昭和人から見た令和

ふゆ

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〇アパートのダイニング
  平成31年5月
和夫「姉ちゃん」
和夫「二階の部屋掃除おわったぞ!」
姉ちゃん「お疲れさん!」
姉ちゃん「次は物置の漫画の片付けお願いね!」
和夫「ああ、アレか」
和夫「売っても大した額にならねえだろうなあ・・・」
和夫「姉ちゃんの子にやるよ」
姉ちゃん「昔のヤンキー漫画なんか読まないわよ」
姉ちゃん「最近の子なめてんの?」
和夫「おお怖」
和夫「姉ちゃん、ガングロコギャルの時と変わんねえな」
姉ちゃん「む、昔のことを言うな!」
父さん「すまないね。和夫。仕事忙しいだろ」
和夫「いや父さん、呼んでくれなかったら俺恨むよ」
姉ちゃん「そうよ」
姉ちゃん「気楽な独身男でどうせ暇なんだから」
姉ちゃん「父さんの代わりにキリキリ働きなさい」
和夫「ひでえ」
  久しぶりに集まった家族
  みな元気そうで実に何より
  実家を壊すことになったと聞き、
  手伝いのために帰省したのだ
  『死んだ母さんのいた最期の家』を片付けるために

〇古い倉庫の中
和夫「さ、とっととやっちまって、 ビールでも飲むか!」
和夫「ん、なんだこれ?」
和夫「ブランドもののバッグ?」
  取手を持つと、ポロッと塗装がはげ落ちた
和夫「かなり古いな」
  中にあったのは、
和夫「手紙? 黄ばんでる・・・」
  和夫へ。
  母さんのこの手紙に手が届く頃には、
  
  あなたはもう大人になっていることでしょう。
  大きくなるまで、
  
  一緒にいられなくてごめんなさいね。
和夫「これ・・・」
和夫「まさか」
和夫「うおお、これ、母さんの手紙か!」
和夫「い、一体、何が書いてあるんだ」
  母は三歳の頃に死別していた
  母は俺にとって謎の女性に近い
  
  震える手で紙をつかむ
  今から長男のあなたへ
  
  大切なことを書きますね
和夫「だから俺宛なのか 分かった、母さん、ちゃんと聞くよ」

〇アパートのダイニング
  あなたたちは、きっと大切に育てられたことでしょうね。
  立派な大人に育っている姿が目に見えるようです。
和夫(母さん・・・)
  みんなでデパートに買い物に行ったこと、
  
  覚えてますか?
  母さんは、暖かいカシミアの羽織りを買ってもらいました。
和夫「親父らしいな」
  あなたたちにはお揃いのセーター、
  
  とっても可愛かった。
  あなたはドラゴンボールの柄がいいと、
  
  泣いてましたけどね。
和夫「母さん・・・・・・ドラゴンボールは最近までやってて、」
和夫「俺は大人になっても見てたんだが、」
和夫「知ったらどんな顔してたのか、な?」

〇古い倉庫の中
  未来はきっと、素晴らしい道具がたくさんあるのでしょうね。
  空飛ぶ車でのドライブは最高ですか?
  でも油断はいけませんよ。
  どんな便利なものでも思わぬ事故があるものです。
和夫「空飛ぶ車・・・・・・?」

〇空

〇古い倉庫の中
和夫「ああ、ブレードランナーか!」
和夫「当時の近未来を描いたSF映画な」
和夫「ははは、空飛ぶ車か」
和夫「残念だけど令和に間に合わなかったよ」

〇VR施設のロビー
  母さんには兄と弟がいたので
  
  男の子のというものをよく分かっています
  アンドロイドの女性にはまって
  
  現実の女性の付き合いを疎かにしてはいけませんよ

〇古い倉庫の中
和夫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
和夫(確かに嫁も恋人もいないが・・・)
和夫「ハマってるのはVTuberだからセーフ!」

〇古い倉庫の中
  でもアイドルみたいなぶりっ子
  
  母さん絶対許しませんからね
和夫「ぶりっ子って、あはは」
和夫「あの人のことかな? まだ現役だって知ったら驚くだろうな」

〇古い倉庫の中
和夫「しかし、空飛ぶ車にアンドロイドか・・・」
和夫「母さん、本気で実現すると思ってたっぽいな」
和夫「そういや、父さんが昔・・・」

〇アパートのダイニング
父さん「母さんは、素直で夢見がちで、 とても可愛い人だった」
父さん「なんでもすぐ信じるから、 父さんは心配で心配で・・・」

〇古い倉庫の中
和夫「って、話してたことあったな」
  さて、ここからが本題です。
  ノストラダムスの大予言を知っていますか?
  あれは絶対に嘘なので信じてはいけませんよ
和夫「お、それは信じなかったんだ」
  本当に危険なのは・・・
和夫「・・・危険なのは?」

〇火山の噴火
  マヤの予言です。
和夫「へ? マヤ?」
  マヤの予言こそが真実です。
和夫「つまり2012年に人類は滅亡するのです!」
  和夫、あなたが、お姉ちゃんとお父さんを守るのですよ!
和夫「え・・・手紙、これで終わり?」
和夫「・・・・・・・・・」
和夫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
和夫「まさか、母さんが伝えたかったのってこれ!?」

〇アパートのダイニング
  昭和の終わりから
  
  平成の終わりに届いた母の最後の手紙
  皆に読ませると、姉は手を叩いて笑い、父は涙を頬に流した。

〇綺麗なリビング
  手紙を仏壇に添えて皆手を合わせた
  母さん
  手紙の体で、
  
  俺たちを笑わせたり泣かせたりするなんてすげえな
  アンドロイドより格好いいぜ!

コメント

  • 懐かしいワードが大放出、ですね!😆
    2012年マヤ文明の予言とかあったなぁ...あれ10年以上も前かぁ...一瞬ですね💦

  • とっても感動的なシーンでのお母さんの手紙、、、大爆笑です!!このちょっとズレた近未来観って懐かしいですね!きっと真面目に息子に宛てた手紙なのだと思うと感動してしまうのですが、、、お父さんとお姉さんのリアクション、どちらも理解できますw

  • 子供の頃の自分に「みんなが電話を持ち歩いて世界と繋がって暇さえあればそれで何か調べてる」って伝えてもなにひとつ理解できないだろうなと思うと、もう未来よりも過去こそがファンタジーになってきているのかなと思います。

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