恋の神様は襟足が長い

サカミキ

第五話 俺がいないとダメみたい(脚本)

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〇病室(椅子無し)
  夕凪の肩から頭を上げる奏羽。
奏羽「おはよう、ゆー君」
夕凪「おはよう、そーちゃん」
奏羽「寝たような寝てないような」
夕凪「ボーっとしてたら時間たってたな」
奏羽「母ちゃん来てる」
奏羽の母「先生」
医師「熱もないでし、顔色もいい。脈も安定しています」
奏羽の母「はい」
医師「怪我の方も大したことはなく、脳にも問題はないようなのですが・・・ 意識が戻らない」
奏羽の母「えっ」
医師「暫く様子をみて、目を覚さないようなら 再度、脳の精密検査をしたいと思います」
奏羽の母「はっ、はい よろしくお願いします」
  母は深々と頭を下げる。
医師「では、失礼します」
奏羽の母「奏羽・・・起きて」
  そっと奏羽の頬に触れる。
  ベッドを挟んで母の向かい側に立つ。
奏羽(母ちゃんゴメンな)
夕凪「おばさん、絶対にそーちゃん返すから」
奏羽の母「また、来るわね」
  部屋をそっと出て行く。
夕凪「さて、これからどうしよう?」
奏羽「念のため、ゆー君の病室行ってみよっか」

〇綺麗な病室
  〈風間夕凪〉のネームプレートが外されている。
奏羽「やっぱ、もういないか」
夕凪「俺の体は、やっと病院から出られたんだな」
奏羽「外、出てみる?」

〇研究施設の玄関前
  奏羽が自動ドアを通り抜け、外に出る
  隣を歩いていた夕凪が自動ドアの前で立ち止まる。
  人が来て、自動ドアが開く。
  
  立ち止まったままの夕凪。
奏羽「どうしたの?」
夕凪「出られない」
奏羽「えっ、何で?」
夕凪「出ようとしても出られないんだ」
奏羽「俺は出られるのに?」
夕凪「俺、地縛霊なんだ!」
奏羽「いやいやいや、昼間だからだって。幽霊って言ったら夜じゃね?  幽霊がお日様の下ってのも変だし 夜になったら出られるって」
夕凪「そーちゃんは出られるのに?」
奏羽「生霊とガチ霊じゃ違うじゃん」
夕凪「そっかぁ」

〇研究施設の玄関前
奏羽「暗くなったし、出てみる?」
  自動ドアに向かって歩き出す。
  
  自動ドアの前でピタリと止まる夕凪。
夕凪「マジかー。やっぱり地縛ってるじゃん」
  夕凪がその場にしゃがみこむ。
奏羽「病室、戻ろっか?」
  奏羽が夕凪の肩をぽんぽんと叩く。

〇病室(椅子無し)
奏羽「おはよう、ゆー君」
夕凪「おはよう、そーちゃん」
奏羽「デジャブ?」
夕凪「今日もおばさん来てくれてるね」
奏羽「母ちゃん、仕事あるのにな」
  病室を後にする母を見守る奏羽。
夕凪「そーちゃん一人っ子だったよね」
奏羽「うん ゆー君とこは気の強い姉ちゃん」
夕凪「ウチでゲームとかして騒いでると 『うるせー』って怒鳴りこんできたよな」
奏羽「懐かしいな」
夕凪「あの気の強い姉貴も、今は優しいママだよ」
奏羽「ゆー君おじさんなんだ 甥っ子? 姪っ子?」
夕凪「姪っ子、一歳」
夕凪「姉ちゃんさ、母さんが死んだ後、家事とかやってくれて・・・ すげー感謝してる」
奏羽「ああ、兄弟いないから羨ましかったよ」
夕凪「子育て大変なのに、俺が病気になって・・・・・・ また世話かけちゃった」
奏羽「あの肝っ玉姉ちゃんは、そんなの気にしてないって」
  奏羽は夕凪の肩を抱きしめる。
夕凪「そーいえば、おじさんは?」
奏羽「あの人、家族に興味ないから 家にもあんま帰って来ない 俺がフリーターになって呆れてる」
夕凪「そっか」
奏羽「俺、ゲイだってわかって 結婚もしないし、別にやりたいこともないから・・・ まぁいっかなぁって・・・適当に生きてた」
夕凪「そう」
奏羽「親父には理解できないだろうな ゆー君の方は?」
夕凪「ウチの親父、再婚したよ」
奏羽「へぇー、いつ?」
夕凪「2年位前 俺がいなくなっても支えてくれる人がいてよかった」
奏羽「うん」
夕凪「たぶん今日だな。俺の葬式」
奏羽「行ってきていい?」
夕凪「俺を一人にするなよ」
  夕凪が奏羽の腕を掴む。
夕凪「午後には火葬されちゃうかな?   その時まで、一緒にいてよ」
奏羽(ゆー君も不安なんだな・・・ 成仏すら時、独りぼっちにさせたくない)
奏羽「わかった じゃ、二人の時間を楽しもっか」

〇病室(椅子無し)
奏羽「もうとっくに火葬終わってるよな」
夕凪「消えないな・・・俺」
奏羽「うん、はっきり見えてる」
夕凪「体がなくなったら成仏する説は不発だったのかな?」
奏羽「やっぱ俺、見に行って来るわ」
  奏羽が歩き出す。

〇病院の廊下
夕凪「待って! どこ行くき?」
奏羽「とりあえず、お前んちに行ってみる」
夕凪「もう、引っ越してるよ 親父が再婚した時に引っ越したよ」
奏羽「じゃ、どこ行けば? おじさんの引っ越し先は?」
夕凪「遠いよ。車か電車じゃないと・・・」
奏羽「タクシー乗るわけにもいかないからなぁ」
夕凪「リアル怪談になっちゃうよ」
「・・・・・・」
夕凪「空の家なら近い! 歩いて行ける」

〇研究施設の玄関前
夕凪「ほんとに一人で行っちゃうの?」
奏羽「だってゆー君出れないし ちょっと様子見に行くだけだから」
奏羽「怖いの? 幽霊なのに?」
夕凪「べ、別に怖くないし」
奏羽「じゃ、行って来るわ」
夕凪「待て、待て」
  奏羽の手首を掴む夕凪。
  夕凪が奏羽に引っ張られる。
「出られた!!」
夕凪「そーちゃんと繋がってれば 病院の外に出られるんだ」
奏羽「なに、このチート設定」
夕凪「そーゆーもんなんだよ わかんねーけど」
奏羽「ちょっと手離してみ」
  夕凪は掴んでいた奏羽の手を離す。
  奏羽の隣から夕凪が消える。
夕凪「そーちゃん、出してー!」
  病院の中、自動ドアを叩くポーズをする夕凪。
  奏羽が腕を出して夕凪の手を引っ張る。
夕凪「うわっ!」
  夕凪が外に出る。
夕凪「そーちゃん! ぜってー手離すなよ」
奏羽「何それ? フリ?」
夕凪「ダメ! 絶対!」
奏羽(ゆー君は俺がいないとダメなんだな)

次のエピソード:第六話 傍にいたい 

コメント

  • 手繋いでないと出られないの、役得というか何というか。
    「絶対離さないで」は可愛いですね(笑)
    ちょくちょく出てくる設定が面白く、楽しく読ませていただいています。続きが楽しみです(^^)

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