グッバイ バイク バレリーナ

快亭木魚

第1速 バイクのバラのプレゼント(脚本)

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快亭木魚

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〇王宮の広間
  復讐は車輪に宿る。
タイーヤ「リンシャー家メイド採用最終試験!特技披露でございます!候補者の方、どうぞ!」
リイナ「このバイクバレリーナことリイナの!」
リイナ「単車の舞をご覧いただきます!」
カーマス「なんと!全身にバイクを着て踊っている!」
タンクーザ「バイクの重さを感じさせない身のこなし!」
カーマス「バイクのエンジン音がクラシックのメロディを奏でている!なんて美しいんだ!」
リイナ「トリプルアクセルをご覧いただきます」
カーマス「頭、腰、足についたバイクのアクセルを駆使し壁を蹴りながら踊っている!」
リイナ「これこそが!バイクバレリーナのトリプルアクセル!」
リイナ「フィニッシュです」
リイナ(バイクの煙が充満して私の姿を一瞬見失うはず)
リイナ(次の瞬間、煙の中から現れ旦那様に近づく!)
リイナ「バイクのバラをプレゼントいたします」
リイナ(バイクでできたバラを取り出し彼の胸に刺す)
リイナ(バラの香りとタイヤの匂いが鼻腔を刺激する)
リイナ(彼の全身の車輪が震えている!心を捕らえた!)
タンクーザ「ちょっと・・・!人の旦那に近づき過ぎよ!車間距離をあけなさい!」
リイナ「失礼しました」
カーマス「素晴らしい!採用しよう!」
タンクーザ「ちょっと待って!こんな過去の経歴があやふやな女を・・・簡単に採用するの?」
カーマス「君も今の演技を見ただろう!あの車輪の使いこなし具合!我々の車交界を走る力を持っている!」
タンクーザ「車輪の力は認めるけど・・・素性が知れないし・・・」
カーマス「心配ない。メイドがひとり増えるだけだ!明日から来てくれ!」
リイナ「かしこまりました。よろしくお願いいたします!」
タンクーザ(この女・・・!うまく入り込んで・・・!)

〇城の会議室
リイナ「今日から働かせていただきます」
カーマス「よろしく!メイド姿も似合うじゃないか」
リイナ「ご主人様。左肩の四駆が脱輪しています」
カーマス「直してくれてありがとう。じゃあ仕事に行ってくる」
リイナ「行ってらっ車いませ、ご主人様!」
タイーヤ「ヒソヒソ・・・新人さん、早速ご主人様のお気に入りのようで」
タンクーザ「あの女、私の夫に近づき過ぎ!」
タンクーザ「あらごめんなさい!私のドレス上の戦車が滑って発射してグラスを割ってしまったわ」
タンクーザ「片付けておいてくれるかしら?新人さん」
リイナ「かしこまりました・・・」
タンクーザ「あなた、ちょっと人の夫に近づき過ぎみたいね」
リイナ「すみません。私はご主人様のことを思って・・・」
タンクーザ「このグラスのようになりたくなかったら身の程をわきまえろ、この薄汚い単車女!」
リイナ「はい・・・」

〇花模様2
リイナ「天国のお父さん、お母さんへ」
リイナ「私はついにリンシャー家に入り込むことが出来ました」
リイナ「必ずや、お父さんとお母さんの死の真相を突き止めてみせる!」
リイナ「そして!罪を償ってもらう!」

〇古いアパートの一室
  10年前ー
リナの母「お父さんは私を窮屈な実家から連れ出してくれたの」
リナの父「俺のバイクの後ろに乗せてさ。ドキドキしたよ」
リナ(中学生)「その話は何回も聞いたよ」
リナの母「うちにはお金がないけどあなたには少しでもいい教育を受けさせたくて」
リナ(中学生)「だからバレエも習わせてくれて私立の中学にも入れた」
リナの父「自由の象徴、バイクのキーホルダーを贈るよ」
リナ(中学生)「ありがとう」
リナの母「ではお母さんはお父さんとデートに行ってきます❤️」
リナ(中学生)「行ってらっしゃい。仲のいい夫婦だね」

〇屋上の入口
タンクーザ(中学生)「あなた後輩のくせに生意気なのよ!」
リナ(中学生)「私は人を脅す先輩の態度を注意しただけです」
タンクーザ(中学生)「黙れ貧乏人が!戦車のキャタピラで足をひいてやる!」
リナ(中学生)「痛い!」
タンクーザ(中学生)「今はこの1台しか操れないけど!ゆくゆくは複数の車輪を着こなす!」
タンクーザ(中学生)「それが将来リンシャー家に嫁ぐ者の使命!私に逆らうことがどういうことか思い知らせてやる!」
教師「あらどうしたの?」
タンクーザ(中学生)「私を侮辱したんで反省してもらいました!では!」
リナ(中学生)「先生、これはいじめです」
教師「リンシャー家はこの街の鉄道、自家用車、自転車にいたるまであらゆる車輪産業を支配下においてるの」
教師「リンシャー家公認の許嫁に逆らうこと。それは即車輪の下に押しつぶされることを意味する」
教師「リンシャー家関係者からの本校への寄付金は高額なのよ」
教師「泣くくらいなら逆らわないことね」
リナ(中学生)「教師がいじめを見て見ないふりするなんて・・・ひどい!」

〇市街地の交差点
リナ(中学生)「お父さんとお母さんがそろそろ帰ってくる時間・・・」
リナ(中学生)「あ!お父さんのバイクが見えてきた!お帰り・・・」
リナ(中学生)(線路がないのに列車が走る音が聞こえる!)
リナ(中学生)「え?」
???「ヴヴヴ!ヴァァァ!」
リナ(中学生)「何?全身が列車の列車人間?」
リナ(中学生)「バイクが・・・列車人間に・・・跳ねられた!」
リナ(中学生)「そんな・・・!」

〇葬儀場
リナ(中学生)「うう、お母さん・・・お父さん・・・2人ともあの世に行ってしまうなんて・・・」

〇宮殿の門
リナ(中学生)「おまわりさん、この家です!」
警官「ここは・・・リンシャー家!」
リナ(中学生)「数日前に見たんです。父と母をひいた列車人間がこの門の中に入って行くのを!」
警官「見間違いじゃないのかね?列車人間など聞いたことがない」
リナ(中学生)「あんな特徴的な人間を見間違えることはありません!」
警官「証拠としては不十分」
警官「根拠のないことで騒いでると君を逮捕するぞ」
リナ(中学生)「そんな・・・警察までリンシャー家の味方!」
タンクーザ(中学生)「あら?将来の私のうちの前で何を騒いでいるのかしら?」
警官「お騒がせしてすみません」
タンクーザ(中学生)「ご苦労様です。忙しいでしょうからもう帰っていいですよ」
警官「あざーす!失礼します!」
リナ(中学生)「この家の列車人間が!私の両親を跳ねた!」
タンクーザ(中学生)「何をでたらめなことを言ってるの?この貧乏人が!」
タンクーザ(中学生)「あなたの両親はバイクの2人乗りで危険運転をして事故を起こしたんでしょう!自業自得!」
リナ(中学生)「なんでそんなひどいことが言えるの!」
タンクーザ(中学生)「2度と私の前に姿を見せないでちょうだい!」
リナ(中学生)「ううう・・・許せない!」

〇花模様2
リイナ「私はリンシャー家に復讐することを誓いました。そして・・・あの男に会ったのです」

〇地下室
フォークリー「リンシャー家に近づく手っ取り早い方法はメイドとして採用されることだ」
フォークリー「ただ普通に仕事ができるだけじゃダメだ。車輪を操る『ワキルスト』であることが条件。このようにな」
リイナ「すごい!フォークリフトを着ている!」
フォークリー「車輪を着こなすのは大変だぞ。本当にやるのか?」
リイナ「勿論!」

〇貴族の部屋
リイナ(こうして私はバイクを着こなせるようになりリンシャー家に入り込むことが出来た)
リイナ(リイナという偽名を使い髪型も変えたから・・・戦車奥様にも気付かれてない!)
リイナ「旦那様。お呼びですか?」
カーマス「よく来てくれた」
カーマス「ああ・・・君の車輪は美しい・・・」
リイナ「旦那様・・・車輪が近いです(熱演)」
カーマス「聞いてくれよ、身体中の車から発せられる急ブレーキ音を!」
カーマス「必死で我慢しているが・・・もう耐えられない!身体中のガソリンが満タンだ!」
リイナ「奥様以外の人と車輪を交わすのは『不輪』行為です。いけません、旦那様!(名演)」
カーマス「大丈夫。この部屋は使ってないから誰も来ない」
カーマス「君のバイクを直に感じたい!車輪を僕の胸に当ててくれ!」
リイナ「あ・・・ああ・・・旦那様!これ以上は赤信号!」
カーマス「僕は君に惹かれている・・・!そして文字通り君の車輪に轢かれている・・・!」
カーマス「ああ・・・タイヤが熱い・・・」
カーマス「車輪なる快感・・・まさに・・・エクス車シー!うぅ!」
リイナ(愚かな旦那様・・・。悪いけどあなたの気持ちを利用させてもらう!)

〇貴族の応接間
タンクーザ「おはよう。あなた昨晩はどこに?」
カーマス「ああ。書斎でタイヤ交換してたら寝落ちしたよ。ははは」
タンクーザ「書斎の電気はついてなかったわよ?」
カーマス「暗い中で・・・交換してたんだ」
タンクーザ「嘘おっしゃい。あなた、女といたわね?」
カーマス「いや・・・そんなことない」
タンクーザ「首筋のJISマークが何よりの証拠!」
カーマス「え!」
タンクーザ「『J(自分の)I(愛しい)S(車輪)の証』として車輪の跡をつけさせる行為!」
カーマス「違う、違うんだこれは!」
タンクーザ「この不輪男が!キャタピラの刑よ!」
カーマス「うわあああ」

〇要塞の廊下
リイナ(旦那様の心はとらえた。これで真相に近づけるはず)
リイナ(廊下の向こうから!線路もないのに列車が走る音が聞こえる!隠れよう)
タイーヤ「大旦那様!奥様が怒って大変です」
大旦那様「また夫婦喧嘩か。困ったものだ」
タイーヤ「大奥様!カーマス様がやられてます!」
大奥様「全く情けない・・・」
リイナ(はじめて見る大旦那様と大奥様!全身に電車を着ている!)
リイナ「どちらかが両親を殺した列車人間の正体に違いない!」

〇花模様2
リイナ「ついに見つけた!両親の仇!」
リイナ「真相を解明し!リンシャー家に!罪を償わせる!」
  かくして復讐劇は始まった。
  果たして彼女の復讐は達成できるのだろうか。
  続く!

次のエピソード:第2速 大旦那様と大奥様

コメント

  • 「トリプルアクセルと乗り物のアクセル」や「惹かれると轢かれる」を組み合わせたり、不倫が「不輪」、行ってらっ車いませ等々。パワーワード満載で一体どこから突っ込んで良いものかと思考が渋滞しながら面白おかしく読ませていただきました(笑)
    列車人間が誰なのか、そしてリイナの復讐は果たせるのか、続きが気になります……!

  • ぶっ飛んだ設定に細かにちりばめられたネタ。そして引きから続きの気になるストーリーです。次回も楽しみにしています(*'ω'*)

  • しゃこーかい???
    とりあえずあの旦那はキャタピラで轢かれておっけーだと思うの……

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