第二話(脚本)
茜には、天真爛漫という言葉がよく似合う。
いつでも人に囲まれて、その中心で、
笑顔でいるような。そんな人物だ。
一方の俺はと言うと、目立たない方で、
友人は少ない。
考えてみれば、昔から何事にも
興味が薄い子供だった。
周りの大人たちに、「呉くんはクールねー」
なんてよく言われたものだ。
でも、そうやって内に閉じ籠っていた俺を、
いつでも引っ張っていってくれたのが──
───茜だった。
茜が居なかったら、俺の人生はもっと平坦で
淡白なものだったに違いない。
茜と俺とは、真逆の存在と言っても
いいだろう。
俺から見た彼女は、いつでも───
輝いていた。
呉((月とスッポンっていうのは、 こういうときに使う言葉なんだな))
スッポンがどんな動物かあまりよく
知らないけれど、月と比べられて
かわいそうだ。スケールが違いすぎる。
・・・いや、待て。違う。
比べ物にならないことを表現する言葉だ。
比べられてすらいない。
並び立ってすら、いないんだ。
呉((・・・だから、この気持ちは))
〇教室
机の上に突っ伏して、眠気に身を任せる。
授業は自習になっていた。
・・・そろそろ、この学校生活にも、
終わりが来るのかもしれない。
教室は騒がしい。
真面目に勉強しているのはごくごく一部で、
ほとんどが仲のいい者同士で喋っている。
世界が終わるのだから、勉強なんて
やっていられないんだろう。
実際にそう言っている奴もいたし。
眠れない。けれど、会話に混ざる気分でも
なかった。
呉((そうだ))
俺は携帯を持って、教室から出る
ことにした。
〇図書館
教室からまっすぐ、図書室へと着く。
適当な席に座って、まずは携帯で検索する。
サイトをあらかた見終わってから、
自然科学系の本が置かれている棚へ向かう。
〇空
調べたのは、夕焼けのメカニズム。
空がこの色になってから、妙に惹かれている
自分がいた。気がつくと空を眺めている。
雑誌を買ったのもそれが理由だった。
どうして今、空は茜色なのか?
それが知りたくて、特集なるものが
組まれているのを選んで買った。
けれど、「空の色が変わらないのは、
世界が終わるから」としか書かれて
いなかった。
・・・雑誌はもう、捨ててしまった。
自分が気になっているのは、空の色が
変わらない理由じゃない。
なぜ、「茜色」なのか、だ。
物事への関心が薄い自分が、これほどまでに
気にかかることが今まであっただろうか。
・・・ただ、世界の終わりだから?
それとも───「茜」色だから?
茜の顔が浮かんだ。
〇図書館
茜「なんの本?」
肩を跳ね上げる。振り向くと、茜がいた。
茜「そんなに驚かなくても」
呉「・・・や、誰かいると思ってなくて」
本当は、思い浮かべた人物の声が
聞こえたから、必要以上に驚いてしまった
のだけれど。それは言わなくていいだろう。
茜はくすくすと笑いながら、俺の隣の
席に座った。
茜「なにこれ。天体・・・気象? の本?」
呉「夕焼けの仕組みについて、ちょっと調べてた」
茜「わざわざ図書室で? ネットで 調べなかったの?」
呉「調べたけど」
茜「本でも調べたかったんだ?」
呉「そう」
茜「呉ってそういうところあるよね」
・・・どういうところだ。
茜「で? 知りたいことは 書いてありましたかな?」
呉「まあな」
夕焼けのメカニズムについては
だいたい理解したから、ここでできる
範囲のことはしただろう。
けど、本当に知りたいのは────
呉「・・・茜は、今どうして空が茜色なのか、 わかるか?」
気づけば、それを茜に投げかけていた。
茜はキョトンとしたけれど、
真面目な顔になって、こう言った。
茜「わかるよ」
茜「それはね───呉が、茜には茜色が似合う って言ってくれたから」
茜の言ったことが一瞬理解できずに
呆然としていると、
茜「なんて、冗談!」
ガタッと音を立てて、唐突に立ち上がる茜。
茜「授業の時間、もう終わったよ。帰ろ!」
そのまま、何故だか焦るように、
図書室を出ていった。
若い二人の気持ちがキュンキュンします。
茜色をつい調べてしまった。
今回も素敵な回でした…!
呉くんと茜ちゃんがてぇてぇ…✨
茜色が似合うだなんて、きゃ♪
世界の終わりの真相に近付いてきている気がします…!
続きを楽しみにしてます😊