1枠 世界一ツイてない女子高生、予想屋と出会う(脚本)
〇音楽スタジオ
都内のとあるスタジオ
女子高生バンドの「春色コーディネート」が曲の練習している
???「ここでバンドのメンバーを紹介するね!!」
???「ドラム担当の中西あかねちゃん」
???「ちょっぴり、マイペースな女の子」
ドラムの音
???「続いてベース担当は橋本真由ちゃん」
「しっかり者でバンドではリーダー的な存在」
ベースの音
???「そして、このバンドのボーカル兼ギターは・・・」
足立絵里奈「わたくし、足立絵里奈!!」
『逆走ハイスクール』
作詞:足立絵里奈
作曲:橋本真由
足立絵里奈「♪通学路を逆走してしまった~」
足立絵里奈「体育の100m走で逆走してしまったー!!」
足立絵里奈「逆走!」
足立絵里奈「逆走!!」
足立絵里奈「ハイスクール!!」
足立絵里奈「目指せバンドデビュー!!」
〇通学路
橋本真由「そうだ。 これ、渡しておくね」
真由、絵里奈にポータブルオーディオプレイヤーを手渡す。
橋本真由「曲入れておいたよ」
足立絵里奈「ありがとう」
足立絵里奈「助かったよ」
中西あかね「でも、災難だったね」
中西あかね「パソコンが火を噴いたっんだっけ?」
足立絵里奈「そうなんだよ・・・」
足立絵里奈「買ったばかりでマジでショックだよ・・・」
足立絵里奈「最近よく考えるんだ・・・」
足立絵里奈「私ってきっと世界で一番ツイていない人間なんだって・・・」
橋本真由「何で、突然、悲劇のヒロインになっているのよ・・・」
足立絵里奈「だって、ここ最近、ずっ~と不幸が続いているんだよ!!」
足立絵里奈「中間テストで日本史のヤマを外しちゃって、赤点取っちゃったし・・・」
足立絵里奈「楽しみにしてたゴールデンウイークは盲腸で入院しちゃって潰れちゃう・・・」
足立絵里奈「この前の球技大会のソフトボールでは、 顔面にデッドボールをくらっちゃうし・・・」
中西あかね「考え過ぎじゃない?」
足立絵里奈「今日のテレビの占いでも水瓶座が最下位だったよー」
足立絵里奈「きっと今日も悪いことが起きるんだ・・・」
橋本真由「何、突然ネガティブになってんのよ」
橋本真由「偶然よ。偶然」
橋本真由「じゃあ、また明日」
中西あかね「バイト頑張ってね!」
足立絵里奈「聴いてみよ~」
一年前の絵里奈「♪通学路を逆走してしまった~」
足立絵里奈「一年前の私の歌声だ!?」
足立絵里奈「無茶苦茶下手だな・・・」
〇コンビニのレジ
足立絵里奈(客がいなくて暇だなあ・・・)
足立絵里奈「いらっしゃいませ」
鵜久森源蔵「フライドチキン1つ」
足立絵里奈「210円になります」
鵜久森源蔵「え・・・」
足立絵里奈「どうしたんですか?」
鵜久森源蔵「逃げな・・・・・・」
足立絵里奈「はい?」
鵜久森源蔵「悪いことは言わん・・・」
鵜久森源蔵「今すぐ逃げた方がいいぞ・・・」
足立絵里奈「何を言っているんだろう?」
足立絵里奈「あれ? 床に何か落ちている・・・」
足立絵里奈「あの、おじさん。 財布落としちゃってる・・・」
足立絵里奈「名刺が入ってる・・・」
足立絵里奈「『あなたの人生予想します 的中率驚異の99.9!! 何でも予想屋 鵜久森源蔵』」
足立絵里奈「予想屋・・・?」
強盗「騒ぐな!!」
強盗「騒いだら刺すぞ!」
足立絵里奈「やっぱり、私って世界で一番ツイてないよ・・・」
強盗「さっさとお金を出せ!!」
〇学校の校舎
翌日
〇教室
足立絵里奈「はあ・・・」
橋本真由「絵里奈、おはよう!!」
橋本真由「昨日は大変だったね」
橋本真由「警察の事情聴取も受けたんだって?」
足立絵里奈「本当に最悪だったわよ・・・」
足立絵里奈「そう言えば何であんな昔の曲を入れたの?」
橋本真由「ああ・・・。一年前の絵里奈の歌のこと?」
橋本真由「久しぶりに聴いたら、絵里奈の歌と演奏があんまりにも下手で、面白かったから入れちゃった!!」
足立絵里奈「私は面白くないわよ!!」
橋本真由「それよりも明日の期末テストの勉強進んでる?」
足立絵里奈「えっ!? 明日からだっけ?」
橋本真由「大丈夫? 今度赤点だったら、夏休み補習でしょ?」
足立絵里奈(どうしよう・・・。 全然勉強していない・・・)
〇団地
絵里奈の団地
〇古いアパートの部屋
夕食中の絵里奈とその父の正雄──
足立正雄「どれを買おうかな・・・」
足立絵里奈「ちょっと、お父さん!! 食事中にスポーツ新聞読まないでよ!!」
足立正雄「いやあ、先週負けた分、今週は取り戻さないといけないからさ・・・」
足立絵里奈「そんなこと言っておきながら、いつも負けてばっかりじゃない!!」
足立絵里奈「だから、お母さんにも逃げられるんだよ・・・」
足立正雄「大丈夫!!」
足立正雄「今週は自信があるんだ!!」
足立絵里奈「ったく・・・」
絵里奈、スポーツ新聞の『的中』の文字をまじまじと見る──
足立正雄「どうした?」
足立正雄「お前もギャンブルに興味あるのか?」
足立絵里奈(忘れていた・・・)
足立絵里奈(財布を預かったままだった・・・)
〇女の子の一人部屋
足立絵里奈「電話かけなきゃ・・・」
鵜久森源蔵「誰だ?」
足立絵里奈「あの、すみません・・・・・・。 昨日、コンビニで財布を拾って・・・」
鵜久森源蔵「あんがとよ!! 助かった。 今取りに向かうよ」
〇公園のベンチ
足立絵里奈「まだかな・・・」
鵜久森源蔵「待たせてごめんな!!」
鵜久森源蔵「誰かと思えば昨日のコンビニの嬢ちゃんじゃねえか・・・」
鵜久森源蔵「財布を落として困っていたんだよ。 あんがとよ」
足立絵里奈「今後は気をつけてください。 では・・・」
鵜久森源蔵「お嬢ちゃん!!」
鵜久森源蔵「ちょっと、待てよ!!」
足立絵里奈「何ですか?」
足立絵里奈「明日から期末テストなんですよ」
足立絵里奈「早く帰って勉強しないと・・・」
鵜久森源蔵「お礼として予想させてくれ」
足立絵里奈「予想?」
鵜久森源蔵「名刺にも書いてあっただろ?」
鵜久森源蔵「俺は予想屋なんだ」
足立絵里奈「予想屋ってギャンブルの?」
鵜久森源蔵「違う違う・・・」
鵜久森源蔵「俺はギャンブルの予想屋じゃねえんだよ・・・」
鵜久森源蔵「人生の予想屋なんだ」
足立絵里奈「人生の予想屋?」
鵜久森源蔵「受験に恋愛、結婚に就職活動・・・・・・」
鵜久森源蔵「人生には色々なイベントがあるだろ?」
鵜久森源蔵「それらのイベントの結果を予想して的中させるのが俺の仕事なの」
足立絵里奈「人生のイベントって何でも予想できるの?」
鵜久森源蔵「できるよ」
足立絵里奈「明日の期末の試験のテスト内容でも?」
鵜久森源蔵「もちろん」
足立絵里奈「じゃあ、明日の日本史の試験で何の問題が出題されるか予想してよ」
鵜久森源蔵「お安いご用だ」
源三、新聞紙を取りだす
鵜久森源蔵「①枠 鎌倉幕府の守護・地頭」
鵜久森源蔵「②枠 北条家の執権政治」
鵜久森源蔵「③枠 元寇」
鵜久森源蔵「④枠 鎌倉仏教」
鵜久森源蔵「⑤枠 鎌倉文学」
鵜久森源蔵「嬢ちゃんの歴史の担任は『北条家の執権政治』と『元寇』とを交互に出題する傾向があるんだよな」
鵜久森源蔵「去年は『北条家の執権政治』が出題された」
鵜久森源蔵「ということは・・・」
足立絵里奈「今年は③枠の『元寇』が出題されるってこと?」
鵜久森源蔵「本命はそうなるわな。 ただ、俺は大穴を狙う」
足立絵里奈「大穴?」
足立絵里奈「何よ。もったいぶっていないで、さっさと教えてよ」
鵜久森源蔵「回答はこのメモに書いてある・・・」
足立絵里奈「どれどれ・・・」
足立絵里奈「本当にこれが出題されるの?」
鵜久森源蔵「俺はあくまでも予想屋だ」
鵜久森源蔵「信じるか信じないかはお嬢ちゃん次第だ」
鵜久森源蔵「また、予想したいことがあれば電話してくれ・・・」
鵜久森源蔵「じゃあな・・・」
〇女の子の一人部屋
足立絵里奈「本当にこの問題が出るのかなあ・・・」
足立絵里奈「でも、今からじゃ試験範囲全部を勉強するなんて無理だし・・・」
足立絵里奈「補習は受けたくないから、赤点は取りたくないし・・・」
足立絵里奈「イチかバチかでヤマをかけるしかない!!」
足立絵里奈「『方丈記』の著者は、鴨長明。 『徒然草』の著者は、兼好法師・・・」
〇学校の校舎
試験当日─
〇教室
日本史の期末テスト
足立絵里奈「ヤマが外れてたらどうしよう・・・」
教師「じゃあ、始めて」
足立絵里奈(『鎌倉文学の問題』)
足立絵里奈(『『方丈記』の著者は?』)
足立絵里奈(あれ?)
足立絵里奈(この問題・・・)
足立絵里奈(予想屋さんでやったところだ!!)
足立絵里奈(問題がスラスラ解ける!!)
〇通学路
中西あかね「全然、日本史出来なかった~」
橋本真由「私も全然・・・」
橋本真由「まさか、『方丈記』が出題されるとはね・・・」
中西あかね「みんなヤマ外したって・・・」
橋本真由「絵里奈ももちろん出来なかったでしょ?」
足立絵里奈「それがさ・・・ 珍しくヤマが当たっちゃって・・・」
中西あかね「えっ!?」
橋本真由「珍しいこともあるのね」
足立絵里奈(あの予想屋のオジサン。 本当に使える人だったんだ・・・)
足立絵里奈(もしかしたら、私の人生も上向きになるのかもしれない・・・)
足立絵里奈(ひょっとしたら、バンドもデビューできるかも・・・)
人生の予想屋さんってすごいですね。
でも、あくまでも予想であって、悪いことも予想してしまうわけで…人生を変えることは出来ないのかな?
予想屋のおじさんは実は気持ちの予想も出来る人なのかなあと思いました。なんとなく負の雰囲気を持っていたエリナちゃんを助けてあげたくて、名刺の入った財布をおとしたのかなあ?これが私の予想です!
予想やさん、苦しい人生続きのえりなをただ救ってあげたかったのかな。財布を落としたのもわざとじゃないかな、、と勝手な想像ですが。終盤えりなに明るい希望がわいているのが伝わってきて、こちらも嬉しくなりました。