「へっ!!特異地蔵化して間もない奴のセリフって感じだな!!」
不動明王地蔵「そんな人間共の都合なんて気にしてるなよ!!」
不動明王地蔵「どんな思いで作られてようが、アンタはアンタなんだぜ!!好きに生きりゃいいのによぉ!!」
サモトラケのニケ地蔵「好きに・・・生きる!?」
不動明王地蔵「ああ!!」
サモトラケのニケ地蔵「でも、私は・・・」
サモトラケのニケ地蔵「人々に勝利をもたらせたい!!」
サモトラケのニケ地蔵「勝利の女神として!!」
不動明王地蔵「そうかい!?素晴らしい偶像っぷりだぜぇ」
不動明王地蔵「じゃあな!!」
識者「ちょっと待て待て!!不動!!」
不動明王地蔵「あ!?」
識者「特異地蔵じゃなくなっている!!」
不動明王地蔵「ほ、本当だ!?」
不動 明夫「ふぅぅ・・・ 珍しいね・・・」
識者「おそらく、作られた時の思いと特異地蔵としての自我の思いが同一だったため、一偶像として生きる事を選んだのだろう」
不動 明夫「僕にはわからないな。その感情は・・・」
不動 明夫「それがアンタの選択か・・・」
美術館館長「あ、ありがたい!!まさか無傷で返ってくるとは思わなかった」
不動 明夫「館長・・・出来たらでいいんだけどさ・・・」
不動 明夫「いつかこの子をルーブルじゃなくて、ここ、サモトラケ島で展示するように出来ないかな」
不動 明夫「この地で勝利の女神ニケとして過ごしたいと思うんだよね」
美術館館長「ああ・・・善処しよう」

〇飛行機内
識者「今回は無事に任務が終わってよかった」
不動 明夫「僕のおかげだったでしょ」
識者「ああ、不動のおかげだ。戻ったら身体を拭いてやる」
不動 明夫「やったー」
不動 明夫「じゃあ僕トイレ行ってくる!!」
識者「ああ、行ってこい!!(行く必要ないけど)」
識者「ふう、不動はコントロールしやすくて助かるよ」
識者「他の地蔵だとこうはいかんからなぁ」
識者(しかし今回の任務・・・ あわよくば仲間に出来るタイプの地蔵だったらよかったのだが・・・)
識者(地蔵文書にはそこまでは書いていないからやむを得ないが・・・)
識者(来たる『始祖の地蔵』との戦いはいつ来るかわからないのだから)

次のエピソード:週末地蔵 オムニバス

コメント

  • 新キャラ登場!不動くん良いキャラですね、わーい、見た目少年!😆
    対策課の存在を不思議に思いつつ、それぞれ独立した話かと思っていたら、全てを繋ぎそうな設定が出てきましたね!😳
    立ち絵問題にも活路が✨️

  • ニケ地蔵、腕と首をもぐとかナイナイナイとか怖すぎワロタ😂 表紙を見た時、なんかヤベーの来た気がするな…と思っていた予感が当たりました 笑
    不動くんの名前は素直に不動明王からきてるのか、それともデビルマン…?とか思ってたら、両方な感じでしたね 笑 まさか地蔵とは思いませんでしたが…これはストレートにカッコいい!
    そして始祖地蔵、地蔵文書…スゴいワードが出てきてワクワクとニヤニヤが止まりません🤣

  • 初めてのルーブルはなんてことはなかったわ。始祖地蔵。地蔵文書。聞き覚えのあるワードにニヤニヤしっぱなしの在ミグ。次は汎用地蔵型決戦兵器が…… などと妄想を垂れ流すのだった。さ〜て次回もサービスサービスゥ!

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