トウベツピリカコタン

ゆきんこ

第十話 めぐり逢い(脚本)

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ゆきんこ

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〇一戸建て
新(あらた)「・・・」
新の母「あら!」
新の母「帰ってきたなら、ただいまくらい言いなさいよ新!」
新(あらた)「わりー、考え事してて・・・」
新(あらた)「ねえ、オフクロ」
新(あらた)「俺の胸ポケットに万年筆なんて、入れてないよね?」
新の母「どんな万年筆なの?」
新の母「なんか、歴史を感じる万年筆ねー! ほら、お宝鑑定団とかに出したら高そう!」
新の母「あんたの胸ポケットに入ってたって、まさか万引きとかじゃないでしょうね?」
新(あらた)「違うわい! それなら、オフクロにわざわざ聞かないだろ」
新(あらた)「お宝・・・?」
新(あらた)「確かに年代物かも。不気味だと思ってたけど、ラッキーチャンスか!?」
新の母「そういえば」
新の母「今日からじゃなかったの? コンビニのバイトって」
新(あらた)「ヤベッ、支度しなきゃ!」

〇コンビニのレジ
新(あらた)「今日からこのセブンウレブン当別店でお世話になります、新です!」
新(あらた)「宜しくお願いします!」
桜(さくら)「初日から遅刻しておいて、よくヘラヘラしていられるわね〜!」
桜(さくら)「これだから学生バイトは嫌なのよ」
桜(さくら)「ハイ、じゃあ商品の補充から教えますので、倉庫に行きましょう」
新(あらた)「優しそうなお姉さんで、ラッキー!」

〇備品倉庫
新(あらた)「やっと休憩〜!」
新(あらた)「コンビニのバイト、舐めてた!」
新(あらた)「次々と補充にレジ打ちで、ボケっとしている時間なんて無いぞ」
新(あらた)「続けられるかなあ・・・」
桜(さくら)「お疲れ」
新(あらた)「うおっ、お茶と唐揚げ弁当! いいんスか!?」
桜(さくら)「初バイトなんだって?」
桜(さくら)「どうせ遅刻してきたから、夜ご飯の用意もしてないんでしょ?」
新(あらた)「神〜!」
新(あらた)「桜さんて、何才なんですか?」
桜(さくら)「ち、ちょっと、」
桜(さくら)「あんたは若いから良いけど、初対面で女の人に年聞くのは失礼なのよっ!」
新(あらた)「いーじゃないスか、桜さんも十分、若いじゃん」
桜(さくら)「あんたよりは年上よっ! デリカシーの無いやつね〜」
新(あらた)「はは。桜さんて、カワイイね」
桜(さくら)「なっ・・・大人の女をからかうんじゃ、ありません!」
桜(さくら)「もー調子狂うなあ。 なんなのよ、コイツ〜!」

〇女の子の一人部屋
桜(さくら)「佐久間新くん、16歳か・・・」
桜(さくら)「ハッ、私ったら、4つも年下の学生さんと何かあるわけないじゃない」
桜(さくら)「それより、この櫛」
桜(さくら)「キレイ」
桜(さくら)「骨董品に見えるけど、よく手入れされているわ。 まるで、つい最近作ったみたい」
桜(さくら)「不思議な櫛・・・」

〇コンビニのレジ
客「だから、いっつもタバコ5個買ったら、ライター付けてくれるんだよー」
客「早くくれよ!」
新(あらた)「わ、私は、カートンでタバコ買ったお客様にだけ、ライターはサービスするって聞いていました」
新(あらた)「お店の規則なんです」
客「ハアっ!? 俺が、ウソついてるって言うのかよ」
客「店長出せ!」
桜(さくら)「いらっしゃいませ~あら〜! 常連の横田さま〜!」
桜(さくら)「いつものライター、ハイどうぞ!」
桜(さくら)「ウフ、今日は特別に2個サービスしちゃおっかなあ♪」
客「なんだよ、やっぱりいつものねーちゃんは違うな!」
客「ありがとよっ! またなっ!」
新(あらた)「桜さん、ありがとうございます・・・でも俺っ・・・」
桜(さくら)「分かってるわよ。 新くんは、正しいわ」
桜(さくら)「でもね学校とは違うから、今みたいにグレーゾーンのサービスもあるってこと」
桜(さくら)「あんな客に関わってる時間、勿体無いでしょ?」
新(あらた)「桜さん、カッケー!」
新(あらた)「今度、助けてもらったお礼に夕飯おごらせてくださいねっ」
桜(さくら)「学生のクセに、何いってんのよ!」
桜(さくら)「だいたい、お金がないからバイトしてるんでしょ? 人に使うくらいなら貯めなさいよ」
新(あらた)「オフクロみたいなこと言いますね!」
桜(さくら)「恋愛対象外!」
店長「桜ちゃーん、いつも変な客の対応、ありがとねっ!」
店長「お礼にと言うのも何だけど」
店長「映画のペアシートあるけど、週末にでも彼氏と行ったら?」
店長「あ?」
店長「桜ちゃんて、彼氏いたっけ?」
桜(さくら)「てんちょお〜、それパワハラ! ベアですよね?カップルシートじゃないですよね!?」
新(あらた)「俺、映画好きなんですよ! 一緒に行きたいなー」
店長「丁度イイわね♪ 2人でいってらっしゃい」
桜(さくら)「エエーッ!?ウソでしょ!?」
桜(さくら)「16歳とデート?」

〇炎
「待って・・・行かないでくれ・・・」
新(あらた)「サクアっ!!」

〇一人部屋
新(あらた)「ハア、ったく」
新(あらた)「また『サクア』かよ」
新(あらた)「最近、いつもこの言葉ばかり叫んで起きるんだよな」
新(あらた)「何の意味があるんだ?」

〇映画館のロビー
桜(さくら)「ゴメンね・・・待った?」
桜(さくら)「もうちょい、女のコっぽい格好の方が良かったな・・・でも、意識してると思われるのも困るし・・・」
新(あらた)「いえ、自分も今来たばかりです!」
新(あらた)「桜さん、肩出てるぞ・・・脇がセクシー!」
桜(さくら)「映画の内容、明治時代のドキュメンタリーかあ。 店長がチケットくれるはずだわ」
桜(さくら)「新くんには、つまらないかもね?」
新(あらた)「そんなことないっス! 自分、歴史好きなんで!!」
桜(さくら)「意外〜そうなんだ? なら、お城や骨董品とか好きかしら?」
新(あらた)「そーですね。 あ、見てください。 俺こんなの持ってるんですよ」
桜(さくら)「素敵な万年筆ね! 型は古そうだけど、とってもキレイね」
新(あらた)「ですよね! たまたま手に入れたんですけど、鑑定団に査定してもらったら百万とかになったりして!?」
桜(さくら)「アハハ! 歴史好きって、結局お金なの?」
桜(さくら)「私もたまたまなんだけど・・・」
新(あらた)「おおっ!これは匠の作品ですか?」
桜(さくら)「入れた覚えがないんだけど、なぜか私のポケットに入っていたの」
新(あらた)「え!?俺と同じじゃん・・・」
桜(さくら)「ウソ!」
桜(さくら)「新くんの万年筆も、いつの間にかポケットに入っていたの?」
新(あらた)「スゴイ偶然・・・ですね」
桜(さくら)「あ、映画始まるから、中に入ろう!」
「不思議──」

〇映画館の座席
新(あらた)「あれ、今『サクア』って言いましたよね?」
桜(さくら)「うん。 ほら、字幕に──この女のコの名前みたい」
新(あらた)「サクア・・・」
桜(さくら)「思いの外、真剣に観ているわ。 高校生には難しいかと思ったけど、本当に歴史が好きなのかも」
「・・・」
「アレッ」
桜(さくら)「もしかして、感動した?」
新(あらた)「分かります? なんか、やべー俺、泣きそうかも」
桜(さくら)「目を、赤くしちゃって、カワイイ!」

〇見晴らしのいい公園
桜(さくら)「今日は楽しかったー!」
新(あらた)「俺もです。 また、一緒に映画行きましょうね!」

〇黒背景

〇見晴らしのいい公園
桜(さくら)「・・・?」
桜(さくら)「なんだろう、今の感じ」
桜(さくら)「何かを思い出しそうな・・・」

〇黒背景

〇見晴らしのいい公園
新(あらた)「花火だ!」
新(あらた)「今日は、夏祭りの前夜祭でしたね!」

〇花火

〇黒背景

〇見晴らしのいい公園
新(あらた)「この感覚は・・・夢の最後の時のような」
新(あらた)「サクア・・・」
桜(さくら)「ナオ・・・」
「あっ・・・!?」
「思い出した!」
「・・・」
新(あらた)「ホントに・・・サクア?」
桜(さくら)「アハハ!」
桜(さくら)「ナオこそ、頭が尖ってるよ!」
新(あらた)「櫛を出して!」
新(あらた)「ありがとう、持っていてくれて。 俺も持っていたよ」
桜(さくら)「残念だったわね、100万にならなくて!」
新(あらた)「新の記憶もあるから、変な気分だけど・・・」
新(あらた)「これで俺たち、アプフチカムイの試練をクリアできたのかな?」
桜(さくら)「分からない。 今の私には、なんの力も無いから、カムイたちの声が聞こえないの」
桜(さくら)「アプフチカムイは『強い絆』を示せって言ってたわ」
桜(さくら)「どうやって元の世界に帰れるのかしら」
新(あらた)「もし、帰れなかったとしても」
新(あらた)「どうでもいいよ──」
桜(さくら)「え?」
新(あらた)「時代や、年代が違っても、サクアにまた、めぐり逢えた」
新(あらた)「俺は何処でも、何度だって、サクアに言うよ」
新(あらた)「ずっと一緒に居よう」
桜(さくら)「ナオ、今だから言うけど」
桜(さくら)「あなたに初めて出会った時に猟をしていたあなたを陰で見ていたのは、」
桜(さくら)「一目惚れだったからよ」
桜(さくら)「この櫛に誓います」
桜(さくら)「苦しみましょう。死ぬまで」

〇渋谷のスクランブル交差点
  令和におけるアイヌのひとたちを取り巻く状況は近年、大きく変化しており
  アイヌの人たちが民族の誇りをもって生活できること、その誇りが尊重される社会の実現を図り、
  もって道民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指している。
  (※北海道HPアイヌ政策推進局アイヌ政策課から引用)

〇農村
トウベツの子供「課外授業楽しい〜! 学校より、外はキモチいいな〜!」
トウベツの子供「グループ活動なんたから、サボるな男子!」
トウベツの子供「女子が怒ると、母ちゃんみたいだな! ちゃんと考えてます〜!」
トウベツの子供「『トウベツの歴史を町並みから読み取る』だろ?」
トウベツの子供「思ったんたけど、トウベツの町中を流れる川の名前って、アイヌ語だよな」
トウベツの子供「パンケチュベツシナイ川でしょ?」
トウベツの子供「もしかして、昔トウベツにもアイヌの人が住んでいたのかなあ?」
トウベツ学園の先生「良い推理ね!」
トウベツ学園の先生「先生、トウベツで生まれ育ったけど、家のご先祖さまにも、アイヌの人が居たって聞いたことがあるわ」
トウベツ学園の先生「今日はその推理をもとに、トウベツの歴史とアイヌの歴史について一緒に調べてみようか!」
「はーい」
  令和4年4月 一体型義務教育学校『とうべつ学園』開校。
  トウベツ開拓から150年。
  伊達邦直が裸一貫で切り開いた、武士たちの夢の地トウベツは、
  石狩管内一の穀倉地帯であり、今もなお、新たな挑戦を続けている。

〇黒背景
  『トウベツピリカコタン』
   Fin.

コメント

  • 2人、巡り会えましたね。今があるのも、2人(当時の人たち)が苦労しながらも築きあげた土台があってこそなんでしょうね。大変勉強になりましたし、何より歴史とフィクションを組み合わせたストーリーにとても感動しました。ありがとうございました。

  • 全10話通じて、心揺すぶられました!当別という地、そして開拓期の北海道について、より一層身近に感じられます。
    最終話も、尚継とサクアの立場諸々が逆転した関係が見られ、そんな2人の様子がすごく新鮮で可愛らしいですよね!
    完結お疲れ様でした。そしてありがとうございました!

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