one phrase ~言葉より前の物語~

本間ミライ

第14話 言葉より前… 中編(脚本)

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本間ミライ

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〇古書店
  私とカイさんが『one phrase』に着く
  と、大勢のケガ人で溢れかえっていた。
アンナ「ミアちゃん! 良かった! 無事だったのね!」
ミア「アンナさん・・・。 アンナさんこそ無事で良かったです・・・」
アンナ「外はどんな様子だった?」
ミア「酷い状況でした・・・。 どうしてこんな事になったんですか?」
アンナ「私も詳しいことは分からないけど・・・」
アンナ「数時間前、頭の中にノイズ音が 響き渡ったでしょ? それからよ。 テレパシーが使えなくなったのは・・・」
カイ「各地で色んな事故が起こったんだ・・・」
ミア「事故?」
カイ「あらゆるインフラが崩壊して、電気や ガスも止まってるし、人の制御を失った 乗り物とか、機械が事故を起こしてる」
アンナ「コミュニケーションが取れないから、 警察や消防も機能しないみたいなの・・・」
ミア「そんな・・・」
  アンナさんとテレパシーを試してみるが、
  聞こえてくるのはノイズ音だけで
  何も読み取る事が出来なかった。
ミア「本当だ・・・こんなこと初めて・・・。 でも言葉はちゃんと使えますよね?」
アンナ「ええ・・・。 きっとノアに何かトラブルがあったのよ」
ミア(ノア・・・。きっと真のテレパシーの 実験で何かあったんだ)
ミア(それにさっき見たあの場所・・・。 カナタの姿・・・)
ミア「・・・・・・」
アンナ「ミアちゃん? どうしたの? 大丈夫?」
カイ「もしかして何か知っているのか?」
ミア「いえ・・・。私にもハッキリとした 理由は分かりません・・・」
ミア「でも、もしかしたら一連のトラブルの 原因はカナタが関係しているかも しれません・・・」
カイ「カナタが?」
バベル「その通りだよ。ミアちゃん」
ミア「バベルさん?」
バベル「ただいま」
  バベルさんの後ろには
  カインさんの姿もあった。
ミア「カインさん! あのカナタは・・・!? カナタは無事なんですか?」
カイン「あ、ああ。無事だ・・・」
バベル「大丈夫だよ。カナタ君はちゃんと無事だ。 でも今はちょっと眠っていてね」
ミア「眠ってる?」
カイン「ああ。カナタの精神は今、 ノアの中にある・・・」
ミア「どう言う事ですか?」
カイン「ペドロ邸で見つかった “ノアの開発者の日記”」
カイン「それを使って、ノアの構造を 詳しく解析する事に成功した・・・」
カイン「真のテレパシーの実現には 既存のノアのシステムを アップグレードする必要があったんだ」
カイン「そして、その為に我々は ノアの中枢に行ったんだ・・・」
ミア「その時に何かあったんですね?」
カイン「ああ・・・。カナタの精神は ノアに引きずり込まれたんだ・・・。 ノアには人格データがあった・・・」
ミア「人格データ?」

〇コンピュータールーム
カイン「あれは、俺とカナタがアップグレードの 実験を行っていた時だ・・・」
カナタ「・・・・・・」
カイン「大丈夫かカナタ・・・。 ずっと浮かない顔をしている」
カナタ「・・・大丈夫です」
カイン「やはり気がかりなのはあの娘か?」
カナタ「・・・まあそうですね。喧嘩したまま ここまで来ちゃいましたから・・・」
カイン「大丈夫だ。真のテレパシーが実現すれば 彼女もきっと分かってくれる筈だ」
カナタ「そうだと良いんですけど・・・」
カイン「その時だ。ノアの方から 俺達に語りかけて来たんだ」
女性の声「ここまでご苦労様。 情報管理局のカイン・・・。 そしてカナタ・・・」
カイン「誰だ!」
女性の声「この巨大なネットワークシステムの 人格データ・・・。名前はノア・・・」
カナタ「ノア・・・」
ノアの声「ええ。貴方達の目的は分かっています。 新しいテレパシーシステムを構築する為に、私をアップグレードしようとしている」
カイン「何故それを?」
ノアの声「当然でしょ? 私は常に貴方達と 繋がっているのだから・・・」
カイン「阻止しに来たのか?」
ノアの声「いいえその逆よ。私も言葉の 必要の無い世界を望んでいる・・・」
カイン「じゃあ一体何が目的だ」
ノアの声「迎いに来たの・・・カナタをね。 私のシステムをアップグレードするには、 カナタの力が必要だから・・・」
ノアの声「それも・・・外側からで無く。 内側からね・・・」
カイン「なに?」
ノアの声「カナタ・・・。 貴方の精神は今から私の中に入る・・・」
ノアの声「そして、貴方には選択して 貰わなければならない。 言葉を消滅させるかどうか・・・」
ノアの声「延いては人類の未来をどうするのか・・・」
カナタ「人類の未来・・・」

〇古書店
カイン「そしてカナタは気を失うようにして 眠った・・・」
カイン「それからしばらくして、 テレパシーが使えなくなったんだ」
ミア「じゃあカナタはテレパシーを失くしたと 言う事ですか? 言葉を選択したと・・・」
バベル「ううん。そうじゃない。 テレパシーが使えなくなったのは、 アップグレードによる一時的な現象だ」
バベル「カナタ君は多分、言葉を消滅させるか どうか、土壇場で踏み切れずにいる・・・」
バベル「そしてその原因は、恐らく・・・ ミアちゃん・・・君だ」
ミア「・・・・・・」
バベル「君の存在が、君と交わした 言葉の一つ一つが、 カナタ君を迷わせているのだと思う・・・」
ミア「・・・。私、ノアの中に行きます!」
バベル「ミアちゃん、それはダメだ。それに どうやってノアの中に行くつもりだい?」
ミア「分かりません・・・。 でもバベルさんとカインさんなら それが出来るんじゃないんですか?」
バベル「ノアが何をしてくるか分からない以上、 危険な真似をさせる訳にはいかないよ。 入ったら戻って来れない可能性だってある」
ミア「それでも構いません! どんなに危険だろと、私はカナタと会って 話がしたいんです! もう一度・・・!」
バベル「・・・・・・。いやダメだ。 多少強引だったとしても、 カナタ君を連れ戻す役目は僕がやる」
バベル「それにミアちゃん・・・。 冷たいことを言うようだけど・・・」
バベル「カナタ君と過ごして、沢山話をして来た ミアちゃんですら、カナタ君の心を 開く事は出来なかった・・・」
ミア「・・・・・・」
バベル「よく考えて・・・」
  そう言ってバベルさんは、
  奥の部屋で準備を始めた。
  バベルさんの言う通りだ・・・。
  確かに、カナタを過大評価し、
  彼の痛みに気付く事が出来なかった私が、
  彼の心を開く事は出来るのだろうか?
ミア(カナタを助けたい・・・。 でも私に出来る事は・・・?)
  その時、誰かが私の背中を強く叩いた。
カイ「ミア! しっかりしろ! 大丈夫だ!」
ミア「カイさん・・・」
カイ「俺もお前じゃなきゃダメだと思う!」
カイ「お前は知らないかもしれないけど、 お前と出会う前のアイツは 割と暗いヤツだったんだよ」
カイ「それがお前と会って、かなりの頻度で 笑うようになったんだ・・・」
カイ「最初の頃なんて鏡の前で、 笑顔の練習してたくらいだしな」
ミア「え・・・」
カイ「カナタを連れ戻して来い! お前なら出来る!」
ミア「・・・・・・」
マルコ「やあミア。あの時は世話になったな」
ミア「マルコさん・・・」
マルコ「話に出てた少年は、 君にとって大切な存在なんだろ? よく話し合って来ると良い・・・」
ミア「・・・・・・」
ブラム「久しぶりだね。ミアさん・・・」
ミア「ブラムさん。それにサラちゃん・・・」
  ブラムさんの腕には、あの日から
  少し成長したサラちゃんが抱かれている。
ブラム「この子ね。最近、本当少しだけだけど、 言葉を話すようになったんだよ・・・」
ミア「す、凄いです。何て言ったんですか?」
ブラム「ママと、それからもう一つミアって・・・」

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