坂口さんと百合の華

イヴェール

第2章 坂口さんの現状(脚本)

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〇シンプルな一人暮らしの部屋
  この前は酷いことを言われたが、
  私に悲しんでいる時間はない。
  今日もマスクを付け、気合いを入れる。
坂口(……よし……。)
  あの男の言った通り、
  確かに、私は口が裂けている。
  でも、怪物や妖怪ではない。
  遺伝なのだ。
  事実、私の母も
  その母である祖母も口が裂けている。

〇山間の集落
  私の母や祖母は山奥にある村で過ごしていた。
  その村では必ず
  裂けたような口の女の子が生まれるのだ。
  理由は分からない。
  それでも、村の人たちはそれを受け入れ、
  ひっそりと暮らしていた。

〇工事現場
  でもある日、都市開発計画で
  母たちは村を追われしまい、
  散り散りになって生きることになった。
  最初はただ暮らすのも大変だったらしく、
  見つかれば全国で騒がれた。
  母も相当苦労したらしい。

〇電車の中
  でも、今はマスクをしていても
  基本的には変に思われないし、
  写真も加工できる。
  私はそれで乗り切ってきていた。
  だが、いつもマスクの人間を雇う会社が
  まともなわけもなく……。

〇事務所
坂口「おはようございま」
係長「さっそくなんだけど、 この書類の中身を 今日中に処理してくれない?」
係長「あと、これもお願いね。」
坂口「…………。」
坂口「……分かりました。」

次のエピソード:第3章 坂口さんの仕事

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