第三話(脚本)
〇図書館
俺も手早く本を片付けて、茜を追いかける。
〇学校の廊下
廊下へ出ると、走っている彼女の後ろ姿が
見えた。
呉「茜、何そんなに慌てて・・・」
俺の声は聞こえているはずなのに、
振り向かない。
明らかに様子がおかしい。
追いついて、手荒かと思いつつも、
彼女の手を取り強引にこちらを向かせた。
呉「あか・・・」
ハッとした。
茜が、今にも泣きそうな顔をしていた。
茜「呉、私・・・」
そのまま、膝から崩れ落ちる。
呉「茜・・・?」
茜「私・・・もう、だめなんだ・・・」
繋いだままの手が、心なしか熱い。
・・・いや、気のせいじゃない。
ずるりと力なく、その手が離れた。
茜「く・・・れ・・・ ・・・ごめん、ね」
そのまま、茜は意識を失った。
呉「・・・茜・・・・・・茜!!」
〇黒
すぐに救急車を呼んで、俺も病院に
同行した。けれど、茜は目を覚まさない。
その日は仕方なく家に帰って、
連絡を待った。
全然気づいてやれなかった。
自分を責めて、でも何も変わらなかった。
結局病院から連絡が来たのは、
ずいぶん経った後だった。
────世界が終わるまで、
あと一ヶ月になっていた。
〇大学病院
〇病室
茜「呉! 来てくれてありがとー」
ちょっと早いじゃん、と時計を確認しながら
茜は言った。
見た感じの茜は思ったより元気そうで、
俺はほっとする。
茜「ごめんね。急に倒れたりして」
呉「・・・俺も、気づかなくてごめん」
茜「いやいや、呉は悪くないよ。・・・」
茜「・・・ついてないよね! せっかく世界が 終わるっていうのにさ」
茜が、ぱっと笑顔を見せる。
俺が深刻な顔をしているから、
気を使わせてしまっただろうか。
茜「しかも変な時間に呼んじゃってごめんねー。 先生がこの時間しかダメなんだって」
茜「まだ学校の時間だよね? 早退?」
呉「学校は・・・なくなった。 休校になったんだ」
茜「・・・そう、なんだ・・・」
茜が寂しそうな顔をした。
〇白い校舎
予兆は前からあった。
学校に来る人数がどんどん減っていて、
生徒だけでなく、先生の中にも
来ない人が出始めた。
そして茜が眠っている間に、
ついに授業が成り立たないと判断され、
公的に休校になってしまった。
・・・それでも、行きたい奴は
行っているみたいだけれど。
茜も行きたがっている中の一人なんだろう。
けれど、もう行けない。
・・・俺も、行かない。
茜が行かないから。
〇商店街
学校だけじゃない。
とにかく人と会うことが減った。
閉まった店も多い。
皆、茜が挙げたような「やりたいこと」を
実践しているのかもしれない。
社会の崩壊も始まっている。
着実に世界は終わりに向かっている感覚が
した。
〇病室
茜「じゃあ、この病院がまだやってるのも 珍しいのかな」
呉「そうだろうな」
茜「でもやっぱり、来たい人だけ 来てるらしいよ。 お医者さんも看護師さんも」
呉「世界が終わるときまで仕事なんて、って人も 多いんだろ」
茜「うん・・・」
・・・私としてはやってなくても
良かったんだけどな、と茜が言ったのを、
俺は聞き逃さなかった。
呉「なんでそういうこと言うんだよ」
茜「えっ? ・・・あ、えっとその」
ごめん、と小さく呟く茜の表情は、
「諦め」でなく、「困惑」のそれだった。
その意図を掴みかねた俺の方が、逆に
困惑してしまう。
どう声をかけるか悩んでいると、
がらりと部屋の扉が開いた。
医師「尾張さん、検査のお時間です」
若い男性の医師だった。
ベッドの傍らに座る俺に気づく。
医師「もしかして、末広呉さんですか?」
呉「あ、はい」
医師「尾張さんからお話は伺ってます」
病院に来たのは、もちろん茜の顔を
見るのが目的だけれど、それだけじゃない。
茜の病状について、話を聞くため。
それが二つ目の目的だった。
医師「今日はよろしくお願いします。 検査の方を済ませてからに なってしまうのですが」
呉「大丈夫です。俺が勝手に早く来ただけなんで」
医師「申し訳ありません。では、尾張さん」
茜「はい。呉、またあとで」
そうして茜とふたり、部屋を出ていった。
茜ちゃんが倒れた原因とは一体……。
このまま、世界は終わってしまうのか。
気になりますね。
病状気になる…。
休校とか世界の終わりを感じて切なくなります。
あと、ひと月……。
社会も学校もいよいよ機能しなくなってきましたね。
何より茜の体調が心配です……(泣)
続きを待ってます!