善悪の境目

灰螺蛛蜘

裏の顔(脚本)

善悪の境目

灰螺蛛蜘

今すぐ読む

善悪の境目
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  会社に現れた神埼さんに驚きつつも、傘を忘れた俺を車で迎えに来た。
  掴み所がなく、本心が見えない事に不思議に思いながらも・・・。
  このタイミングで裕二から連絡に、引っかかる。
  『うちの会社、倒産しそう。』
  その後出てくる神埼さんの名前を見て、何かが動いているのではと感じるようになる。
  神埼さんの本心とは・・・
  その笑顔の裏で、何を考えているのか・・・。
  俺は一旦当たり障りない事を車内で、神埼と会話した。

〇車内
  パタパタ────
  ウィー、ウィー、ウィー
  フロントガラスに雨が打ち、一定のテンポでワイパーが動いている。
神埼豊「音楽かけますね。」
  雨音と車の音のみが静寂を埋めていたのだが、神埼さんは笑顔でスマホで音楽を選ぶ。
神埼豊「つぐさんも、この曲をご存知だと思うんですよ。」
神埼豊「では、住所を教えてください。 近くまで送りますよ。」
  車内にはゆったりとした、ピアノ調の音楽が流れ始め落ち着く曲調だった。
稲荷紡「あ!」
稲荷紡「勿論知っておりますよ。 難解なパズルゲームのバーシーンの曲ですよね。」
神埼豊「やっぱりご存知でしたか。 つぐさんならこのゲームも知ってるかなーと・・・。」
神埼豊「ええと・・・。」
稲荷紡「ああ、ごめんなさい。 つい曲に反応してしまいました。」
稲荷紡「自宅は千代田区なので、ちょっと距離ありますし駅まででいいですよ・・・。」
稲荷紡「そもそも・・・良いんですか?」
  いくらご好意とはいえ、車で送ってもらおうとだなんて気が引けてしまう。
神埼豊「・・・・・・・・・。」
神埼豊「良いですよ。 折角ですし、私が送りたいので甘えてください。」
稲荷紡(ん・・・? 今無表情で変な間が無かったか?)
  一瞬神埼さんが無表情だった気がするが、瞬きをするといつも通りの柔らかい笑顔だった。
  神埼さんは笑顔のまま、住所の続きを聞きたそうにしていた。
稲荷紡「ええと、ではお言葉に甘えて・・・。」
稲荷紡「千代田区xx△-□-△です。」
神埼豊「ああ、分かりますよ。 では行きます。」
  神埼さんは楽しそうにスマホを弄って、車を発進させた。
  車内には惑星のクラシック曲が流れ始めて、俺は冷や汗をかいた。
  ・・・・・・・・・
  ・・・・・・
  ・・・

〇お台場
  後日-イベント当日-
  送ってもらっている時の事を考えて、神崎さんを見た。
  相変わらずのスーツと、読めない笑顔で立っている神崎さんに、悟られないようにする。
稲荷紡「ゲームの10年越しのアニメ記念イベントが、スタンプラリーとはいいですね。」
神埼豊「ええ。」
神埼豊「ご飯を食べたり、関連商品を買うのもいいですね。」
神埼豊「知らないお店がたくさん有って、私は楽しいです。」
稲荷紡「俺も楽しいですよ。 当時は学生だから参加できなかっただろうし、大人になると仕事でお金貯まりますしね。」
稲荷紡「おかげで、スタンプラリーが全部埋められるのも大人の優越感・・・みたいな。」
神埼豊「確かにそうですね。」
神埼豊「つぐさんの手取りだったら、たくさん買い込めますよ。」
神埼豊「月30万だと上司から聞いておりますよ?」
稲荷紡「え?」
稲荷紡「そんな事無いですよ。」
稲荷紡「月給23万くらいですよ。」
神埼豊「・・・・・・・・・。」
稲荷紡「あ、あの・・・。」
  神崎さんは突然無表情を崩さず、ジッと俺を見つめて探るようにしていた。
  全てを見据えようとして、居心地が悪くなる。
神埼豊「ああ、驚いてしまいましてすみません。」
神埼豊「上司さんの話を聞き間違いしたかもしれませんね。」
神埼豊「つぐさんの業績を考えて、もっと貰えると思っていたので・・・。」
稲荷紡「上司が・・・?」
稲荷紡(またあの人か・・・。)
  上司の戯言や、人間関係を搔き乱す発言にはうんざりしていた。
  その行動は社内だけだと思っていたが、社外にもやっていると知って心底軽蔑する。
稲荷紡「同社内の者がご迷惑おかけしてすみません・・・。」
神埼豊「いや! つぐさんは悪くないですよ。」
神埼豊「すみません・・・。 休日に仕事の話をしてしまって・・・。」
神埼豊「先程つぐさんが食べたがっていた、コラボメニュー奢ります。」
稲荷紡「え?いえ・・・。 そんな・・・。」
神埼豊「お願いします。 気がすまないので・・・。」
  神崎さんは必死に言っていて、珍しいと思っていた。
  そんなこんなで、俺達はスタンプラリーを埋める事に成功した。

〇黒
  ・・・・・・・・・
  ・・・・・・
  ・・・
  その後神崎さんのご好意に甘えて、コラボメニューを奢ってもらっていたのだが・・・。
  突然神崎さんが急用が出来たという事で、食べ終わり頃に突然立ち上がった。
神埼豊「また会いましょうね。」
  いつも通りの笑顔で立ち去ったが、社長は休みもないのかと思い、ゆっくり食べててと言う言葉に甘えた。
  突然立ち去ったので、デザートを食べ終わった際に伝票を持って支払おうとしたが、神崎さんがもう払っていた事に驚いた。
  ゆっくり家に帰ろうと駅に向う時に、メッセージが来ていることに気付いた。
  『つぐちゃん、今大丈夫?』
  『ちょっと話を聞いてほしくて・・・。』
  『どこで話せる?』
  裕二からの連絡に驚きながらも、裕二に会いに行くことにした。
  ・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・
  ・・・・・・
  ・・・

〇ファミリーレストランの店内
廿千裕二「つぐちゃんお疲れー。」
稲荷紡「お疲れって・・・お前が呼んだんだろ・・・。」
廿千裕二「どうしても、つぐちゃんと話したくてね・・・。」
稲荷紡「ああ・・・。」
  裕二が居た駅まで駆けつけて、ファミレスの場所に着いた俺をケラケラと迎えた裕二だったが・・・
  考え込む様に目を閉じていた。
廿千裕二「まあ、話していたように会社が倒産するみたいなんだよね。」
  裕二は無理して笑う時が有り、とくに辛い事を話そうとする時は、より楽しそうに話していた。
廿千裕二「働いていた所がさ、休日出勤は当たり前なのに休日としたり・・・」
廿千裕二「まあ、働いてない事にしてたんだよね。」
稲荷紡「うん。」
廿千裕二「しかも、毎日1時退勤・・・17時間半働いてて、気もおかしくなっていて・・・。」
廿千裕二「月3回しか休んでなくて・・・疲れて寝てて・・・。」
廿千裕二「実はその間つぐちゃんとは連絡してないじゃん。」
稲荷紡「そうだな・・・。」
廿千裕二「ユタカさんは、大学時代に出会ったんだ。」
廿千裕二「毎月ゲーセンで貸し切りみたいなのやってて、俺はSNSで知り合った人にその貸し切りに連れられてさ。」
廿千裕二「就職してもたまに心配しててさ・・・。 ユタカさんから連絡来てたんだ・・・。」
稲荷紡「うん。」
廿千裕二「そしたら、今年にユタカさんから会社持ってるからおいでよって言われてて・・・」
稲荷紡「へぇ。」
廿千裕二「あぁ、社長だったんだユタカさん。」
廿千裕二「私がなんとかしますから、気にしないで良いですよ。ってさ。」
廿千裕二「そしたら会社が、行政から指摘受けたんだけど・・・」
稲荷紡「この前の話か。」
廿千裕二「そう!」
廿千裕二「そこから休めてなかった間の時間を、全部取るようにってなったんだけど・・・」
  突然裕二は黙って、次に言おうとしてる言葉を悩んでいた。
  まるで何かを確信しているが、証拠に悩んでいるような間を取っていた・・・。
「お待たせしましたー。」
  裕二が悩んでいる中、ビールが到着した。
稲荷紡「えっと・・・これは・・・。」
廿千裕二「転職祝いと、つぐちゃんが話聞いてくれるから頼んでおいた。」
稲荷紡「あのなあ・・・。」
稲荷紡「まあ、ありがとうな。」
  とりあえず裕二にお礼を言って、裕二の次の言葉を待ちながらビールに口を付ける。
廿千裕二「うちの会社、社長が従業員に出す給料をちょろまかせて、愛人にタワマン買ってたんだってさ。」
稲荷紡「ぶえっ!!」
稲荷紡「愛人にタワマン・・・!?」
  真実は小説より奇なりとはこの事だ。
  従業員の給料を昇給を防いで、税金対策や愛人の機嫌のために建物を買うのは聞いてはいたが、ここで聞くとは・・・。
廿千裕二「そうそう。」
廿千裕二「奥さんが居るのにね。」
廿千裕二「奥さんはもうカンカンだよ。」
廿千裕二「でもね。」
稲荷紡「うん?」
廿千裕二「奥さん、僕の後輩と付き合っててさ!妊娠しているんだって!」
廿千裕二「どっちもどっちで、もうめちゃくちゃでさ。」
  裕二はひたすら楽しそうに話しているが、ぬらぬら奇妙に光る目を見て、怖くなる。
廿千裕二「会社は倒産するくらい愛人に注ぎ込んでて、愛人も怪しい仕事をタワマンでやったり、クスリも売っててもうてんやわんや。」
廿千裕二「そこで再度ユタカさんから誘われて、やっと転職を受けたんだよね。」
稲荷紡「なんでそこまで詳しいんだ・・・?」
  俺が疑問を裕二に聞くと、裕二はニヤァっと笑った。
廿千裕二「社長が話してくれたんだよ。」
廿千裕二「全部。」
廿千裕二「だから、給料の請求をしないでくれって泣いててね。土下座もしたんだ。」
  面白おかしそうに言う裕二は、俺の知っている裕二ではなく、仕事のストレスでおかしくなっていると確信した。
  しかし、俺には何も出来なかったんだろう・・・。
廿千裕二「だから、断ったんだ。 そしたら人でなしとか言われてね。」
廿千裕二「どっちが人でなしなんだろうね。」
廿千裕二「僕達はただ仕事してただけなのにさ。」
「お待たせしましたー。」
廿千裕二「ありがとうございます。 僕です。」
  店員から唐揚げを受け取って、静かに食べているのを見て、俺は何も声がかけられなくて、
  俺も静かにビールを飲んでいた。
  いつもより苦く、喉に引っかかるエグみが尾を引く。
  つづく

次のエピソード:前に出る影

成分キーワード

ページTOPへ