恋の神様は襟足が長い

サカミキ

第六話 傍にいたい (脚本)

恋の神様は襟足が長い

サカミキ

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〇開けた交差点
奏羽「あっ、ココ俺が事故ったとこだ こんな近くだったんだな」
夕凪「やっぱ、俺が呼んじゃったのかな?」
奏羽「違うよ お前が守ってくれたんだと思う」
夕凪「えっ?」
奏羽「説明できないんだけど・・・ そんな気がする」
  歩道を手を繋いで歩く二人。
夕凪「俺、空と暮らしてたんだ」
奏羽「そうなんだ」
夕凪「俺が入退院を繰り返してたから、病院の近くに引っ越してくれて」
奏羽「おじさん達は知ってたの? 付き合ってること」
夕凪「直接は言ってないけど 俺達の様子をみてればわかると思う」
夕凪「本当はもっと早く空を解放してあげなきゃいけなかったんだけど、諦められなくて・・・」
奏羽(俺は・・・ 一緒にいてあげたかったな)
夕凪「俺が弱くて・・・空に辛い思いさせた」
  すれ違う人達は、二人に気がつくことなく通り過ぎて行く

〇おしゃれな廊下
夕凪「ココだよ 気づかれないようにね」
  夕凪が先にドアを通り抜ける。
奏羽「おっと!」
  奏羽の手が引っ張られる。

〇システムキッチン
  身をかがめキッチンに隠れる奏羽。
夕凪「姉貴来てる」
  キッチンから顔を出し、様子を伺う夕凪。

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
夕凪の姉「ありがとね、空君」
空「いえ、僕は何も・・・」
夕凪の姉「夕凪と最後まで一緒にいてくれた」
空「僕が一緒にいたかっただけです」
夕凪の姉「夕凪は幸せだったと思う 空君が側にいてくれて」
空「僕の方が・・・」
夕凪の姉「これからの人生長いんだから、幸せになること諦めないでね」
夕凪の姉「夕凪ね、父さんが再婚した時、すごく喜んでたの」
空「そうですね。おじさん達の新婚生活を邪魔しないために、僕と暮らし始めたんです」
夕凪の姉「『これで天国の母さんも安心できるね』って・・・母さんを裏切ったとかそういうの全然ないのよ。夕凪ってそういう子だから」
空「それは、わかってるんですが・・・」
夕凪の姉「ゆっくりでいいから 夕凪を安心させてあげよ」
空「僕には、そんな資格無いんです」
夕凪の姉「資格が無いって?」
空「いえ、何でもないです」
夕凪の姉「そうだ、空君にお願いがあるの」
  夕凪の姉が一通の手紙を鞄から取り出す。
夕凪の姉「これを風見奏羽君っていう夕凪の幼馴染に届けて欲しいの」

〇システムキッチン
奏羽「えっ?」
  奏羽は夕凪の方を見る。
  夕凪は黙ったまま奏羽を見つめる。

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
夕凪の姉「夕凪から、自分の葬儀が終わったら届けて欲しいって頼まれてたの」
空「なぜ、僕に?」
夕凪の姉「私が行ってもいいんだけど、私のこと怖がってるから・・・ 家に遊びに来た時、しょっちゅう怒鳴りつけてたから」

〇システムキッチン
奏羽「怖がってなんか・・・」
夕凪「違うよ、俺が頼んでおいたんだ」

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
夕凪の姉「でも、凄くいい子だから・・・ 母さんが亡くなった時も、夕凪を心配してよく家に来てくれて・・・」
空「郵送しないんですか?」
夕凪の姉「直接渡して欲しい 何となくその方が二人の為にいいと思うんだよね」
  困った顔で封筒を受け取る空。
夕凪の姉「住所書いてあるけど、場所わからなかったら聞いて」

〇システムキッチン
奏羽「何で?」
夕凪「そーちゃんと空を会わせたかったんだよ」
奏羽「いや、だから何で?」
夕凪「そーちゃんなら、空の力になってくれるかなぁって・・・」
奏羽(ずりーよ その笑顔に弱いんだよ)

〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
夕凪の姉「そろそろ帰るけど、空君ひとりで大丈夫?」
空「大丈夫です」
夕凪の姉「空君のこと、家族みたいに思ってるから、遠慮しないで頼ってね」
空「ありがとうございます」

〇システムキッチン
奏羽「ヤバい、こっち来ちゃう」
  奏羽がキッチンの奥で縮こまる。
夕凪「見つかっても、俺がいることバラさないで」
  夕凪の姉と空がキッチン脇を通り過ぎようとする。
空「うわぁ!」
  黙ったまま見つめ合う奏羽と空。
夕凪の姉「どうしたの?」
空「あっ、あれ」
  空が奏羽を指差す。
奏羽「ど、どうも」
  奏羽がペコリとお辞儀をする。
夕凪の姉「何? Gでもいた?」
  夕凪の姉がキッチンの奥に目を向ける。
空「なっ、何でもないです」

〇玄関内
夕凪の姉「空君、あんまり眠れてないでしょ? ちゃんと寝てね」
空「はい、お姉さんも」

〇システムキッチン
奏羽「どうしよ?」
夕凪「とりあえず、謝ろ 勝手に入ったこと」
奏羽(えっ!? 意味分からん)
  空がキッチンに戻ってくる。
奏羽「ご、ごめん 勝手に入って・・・」
空「病院にもいたよね? 僕、見えちゃいけないもの見えてる?」
奏羽「いやー、見えないはずのものが見えてるのかな」
空「で、一応聞くけど、誰?」
奏羽「先程ご紹介に預かりました。風見奏羽です。訳あって生霊させてもらってます」
空「生霊!? 僕、ついに頭おかしくなちゃったんだ」
奏羽「たぶんなってないから大丈夫」
空「・・・どうでもいっか 呪い殺しに来たならどうぞ」
奏羽「呪い殺しにって・・・物騒だな そんなことしないって」
空「凪がいないなら生きててもしょうがないし」
奏羽「投げやりになるのはどうかと・・・」
空「何でわざわざ生霊になってまで僕のところに?  怨まれるようなことしたっけ?」
夕凪「適当に誤魔化して」
奏羽「──って、どうやって!?」
空「ん? 何?」
奏羽(あっ、声に出しちゃった)
奏羽「怨んではないよ 生霊になったのは成り行きっていうか・・・ 話せば長くなるけど・・・」
空「まあ、いいや 今は、聞く気になれないし・・・」
夕凪「ココに居座って」
奏羽「えっ!?」
奏羽(そんな無茶な・・・)
奏羽「あー、ココに居させて貰えないかな? 行くとこ無いんだ」
空「取り憑かれてる僕には 選択肢なんて無いんでしょ」
奏羽「取り憑いてないし・・・ 君には指一本触れられないから安心して」
  奏羽が空に手を伸ばす。その手は空の体を通り抜ける。
奏羽「ほらね」
空「好きにすればいいよ でも、突然現れないで、びっくりするから」
奏羽「ごめんね」
  空がキッチンを離れ、バスルームへ入っていく。
奏羽「空君、あんな簡単に生霊のこと受け入れちゃっていいの?」
夕凪「もともと、そういう人だからなぁ 肝が座ってるっていうか・・・」
奏羽「へー、そうなんだ」

次のエピソード:第七話 親友でいい

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