死神珍奇譚

射貫 心蔵

小劇場 子守唄を聞く死神(脚本)

死神珍奇譚

射貫 心蔵

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〇綺麗な一戸建て
  ある晩
  おうちから
  けたたましい泣き声がこだましました

〇明るいリビング
ケンちゃん「ママァ~!!」
  ケンちゃんが
  うたた寝から目を覚ましますと
  ママの姿がありません
  眠っているスキに
  コッソリお買いものへ
  行ってしまったのです
  一人の夜は
  ケンちゃんにとって未知の世界
  どんな脅威に見舞われますことやら

〇綺麗な一戸建て

〇空き地

〇森の中

〇墓石
  うるさいなぁ、なんの音?
  なんということでしょう!
  ケンちゃんの泣き声に反応し──
  死霊の群れが
  一斉に目を覚ましたではありませんか!

〇森の中
  泣き声が耳ざわりでならず──

〇空き地
  すやすや熟睡できません

〇綺麗な一戸建て
  一同、発生源のケンちゃんちへ

〇明るいリビング
  ケンちゃんや、泣くのをおやめ
「はよぅ元気になっとくれ」
「笑い声を聞かしとくれ」

〇綺麗な一戸建て
  逆効果でした

〇明るいリビング
ケンちゃん「こわいよぉー!!」
  魑魅魍魎がやってきて
  ケンちゃんは大パニック!
  手足をバタつかせて
  暴れるサマは、まるで怪獣のよう
  泣く子も黙る死霊たちも、これにはお手上げ
  あの手この手で笑わせようとしますが
  彼ときたら──
ケンちゃん「ママァ~!!」
  ――の一点張りで
  ちっとも泣きやんでくれません
  死霊といえど、元は人間
  幼児に拒絶されるのは悲しいものです
ケンちゃん「びえ~ん!」
  しまいには死霊の方が辛くなって──
  ママの帰還を待望するようになりました
  さぁ皆さんご一緒に──

〇綺麗な一戸建て
  ママァ~!!

〇明るいリビング
  助っ人登場
  彼女はある秘策を用意していました
死神「ケンちゃん、よく頑張ったわね」
  少女の傍らに、一人の女性
  彼女こそ、あぁ彼女こそ──
ケンちゃん「ママ!!」
  やってきました救世主!
  一瞥するや
  ケンちゃんの絶叫はピタリと収まりました
ママ「ゴメンね、一人にして」
ママ「もうネンネの時間ですよ ママが子守唄を歌ってあげましょう」
ママ「ねんねんころりよ おころりよ」
  ぼうやはよい子だ ねんねしな
  ねんねのおもりは どこへ行った
  あの山こえて 里へ行った
  里のみやげに なにもろた

〇明るいリビング
  でんでん太鼓に、笙の笛

〇黒
  起きゃがり小法師に 振り鼓
  起きゃがり小法師に 振り鼓
  おやすみ、ケンちゃん

〇明るいリビング
死神「ふえーん!」
  一同
  少女が泣きじゃくるのを
  呆然と見つめていました

〇墓石
  嵐は過ぎ去り、死霊たちは墓地へ帰宅
  これまで通り、安らかに眠りました

〇明るいリビング
ママ「ケンちゃん、元気でね」
ママ「もう一人でも泣いちゃダメよ」
ケンちゃん「ムニャムニャ はーいママ・・・・・・」
ママ「・・・・・・」
死神「時間です まいりましょう」
死神(ケンちゃん 子守唄っていいものだね)

〇綺麗な一戸建て

〇綺麗な一戸建て

〇綺麗な一戸建て

〇明るいリビング
パパ「おはようケンちゃん」
ケンちゃん「おはようパパ」
ケンちゃん「ママは?」
パパ「ママはその、事故に遭って──」
パパ「おうちに帰れないんだ」
パパ「もう二度と・・・・・・」
ケンちゃん「昨日帰ってきたよ?」
ケンちゃん「僕にね 子守唄を歌ってね 一緒にねむったんだ!」
パパ「・・・・・・そっか」
パパ「素敵な夢を見たね、ケンちゃん」

〇綺麗な一戸建て
  夢じゃないよぉ~!

〇空き地

〇森の中

〇墓石

次のエピソード:黒い影の死神

コメント

  • まさかの驚きの内容ですね!今回は死神さんが”死を送る”物語ではなく、死霊さん方がざわめきだすストーリーかと思っていたところ、、、

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