さつらもん

Saphiret

エピソード6(脚本)

さつらもん

Saphiret

今すぐ読む

さつらもん
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇綺麗な部屋
  改めて無間に向き合うと
  干からびたような腕をこっちにむかって引っ搔くような仕草を繰り返している
田中真司(たなかしんじ)(御札で縛られているとはいえ、やっぱり不気味だな)
田中真司(たなかしんじ)(あ、刀がまた重くなった)
田中真司(たなかしんじ)(そうか、怯む気持ちの分だけ重くなるんだ)
田中真司(たなかしんじ)(どんな仕組みか分からないけど法則はそういうことだ)
田中真司(たなかしんじ)(怖気づいては、刀が返って不利に作用してしまう・・・)
  刀の柄をぐっと握り込むと、一度大きく息を吸い込んだ
田中真司(たなかしんじ)「無間、さん! あなたはいったいどこから来たんです?」
  と、無間の目の焦点がこちらに向けられた
  貴様のような小物ごときに問われる謂れは無い
  無間の目の色がどす黒い赤色に変色した
  そして・・・こちらを見ながらゆっくりと顔を右に傾ける
  なりそこないのさつらもんに少々智恵をつけられたからと言って吾を見くびるな
  今度は顔を左に傾ける
  吾が本気になれば貴様のとぼしい魂など、ひと飲みだ
  自分の魂が飲み込まれ、崩れていくのがどんな心地か教えてやろうか?
  無間は顔を右に傾け、左に傾けしながら再び近づいてくる。
  血走った目で睨みつけられると、恐ろしさで心臓がバクバクする。
  すると、みるみるうちに刀が重みで下がっていく
田中真司(たなかしんじ)(ダメだ、ここで踏んばらないと! さっきわかったはずだ、これは・・・)
田中真司(たなかしんじ)(全部、無間のまやかしなんだ!)
田中真司(たなかしんじ)(分かっているけど、無間の、圧が、毒気がすごい・・・)
  意思に反して自分の体が、足が、後ろに下がりそうになる。
  と、その時・・・
  ──真司
田中真司(たなかしんじ)(え? 札浦さん!?)

〇黒背景
  ──自分の信じるべきを見極めないと、
  相手の良いように取り込まれる──

〇綺麗な部屋
田中真司(たなかしんじ)(そうだ。 自分の信じるべきを見極めないと・・・!)
田中真司(たなかしんじ)(これはさっきと同じ、無間見せているまぼろし・・・)
田中真司(たなかしんじ)(無間の本当の姿は御札で札で縛り上げられている、あの姿だ)
田中真司(たなかしんじ)(勇気を振り絞ってしっかりするんだ、しっかりと・・・)
田中真司(たなかしんじ)「しっかり見極めるんだ!」
田中真司(たなかしんじ)(あ、思わず言葉に出てしまった)
  何だと!?
  と、飾り刀がふわりと軽くなる
田中真司(たなかしんじ)「あ、刀が・・・軽くなった!」
田中真司(たなかしんじ)(・・・だけじゃない。 これは、光ってる?)
  刀身も柄も、微かに発光している
殺裏比可理(さつうらひかり)「いいね、田中真司 空気が変わった」
  無間を睨んだまま、振り向かず頷く
田中真司(たなかしんじ)「はい!」
  刀から何か勇気みたいなもの──
  エネルギーが流れてくるような感じがする
  すかさず手にグッと力を入れて、刀を上向かせた
田中真司(たなかしんじ)(もう、無間のまやかしに惑わされない!)
  無間を真正面からしっかり見つめる
田中真司(たなかしんじ)「あなたはいったいどこから来て、何のために人に憑りついたりしてるんです!」
  こ、小童が小賢しいぞ
田中真司(たなかしんじ)「答えて下さい!」
  う・・・
  し、知るか!
  掠れた叫び声のあと、無間の体がひゅっと萎んだ
田中真司(たなかしんじ)「自分のことなのに、知らないわけないでしょう」
  1歩、踏み込んで無間との距離を詰める
  知らぬ、分からぬ!
  何も覚えていない!
  来るな!
  無間はみるみる小さくなって文字の書かれた御札の隙間に吸い込まれていく
田中真司(たなかしんじ)「あ、ちょっと!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「待て!」
  札浦さんが僕を追い越して、御札の塊に足早に近づく
殺裏比可理(さつうらひかり)「オン イサナエ ソワカ!」
田中真司(たなかしんじ)(どうしたんだろう・・・ 何だか慌てている?)
  気になって、札浦さんのそばに行く
田中真司(たなかしんじ)「札浦さん、何かまずかったですけ?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「いや、田中真司はよくやった」
殺裏比可理(さつうらひかり)「無間が結界の中に逃げ込んだのがその証しだよ」
田中真司(たなかしんじ)「じゃあ、なんで・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ここで奴をつかまえておきたい理由はいくつかあるけど」
殺裏比可理(さつうらひかり)「その1つは、少々大事な局面ってことかな」
  僕と話しながらも札浦さんは、無間に向かって両手を不思議な形に組んだりかざしたり、
  気合みたいな掛け声をかけたりして、
  御札の中に逃げ込もうとするのを阻止し続けた
  ううっ、やめろ、やめろ・・・
  そのたびに無間が激しいうめき声をあげる
殺裏比可理(さつうらひかり)「凶つ者は本来、心根が弱い者が多い」
  札浦さんは無間から目を逸らさず、呪文の攻撃を続けながら話を続けた
殺裏比可理(さつうらひかり)「核心に迫ると、その弱い所が隠しきれなくなる」
田中真司(たなかしんじ)「はあ・・・」
田中真司(たなかしんじ)(さっきの無間のうろたえぶりを見ると、何となくわかる気もする)
殺裏比可理(さつうらひかり)「それを恐れて取る行動はたいてい3つ。 田中真司、分かる?」
田中真司(たなかしんじ)「ええと、 さんざん、怖がらせて今度は逃げたけど・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「遅い! 時間切れ」
田中真司(たなかしんじ)「制限時間、早くないですか!?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「瞬時に答えを見つけるのも、凶つ者を扱う技のひとつだよ」
田中真司(たなかしんじ)「そんな! 今日初めて体験しているんですよ、プロみたいなこと言われても・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「凶つ者の行動パターンだけど」
田中真司(たなかしんじ)「無視かよ!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「まず威嚇する、それがだめなら逃げるか閉じこもる、それもだめなら・・・」
田中真司(たなかしんじ)(さっき札浦さんは「少々大事な局面」って言わなかったか?)
田中真司(たなかしんじ)「あっ、もしかして縁を辿れる段階に近づいてるってことですか?」
田中真司(たなかしんじ)「つまり・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「つまり、観念して全て白状するってこと」
田中真司(たなかしんじ)(言おうと思ったのに!)
  札浦さんの攻撃で無間はなかなかお札の塊の中に入りきることができないでいる
殺裏比可理(さつうらひかり)「ただ一度籠城すると引きずり出すのに結構、手間がかかるからね」
田中真司(たなかしんじ)「そしたら結界を解けばいいんじゃないんでうすか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「結界のしくみを逆利用して中から鍵をかけようとしてるんだよ」
田中真司(たなかしんじ)「そんなことができるんですか!?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「自分の魂を削るような技だけどね。 それだけあいつも必死なんだよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ここはぜひともお引止めしたい それに・・・」
  おのれ、うおおおおおおお!!
  だいぶ弱ったように見えた無間が咆哮をあげた
  頭が割れそうな騒音に思わず耳をふさぐ
田中真司(たなかしんじ)「あっ!」
  無間が最後の力を振り絞って、御札の塊の中に無理やり自分の体を押し込めようとしている
殺裏比可理(さつうらひかり)「ったく、往生際の悪い・・・ これ以上手間をかけさせないで」
殺裏比可理(さつうらひかり)「田中真司、それ貸して!」
  言うと札浦さんは僕の持っていた刀を取り上げ無間を狙って投げた
  無間は後ろ左足首だけを残して、今にも全部御札の塊の中に入ろうとしていた
  飾り刀はひゅうっと音を立てて無間に向かって真っすぐに飛んでいった

成分キーワード

ページTOPへ